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2025年10月の本棚から

水鈴社/定価1,980円(税込)
ISBN:9784910576053
大学病院で数々の難手術を成功させ、将来を嘱望されながらも、母を亡くし一人になった甥のために地域病院で働く内科医の雄町哲郎。
ある日、哲郎の力量に惚れ込む大学准教授の花垣から、難しい症例が持ち込まれた。
患者は82歳の老人。
それは、かつて哲郎が激怒させた大学病院の絶対権力者・飛良泉寅彦教授の父親だったーー。
ある日、哲郎の力量に惚れ込む大学准教授の花垣から、難しい症例が持ち込まれた。
患者は82歳の老人。
それは、かつて哲郎が激怒させた大学病院の絶対権力者・飛良泉寅彦教授の父親だったーー。

待望の『スピノザの診察室』に続く最新作が登場しました。
今回は、古代哲学者エピクロスの思想を土台に、現役医師・夏川草介さんが紡ぐ物語です。身近な人や大切な人の「死」と向き合うこと、そして「幸せとは何か」を考えるきっかけをそっと差し出してくれます。
また、臨床医としての日々の経験がにじむ言葉のひとつひとつからは、医師としての静かな覚悟が伝わってきます。医療の現場と人間の根源的なテーマを橋渡しする本作は、大学生のみならず、医学部を志す皆さんにもぜひ手に取っていただきたい一冊です。
そして今回も、物語をふっと和らげる“箸休め”のように、京都の和菓子が印象的に登場します。(大)
『女王さまの休日 マラン・マラン ボヤージュ』
古内一絵

中央公論新社/定価1,870円(税込)
ISBN:9784120059568
ISBN:9784120059568

「終わりなんかじゃない。あたしの旅は、まだ始まったばっかりだ!」
シャール、ジャダ、さくらが訪れたのは、台湾。
食、物、歴史、そして人との出会いが、新たな気づきとなる――。
大人気「マカン・マラン」
開店10周年でなんと新作発売!

『読書のいずみ』183号「わが大学の先生と語る」でも話題になった“台湾”。
行ったことのある人には、思い出の風景との再会があるかもしれません。
まだ訪れたことのない人は、シャールやジャダ、さくらたちと一緒に物語の中を旅して、“台湾”の魅力、食や歴史にふれてみてはいかがでしょう。(大)
『私労働小説 負債の重力にあらがって』
ブレイディ みかこ

KADOKAWA/定価1,870円(税込)
ISBN:9784041141427
ISBN:9784041141427

Don‘t Blame Yourself!
セクハラ、パワハラ、カスハラ、人種差別に事なかれ主義やポジティブ教の上司まで。
ジョブには最低なものとの戦い(ワーク)がつきまとう。
ホールスタッフ、激安量販店の店員、屋敷の掃除人にローンの督促人etc.
「底辺託児所」の保育士となるまでに経た数々のシット・ジョブを軸に描く、自伝的小説にして魂の階級闘争。
「あたしたちは負債の重力に引きずられて生きている。」
だが、負債を返済するために生き続けたら人間は正気を失ってしまう。シット・ジョブ(くそみたいに報われない仕事)。
店員やケアワーカーなどの「当事者」が自分たちの仕事を自虐的に指す言葉だ。
他者のケアを担う者ほど低く扱われ、「自己肯定感を持とう」と責任転嫁までされる社会。自らを罰する必要などないのに。
働き、相手に触れ、繋がる。その掌から知恵は芽吹き、人は生まれ直し、灰色の世界は色づく。
数多のシット・ジョブを経た著者が自分を発見し、取り戻していった「私労働」の日々を時に熱く、時に切なく綴る連作短編集。
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