海のむこうの栞

2026.10.30 Up 

第1回『初めてできた友達の出身地が読めない』

 

自己紹介

 初めまして!2026年の9月から2027年の6月まで、イギリスのカンタベリーにあるケント大学に交換留学をしている碓氷みどりと申します!

 この連載では、日本でも人見知りで、おっちょこちょいで、電車もよく乗り間違えるような私が、どうやってイギリスという異国でサバイブしていくのか、そしてそこで何を感じるのかをありのままお伝えできればと思っています!

 また、短歌作りが趣味なので、大変僭越ながら、この連載においても毎月一首、本文の最後にその月の出来事に沿った拙作の短歌を載せさせていただきたいと思います!


 

渡航前から友達作り

 それでは記念すべき連載第1回を始めていきたいと思います!今回は、留学先の「友達」について書いてみたいと思います。

 留学先のケント大学は、事前に学生同士がチャットで交流できるようなアプリを紹介してくれました。そのため、私はなんとイギリス渡航前からそのアプリを通して友達を作ることができました。その中の一人が今回のキーパーソンとなるアダムです。


 

アダムとの出会い

 私は大学から紹介されたこのアプリを通してなんとしても事前に友達を作りたいと思っていました。しかし、自分から誰かにメッセージを送る勇気はありません。大変情けないのですが、私は基本的に対人関係において「待ち」一本で勝負してきた人間なのです。一方、だからこそ「待つ」ための準備は全力で整えます。そのため今回はまず作戦を立てました。名付けて、「アイコンでアピール作戦」です!

 私はアイコンに、『HUNTER×HUNTER』のクロロ・ルシルフルというキャラクターとのツーショット写真を載せました。もともと『HUNTER×HUNTER』は大好きだったのですが、今回は誰か『HUNTER×HUNTER』が好きな人に声を掛けてもらえたらなという下心もありました。ところが、そううまくはいかず、アイコンを設定してから数日経っても、誰からもメッセージが来ない日々が続きました。

 そんなある日、ふと気がつくとアプリに一件の通知が来ていました。開いてみるとそこには、

"that's chrollo lucilfer!"

の文字。

私は3秒ほどフリーズしたのち、それが

「アイコン、クロロだね!」

というメッセージだと気付きました。まさか、そんなうまい話があっていいのか!と思いましたが、送られてきたメッセージは見間違いではありません。

そしてこれが、初めてできたケント大学の友達、アダムとの出会いでした。

代替文字
※アイコンに設定していた写真。
『HUNTER×HUNTER』のキャラクターが描かれたTシャツを着て、手にはクロロ・ルシルフルのフィギュアを持って撮影するという徹底ぶり。
この写真が後に留学先での友達作りに一役買うことになるとは、撮影時には知る由もなかった。
 

 

 アダムと知り合った当初は、そもそも不勉強すぎてアダムのプロフィールに書かれていた出身地の「Seychelles」が読めず、「この人はどこの国のHUNTER×HUNTERファンなんだ!?」となっているような体たらくでした。ですが、アダムとのやりとりを通してだんだんと「セーシェル」という国を知り、今では一つ世界が広がったような気がしています。

 ……と、ここまでは私の「アイコンでアピール作戦」が成功し、渡航前から友達ができたというハッピーな話なのですが、そこに突然冷や水を浴びせかかるような出来事が起こりました。


 

アイデンティティとステレオタイプ

 それは、日本の友人Aに、アダムとの一連の出会いについて話した際、Aから言われた一言がきっかけでした。

 「友達できたのは良いと思うけどさ、ちょっとステレオタイプの日本人像を内面化しすぎなんじゃない?」

 友人のこの一言に、私は衝撃を受けました。なぜなら、アイコンに『HUNTER×HUNTER』のキャラクターの画像を載せた裏には、「日本のアニメは世界的にも人気なはずだから、『アニメ好きな日本人』であることをアピールすれば、好意的に接してくれる人がいるかも」という私の小狡い打算があったことをAが正確に見抜いていたからです。たしかにこれを「ステレオタイプの日本人像の内面化」と言われてしまえば否定はできません。

 一方で、私が『HUNTER×HUNTER』をもともと大好きであったことも、また紛れもない事実であり、そこに嘘はついていません。私の、「『HUNTER×HUNTER』が好きである」というもともとのアイデンティティは、それが海外に向けて発信されると途端に、「ステレオタイプの日本人像」として回収されることになってしまうのでしょうか。それはそれでなんだか悲しいなぁと思います。

 きっとこの先の留学中、このような、「自分のアイデンティティ」と「ステレオタイプの日本人像」の境界が分からなくなるような出来事が何度も起こるのだと思います。ですが、どんなときも自分を偽ることだけはしたくないなぁと思う今日この頃です。


 

結び〈今月の短歌〉

 長くなってしまいましたが、最後に今月の短歌を載せます。

〈四月なら四月のように生きなきゃね シーツのシワをパシッと伸ばす〉

それではまた!

 

 
■筆者P r o f i l e
碓氷みどり(うすい・みどり)

早稲田大学文化構想学部3年。
「ウエスト・エンドで本場のミュージカルが観たい!」という一心でイギリス留学を決意。完全なる観る専にもかかわらず、留学先でミュージカルに振付をする授業を取ってしまったため、今から急速な成長が求められている。「碓氷みどり」は筆名。顔のイラストは友人のSちゃんが描いてくれました。


*本サイト記事・写真・イラストの無断転載を禁じます。

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