「これからを生きる大学生へ、未来を創る人々へ」
〜本を読む人、読まない人、読書に興味がある人、興味がない人〜

全国大学生協連 大築 匡

Vol.14 暑い日は本の中に逃げ込む

暑い。7月に入ったばかりなのに天気予報の熱中症危険度表示は紫色で、連日の猛暑日が続いている。

あまりに暑いせいなのか、近所の公園では蝉の声もまったく聞こえない。去年の夏はクマゼミだと思うがやかましい鳴き声を響かせていたのに、いったいどうしたことだろう。日中は子どもの遊ぶ声も絶え、しんと静まり返っている。

こういう日は外出するのも難儀する。気温35度を超える日が続くともはや本の中の世界に逃げ込むしかない。週末はほとんど一歩も家を出ずにクーラーのきいた部屋で過ごしてしまった。涼しい部屋でベッドに寝転び本を読む。夜も暑さで寝苦しいせいか眠りは浅いため、ひんやりしたシーツの上で読書をしていると、数ページ進むだけで眠くなる。

どうしても外に出たくない。人と会うのも億劫。メールを返す気力もない。そんな自分を少し責めてしまうが、本の中で別の人生を追体験している時間だけは、少し救われたような気持ちになる。

暑さでぼーっとした頭には何度も読み返したエンタメ小説がちょうどいい。ぼんやりと文字を追っているうちに物語の世界にまた入り込む。この季節に本を読むことは、頭を冷やすための装置にも、心を守るための壁にもなっている。現実の熱気を遮断して、ページの中だけに自分を逃がしてくれる。

そういえば、子どものときも暑い夏の日は図書館で過ごすのが好きだった。書店のいちばん目立つ平台を各社の夏の文庫本フェアが並ぶのを眺めるのも楽しい。真夏と読書は意外に近い関係にあるのかもしれない。

こんなふうにして、きっとまた夏が過ぎていく。蝉の声も、そのうち聞こえてくるだろう。そのとき私は、何冊目の本を読み終えているだろうか。