個性がひかる、距離の近い本屋 ー 一乗寺ブックアパートメント ー
京都の本のまち、一乗寺。そこに本の集合住宅がある。
叡山電車の踏切を越え、すこし進んだ先にひっそりと現れたのは、一乗寺ブックアパートメント。個々人が「棚主」として棚の一画を借り、自由に書籍などを置いて販売する、シェア型書店だ。


足を踏み入れると、まず目に飛び込んできたのは壁一面の本棚。たくさんの棚主が工夫を凝らしたポップや看板でキラキラしている。左端から順に見ていくと、それぞれの棚に屋号が付けられ、個性が表れているのを感じられる。他人の本棚を覗いているという背徳感もあり、背表紙をなぞりながらじっくりと見てしまう。
ある棚の本を手に取っていると、
「初めてですか?」
ブクアパの大家さん、つまり店主のかたの声だった。
はじめてです、と答えると、私が惹かれていた棚主さんの説明をしてくれた。買うことに決めた。
小さな店内だからこそ、物理的に他人との距離が近く、会話が生まれるのが強みだという。本の話をすれば、心理的な距離も近づく。本について語る相手に飢えている人には、うってつけの書店だ。
反対側の壁は貸し棚ではなく、代わりに大家さんの選書が並んでいる。こちらは新刊の棚で、最近話題のエンタメ小説から、名作の文庫本、ニッチな海外文学まで様々。その中でも目立っていたのが、平積みにされた人文書の数々だ。
「もともと社会問題に関心があって、2024年にブクアパを作ったんです。そのときに一番気にかかっていたのはガザの状況で、こういう本とか。」大家さんは、押し付けるでもなく、しかし他人でもない距離で本をおすすめしてくれる。

隣には、ジブリ映画「火垂るの墓」のポスター。「終戦の日の前後だけでは、戦争を知るには時間が足りない。」そう語る大家さんの選書には、戦争に関する新書や小説も並ぶ。話を聞いていると、他人事ではいられないと感じた。
変化を生まないとお客さんは来てくれないとの思いから、週に1回ほど、新刊の棚も模様替えするという。本好きの猛者である棚主たちに負けないくらいの、大家さんの心意気を感じた。
本を買って後ろを振り返ると、飲み物のメニューが。ここで読んでいってもいいですか、と訊き、オレンジジュースを頼んで本を開いた。入り口をくぐる前よりもすこし賢くなった気がする自分に、それは「気がする」だけだと喝を入れながら、文字を浴びた。
今回 訪れた場所京都市左京区一乗寺大原田町23-15
http://ichijojibookapartment.my.canva.site/ichijyoji-book-apartment#profile

朝井リョウさんが大好きで、スマホの待ち受けに朝井さんの写真を設定していたら彼氏だと思われた。
上のエッセイでは猫をかぶっていますが、実際はうるさいくらいしゃべります。