読書のいずみ

読書マラソン二十選!

★夏休みが終わりました。もう、秋ですね。過ごしやすくなるこの季節、今年の猛暑で少しバテバテの体を読書で癒してあげましょう。今回も、昨年の全国読書マラソン・コメント大賞に寄せられたコメントから、20点ピックアップしてご紹介します。

読書マラソン書影:『シャーロック・ホームズの叡智』

『シャーロック・ホームズの叡智』

コナン・ドイル(延原謙=訳)/新潮文庫

多くの推理小説では、推理する者や探偵の目の前で事件が起きる。だが、事件はそんなに都合よく起きるだろうか。多くの場合は、名探偵といわれる人のもとにすでに起きた事件が持ち込まれる形となるだろう。この本はそういった形式で話が進められる。だからこそ、犯人がつかめない。被害者の目線から事件を見ているからだ。推理小説としては有名すぎるほど有名。有名なだけに、話の複雑さ、文章の素晴らしさがある。一読の価値のある本だ。特にミステリーファンには、ぜひとも読んでもらいたい話だ。

(慶應義塾大学/ジョージ)

読書マラソン書影:『6時間後に君は死ぬ』

『6時間後に君は死ぬ』

高野和明/講談社文庫

「いつしかポケットからこぼれ落ちてしまった大切な宝物」。この現代社会、大切な宝物をしっかりポケットに持っている現代人がどれだけいるだろうか。まず、タイトルに興味を持ち、そして物語の冒頭から私の心を鷲掴みにしたこの本。決して戻ることのできないかけがえのない時間。未来は変えられる。お先真っ暗と嘆く現代人に光をくれる本がここにある。今を必死に生き、未来を変えようとする登場人物の情熱が、今を生きる私に響いた。自分の未来は自分で掴む、変える。そんな簡単なことではない。でもそれが本気でできる人間は超かっこ良い。

(広島修道大学/マイマイ)

読書マラソン書影:『Another 上・下』

『Another 上・下』

綾辻行人/角川文庫

三年三組を襲う恐怖の死の連鎖。次は一体何が起こり、誰が犠牲になるのだろう、と思うと、ドキドキしながら震える手でページをめくり続けた。そして読み進めていくうちに登場人物たちに感情移入し、「この人は死なないでほしい! “死者”であってほしくない!」と思う一方で、「この人がやっぱり“死者”なのでは……?」と疑わずにはいられなくなった。そして怒涛のクライマックスで明かされた“死者”の正体に私は驚愕した。それは全く思ってもいなかった人物であり、張られた伏線に全く気付かず、巧妙なトリックに私はまんまと騙された。そして……“死者”の正体が明かされたラストシーンは、複雑な想いが重なり、切ない気持ちでいっぱいになった。最後までドキドキとハラハラが止まらない、エンターテインメント性に富んだ作品だった。

(慶應義塾大学/ジョージ)

読書マラソン書影:『一人の男が飛行機から飛び降りる』

『一人の男が飛行機から飛び降りる』

バリー・ユアグロー(柴田元幸=訳)/新潮文庫

「何だか見たことのあるような夢」みたいな、変だけどリアルな作品の数々。大爆笑はできないけれど、「ふふっ」と笑ってしまうような、ユーモアのある悪夢である。作品で好きなのは「イチゴ」、「樫」、「気候学」、「猿」あと「窓」。女の子がみんな面白くてかわいらしい。ヤクザな羊飼いなんて……見てみたい! お父さんにふりまわされる母と子も多く出てきた。ユーレイになって家に入ろうとする父を拒絶する母子。なんだか、さみしいような、なんとも言えない気分になった。

(桜美林大学/イラ)

