リーディングリストのとりくみ

大学生協・学生委員にぜひ読んでほしい
「協同組合論」を学ぶリーディングリスト

全国教職員委員会 
「協同組合教育と組織づくり」プロジェクト・チーム

 日々の活動に加えて、協同組合論(その原理や歴史、課題や意義)を知識として学ぶことで、学生委員としての活動や生き方はより豊かになります。これは学生委員にぜひ読んでほしい本のリストです。すべて読む必要はありません。ですが少なくとも何冊かは、手にとって読んでみましょう。世界が違ってきます。生協職員のみなさんや教職員にもお薦めです。(★の数はおすすめ度です。)

予習

「協同組合とは」IYC記念全国協議会サイト (★★★)

Webサイト。「協同組合 IYC」で検索すれば、すぐに見つけられる。協同組合とは何か? 協同組合は株式会社やNPOとどこが違うのか? 協同組合の7原則。協同組合の種類などが、簡潔に記されている。まず基本的な理解として、このページを読むことを薦める。このサイトの他のページも見てみよう。

基本編

1. 賀川豊彦『協同組合の理論と実際』コープ出版(2012) (★★★)

表紙

 日本の協同組合を語る上で、賀川豊彦を欠くことはできない。この本は最初に賀川豊彦の簡単な紹介があり、続いて70年前に書かれた賀川の著書『協同組合の理論と実際』が収録されている。戦後世界の中での協同組合、協同組合の本質、その歴史、その種類、教育と訓練、そして世界平和等々、協同組合とは何かが簡潔に書かれており、現在読んでも新鮮さを失っていない。協同組合を学ぶ上で、最初に手に取るべき本である。

2. 小林正弥『友愛革命は可能か:公共哲学から考える』平凡社新書(2010) (★★)

表紙

 新書とはいえ、読み切るにはいささか根性がいる。特に、鳩山政権をめぐる政治的な問題については、すでに過去の話となってしまっていて、今一つピント来ない。それでも、「友愛」という理念について、ギリシャ・ローマ哲学から汎ヨーロッパ主義にまでめぐって論じた第2章や、さらに賀川豊彦の経済思想を「友愛」の理念に立脚したものと論じて、協同組合運動の根本思想として「友愛」を提示している第4章などは必読である。

3. 庄司興吉・名和又介編『協同組合論-ひと・絆・社会連帯を求めて-』
全国大学生協連(2013) (★★★)

表紙

 この本は、2012年の国際協同組合年を記念して、大学生協が大学コンソーシアム京都に対して行った寄付講座の講義録である。いまなぜ協同組合か?から始まって、国際的な協同組合の歴史、賀川豊彦と協同組合、そして金融や消費者運動、農協、漁協、森林組合、医療生協、そして大学生協等々、社会の広範な分野で協同組合が活躍していくことを学ぶことができる。大学生協の枠を越えて、地域や社会を考える上で最良のテキストである。

4. 中川雄一郎・杉本貴志編『協同組合を学ぶ』日本経済評論社(2012) (★★)

表紙

 ヨーロッパの近代の歴史の中で、協同組合というものがどのような背景の中で、どのような人たちによって生み出され、発展してきたのか。膨大な歩みをコンパクトな1冊にまとめている。日本の協同組合史にも目配りしている。社会や経済や生活の環境がめまぐるしく変わっていく中で、協同組合の今後のあり方を考えるために、これまでの歴史を一望できる好個の一冊。

応用編

5. 広井良典編『協同で仕事をおこす:社会を変える生き方・働き方』コモンズ(2011) (★★)

表紙

 労働者協同組合(ワーカーズコープ)の活動を紹介した本である。その最大の特徴は、「協同の仕事おこし」にある。地域の生活困窮者や高齢者、子育て、若者、障害者、買い物難民等々へのケア(支援)を事業にして、地域に「新しい公共」を広げていくことを目指す。本書には、全国8ヶ所の事例が納めされている。いずれも経済成長優先社会からの脱却を目指す先進的な取組である。

6. ピョートル・クロポトキン、大杉栄訳『増補修訂版 相互扶助論』同時代社(2012) (★★)

表紙

 原典は100年以上前の20世紀初頭にイギリスで刊行された。ダーウィンの進化論の影響のもとに、動物社会と人間社会の類似性を主張しつつも、ダーウィンが提起した「強者生存」の論理をしりぞけ、「助け合い」(相互扶助)に注目した。動物と人間に共通して、社会の原理は、競い合うこと、奪い合うことでなく、助け合うこと、分け合うことであるというクロポトキンの主張は、いまますます重要になっている。