全国大学生協連 大築 匡
このエッセイが読まれる頃は、学生の皆さんは定期試験も終わり、長い夏休みに入っていることと思います。いかがお過ごしでしょうか。
私は、ここ数年、8月の終わりに趣味と実益を兼ねて資格試験を受験しています。今、挑戦している資格はそれなりに難関の国家資格なので、なかなか合格できず、今年は3度目の挑戦です。試験まで1ヶ月を切りましたので、好きな読書も封印し、スキマ時間はひたすら勉強の毎日です。お盆の一斉休暇も勉強に充てる予定です。
資格試験の勉強は、ひたすらテキストを読み、過去問題集を繰り返し解くという地味な作業の継続です。最近は講義動画をスマホで視聴できたり、通勤中や休憩中などのスキマ時間に勉強しやすいアプリがいろいろ出ていますが、それでも反復練習が勉強の基本であることには変わりありません。短期記憶を長期記憶に変えて、試験会場に持っていくためには、忘れたら覚え直すことを繰り返していくしかないのです。
これまでいろいろな資格取得に挑戦してきましたが、一つわかったことがあります。
それは、読書力を維持するには記憶力と集中力を鍛えることが必要だということ。
若い時は体力もありますので、長い文章を読んでいても、集中も途切れずに読み切ることができました。ところが、中年になるにしたがって、本を読むのがつらくなる時期がありました。資格試験の勉強をするようになってしばらくすると、いつの間にか本を1冊読むのに以前ほど疲れることもなく内容も頭に入るようになっていました。
資格試験の勉強は、無味乾燥な法律の条文を暗記して、問題文に書かれている事例にあてはめて解答を導き出す作業の繰り返しです。短い文章を精密に読む訓練にもなります。
長い本も、結局は短い文のつながりでできています。文章は頭から終わりにむけて流れに沿って読むしかありません。過去から現在、そして未来に向けて時間が流れるように、1冊の本も結末に向けて流れていきます。もっとも、時の流れと違って、ページを戻って読み返すこともできますが、いちいち何かわからないことがあるたびに以前読んだ箇所に戻っていたら煩わしいでしょう。記憶力を鍛えることで流れにそって本を読むことがスムーズにできるようになると思います。
一方で、読書を通じて幅広い文章に触れることは、思考力を鍛え、一般知識を増やし、教養を身につけるうえで不可欠だと思います。試験勉強だけでは知識の幅が出てきませんし、何より楽しくないですよね。
学生の皆さんも、今は定期試験から解放されてのびのびと夏を過ごしていることでしょう。でも、将来どこかで「勉強する夏」が訪れるかもしれません。そのときに備えて、自分の「読む力」を日々の読書で育てておくのも、ひとつの準備かもしれません。本を読むという行為は、思っている以上に、人生のさまざまな場面で私たちを支えてくれるのです。
資格試験合格までの道のりは決して楽ではありませんが、だからこそ挑戦する価値があります。年齢を重ねても、学び直すことができるという実感は、自信にもつながります。読書も勉強も、ひとつずつ積み重ねるしかありませんが、振り返ったときに「自分はここまでやれた」と思えることが、なによりの財産になるのではないでしょうか。