読書マラソン書影:『世界の中心で愛を叫んだけもの』

『世界の中心で愛を叫んだけもの』

ハーラン・エリスン(浅倉久志・伊藤典夫=訳)/ハヤカワ文庫

このタイトル、どこかで見覚えがないだろうか。そう。映画化もされたあの有名な純愛小説のタイトルは、実はこの作品の表題作を元ネタにしているのだ。かたや恋愛小説、かたやSFで、この2作はまるで別物に見えるけれど、実はそのテーマはとても近い。それは、愛だ。SF独特の道具立てと、時系列をバラバラにする筋立ては、いかにも難解で複雑だ。しかし、アクロバティックな奇想を通じて語られる物語の、すべての意味を悟ったとき、同時に、そうでなければならなかった理由もわかる。そのとき、たった二十ページに満たない短い物語は、幾万の言葉を尽くした長編小説にもまったくひけをとらぬ、「愛の物語」となる。「世界の中心で愛を叫んだけもの」は決して恋愛小説ではない。これはSF小説であり、暴力小説であり、けれども、究極の、愛についての物語だ。

(帯広畜産大学/阿部屠龍)

読書マラソン書影:『花咲小路四丁目の聖人』

『花咲小路四丁目の聖人』

岡田光世/文春文庫

商店街っていい。自分が住んでいる土地に愛着があるのっていい。主人公たちが、自分たちの商店街を買収しようとする大企業に立ち向かおうとする姿が爽やかだ。もっとも、主人公の父が元怪盗紳士なので、商店街の監視カメラを勝手に見たり、店や道路に突然美術品を置いたりするのだが。著者の別の本で、ある人物が「困難は知恵とユーモアで乗り切ろう」と言っている。私の座右の銘となった言葉だ。まさにこの言葉を体現している物語だ。

(東京学芸大学/風野薫)

読書マラソン書影:『ニューヨークのとけない魔法』

『ニューヨークのとけない魔法』

岡田光世/文春文庫

ふたりの母親を持つ女の子、傍若無人に他人を怒るおじいさん、素敵な友達ゲイル。とにかくこの本にはたくさんのニューヨーカー達が登場する。自分勝手でなれなれしくて、思いやりがあって、堂々としているニューヨーカー。なんてすばらしい街なの、ニューヨーク!! ニューヨークで暮らしてみたい!! そう思わずにはいられない。日本の町はどうだろうか。行く人来る人皆無表情で、他人に話しかけることなんて一切ない、まして目も合わせない。ニューヨークの真似をしろとは言わないが、日本にも活気を取り戻してみようじゃないか。

(慶應義塾大学/さゆり)

読書マラソン書影:『卒業ホームラン』

『卒業ホームラン』

重松清/新潮文庫

私も、実は逆上がり、できないんだよねー。そう思いながら読んでいた、この本。決して、何でもできるわけでもなく、クラスの人気者の心情を描かず、どこかクラスの中で負い目を感じている子どもの立場から物語を描く重松さん。どこか、イライラしながらも、いつも応援してしまう自分がいます。それは、重松さんの描く意地っ張りな主人公に、すごく共感してしまうところがあって、うなずく場面に出会うから。

(東北学院大学/E-RI)

読書マラソン書影:『少年少女飛行倶楽部』

『少年少女飛行倶楽部』

加納朋子/文春文庫

私が今まで諦めてきた夢の数はいくつだろう。子どもの頃にあこがれたケーキ屋さんや宇宙飛行士。世界一周の旅に、海底に沈む宝探し。そして、空を飛ぶこと。これら全て、金銭面、その他の問題から、挑戦しようとすら思わなかった夢たちだ。しかし、この本では中学生たちが空を飛ぶために奔走する。大学生の私よりも様々な面で制約があるにもかかわらず。私も負けてはいられない。最初の一歩を踏み出すことが大事なのだ。

(東北学院大学/あやめ)

読書マラソン書影:『三四郎』

『三四郎』

夏目漱石/新潮文庫

私は三四郎と同じ年。彼と同じく悩ましく、不条理ばかりの日々を送っている。「何のために生きてるんだ」と思うこともしばしば。同じ学生の三四郎をみていて、気付いたことがある。私が人生に生きる意味を問うことはナンセンスだ。むしろ人生の方が私に常に問いかけている。人生が私に何かを命じている。それは、その時々、人によって問いは異なるだろうが、私は問われた時、最善の答えを出すつもりで挑まなければいけないと思った。悩ましい日々にこそ、意味がある。

(慶應義塾大学/さっち)

読書マラソン書影:『ハニービターハニー』

『ハニービターハニー』

加藤千恵/集英社文庫

ぽつぽつと語られる物語。物足りないように感じるけれど、語りつくされないからこそ、物語の余韻が胸に残る。恋のはじまりと終わり。想いが通じ合ったときの甘さと別れの苦み。ただ幸せでハッピーエンドなだけが恋じゃないんだ。どれが良い、悪いというわけじゃない。いろいろな形があるだけ。どれも恋。そのどの恋も、好きという感情が理不尽さと一緒にやってくる。だからこの本の余韻は言葉にならない。好きと理不尽さでもろくて壊れやすい、あやういバランスをとっているような本。

(桜美林大学/E.S)

読書マラソン書影:『いま、会いにゆきます』

『いま、会いにゆきます』

市川拓司/小学館文庫

私は恋愛小説が嫌いだ。そもそも、恋愛自体が苦手なのだ。だから恋愛小説はタイトルが違うだけで内容は同じもの、ありきたりなものだと思っていた。だけど、この本は私が思っていた恋愛小説とは違い、“家族”の恋愛小説だった。だから、この恋愛小説は好きだ。死んだ人間は誰かが覚え続けている限り、アーカイブ星に行き、暮らすことができる。妻の澪が死んだとき、そう考え、巧は息子の佑司にも聴かせていた。そんなある日、アーカイブ星から澪が帰って来た。しかし、帰って来た澪には記憶がなかった。だが、巧、佑司、そして澪の三人での同居生活が始まった。いつ、澪がいなくなってしまうか分からないなかで……。だからこそ、家族の大切さがわかる。一秒一秒を大切に一緒に生きたい。

(茨城キリスト教大学/空我)

読書マラソン書影:『マンゴスチンの恋人』

『マンゴスチンの恋人』

遠野りりこ/小学館

マイノリティな人たちの心を丁寧に描いた短編集。ティーン・エイジャーらしいフクザツな人間関係ややりきれなさ、自分と向き合って葛藤する主人公たちが真っ直ぐで、テーマは重いのに爽やかな感すらおぼえる一冊でした。色んな愛のカタチ、性のカタチがあるなかで、確かに普通と異なる自分を見出したとき、社会から離れる訳にもいかない人たちの心が、リアルに痛かったり、切なかったりしました。どの主人公も愛しく、外から見ていては分からない生身な心情に入りこめる、自分が見失いかけていた甘酸っぱい痛み、思春期の気持ちになります。

(東京農業大学/雪フクロウ)

読書マラソン書影:『タイニー・タイニー・ハッピー』

『タイニー・タイニー・ハッピー』

飛鳥井千砂/角川文庫

ちいさなちいさな幸せを、あたりまえの日常から見つけ出す目を、私たちは濁らせていないだろうか。他人とわかりあえない苦しみ、大切な人とのすれ違い、つらいことは身の回りに溢れかえっている。それはとても目につきやすくて、心になかなか癒えない傷あとを残していく。だからこそ、ふと立ち止まって見つめてみよう。すぐそこに、すぐそばにある、ちいさなちいさな幸せを。

(東北学院大学/Shibu)

読書マラソン書影:『花宵道中』

『花宵道中』

宮木あや子/新潮文庫

女性の苦悩や矛盾がストレートに訴えられていて、胸に突き刺さる。時代錯誤に語られる女の欲に、息をのまずにはいられない。また、女たちの人生が現代の女性の人生につながっているのだとしたら、その深く清らかで真っ直ぐな信念は、とても根が強いものなのだろう。登場する女たちの感情に寄り添い、ただ聴いている。そんな感覚が味わえた。女たちに言いたい。「ありがとう」と。

(東北学院大学/Rakira)

読書マラソン書影:『二十四の瞳』

『二十四の瞳』

壺井栄/角川文庫

この本を読むまで、私は第二次世界大戦直前から終戦までの日常を、知ってはいたけれど想像することができなかった。だが読み終えた今なら、まるで自分のことのように思える。戦時中のことを想像したら、怖さと怒りと悲しみで震えるようになった自分がいる。あのときにも当たり前の日常があって、世間に流されてしまった誰かがいて、逆にそんな世間に疑問を抱く誰かもいた。それはどんな時代でも、今だっておなじことなんだ。

(桜美林大学/相模原のフリーマン)

読書マラソン書影:『ヘヴン』

『ヘヴン』

川上未映子/講談社文庫

怖いのは睨まれることではなく、睨み返せないこと。睨み返せないのは、弱いからでしょうか。相手を思い遣る優しさが自分を犠牲にする弱さであるなら、私は弱いままでいたい、と思いました。ここでは、いじめが正当性を持たされ(いじめに正しさなんてあってほしくないと私は考えているけれど)、読んでいると、何が善で何が悪なのか、分からなくなります。いじめを悪だと言いきっているうちは、いじめについて理解することはできないかもしれません。いじめる方も、いじめられる方も、どちらも人間ですから。

(広島修道大学/ねこ)

読書マラソン書影:『反・進化論講座』

『反・進化論講座』

ボビー・ヘンダーソン(片岡夏実=訳)/築地書館

一時期話題になったFSM(空飛ぶスパゲッティ・モンスター)教の聖書。自分が一生懸命説明したことに対して、あげ足をとったり、全く違う次元の話をして反論する人って、たまにいる。そして、「だからあなたの話は間違っていて私が正しい」って勝手に勝ち誇る。やられた方は呆然とした後で怒りが沸き起こってくるのだが。だけど、こんな反論の仕方もあるのだと感心した。ただムキになるのではなく、穏やかに別の可能性を示す――それを相手と同じやり方で、という方法が。こちらの方がスマートだし、それに何より面白い! 何度吹き出したことか。これから先、“ダーウィン”という言葉を聞くだけで、知的なミートボール・スパゲッティを連想するんだろうなぁ。

(東京学芸大学/ゴンベー)

読書マラソン書影:『人はなぜ「美しい」がわかるのか』

『人はなぜ「美しい」がわかるのか』

橋本治/ちくま新書

人を見て、物を見て、時には景色を見て、私たちは「美しい」と感じる。何故、「美しい」と発してしまうのか。他の言葉じゃダメなのか。著者のユーモア溢れる話と、人生観により、人間が当たり前に(もしかしたら一番)よく使う言葉に迫る。“美しいとは合理的であるということだ。そのものが、そのものらしく、力を存分に発揮できている状態が美しいのだ”。ラストの著者の子ども時代の話は身に染みる。小さな子を育てる親にこそ読んでほしい。もちろん大学生にも!!

(東京農業大学/もやしかめ)

読書マラソン書影:『そもそも株式会社とは』

『そもそも株式会社とは』

岩田規久男/ちくま新書

「会社は一体だれのものなのか」、「企業統治とはなにか」、これらはよく経済の専門家の間でなされる議論です。従業員のものなのか、経営者のものなのか、ステークホルダーのものなのか、はたまた株主のものなのか。本書では、これらの疑問に関して、経済の専門家ではない著者が、新しい切り口で意見を述べているという、非常に読んでいて、新たな刺激を受ける一冊です。これから就職するという方にも関係してくるような内容なので、ぜひおすすめします。

(東北学院大学/えるも)