生協職員からの新刊お奨めの本紹介

『沈みゆく大国アメリカ』堤 未果 集英社新書

著者:堤 未果
出版社:集英社

 寄稿の依頼を受け、ふと考え込んでしまいました。「最近どんな本読んだっけ?」と。昔は移動中など時間を持て余す時には常に本を読んでいたのですが、最近はもっぱらスマホ。読書量は減る一方です。以前は日常生活の中に読書が位置づけられていたのですが、だんだんとスマートフォンにその立場を奪われてきてしまいました。
 確かに最新の情報は手に入るし、調べれば何でも出てくるとっても便利な代物なのですが、時には電源を落として本と向き合う時間を作りたいものです。

「21世紀の資本」(みすず書房)のヒットもあり、『格差』は最近より一層注目を集めるワードとなってきました。本書では巨大資本のマネーゲームによって翻弄され広がり続けるアメリカの『格差』を、医療を切り口に様々な人々の事例の紹介により追体験できます。

「自由の国」が信条の米国社会には「自分の身は自分で守る」という考え方が根底にあるようです。そのためかアメリカには国民皆保険制度のようなものはありませんでした。医療費が払えずに破産する人々が続々出る状況を、オバマ大統領念願の政策であったオバマケア(アメリカ型国民皆保険)が大きく変えるのではと期待されました。しかし、政府へのロビー活動などによって、低所得者層のためであったはずの政策は、巨大資本がより大きくなるためのものへとすり替えられ、国民を取り巻く現状は改善するどころか悪化していきます。


早稲田大学生協 ブックセンター
田村大地

 この本を読んでいると「これが日本の将来なのかもしれない」と一抹の不安を覚えます。TPP、膨れ上がっていく社会保障費、労働人口の減少・・・。アメリカの現状は日本社会への警鐘なのかもしれません。これからの社会を作っていく大学生のみなさんにぜひ読んでもらいたい一冊です。

 同じ著者の「ルポ貧困大国アメリカ」「ルポ貧困大国アメリカⅡ」「(株)貧困大国アメリカ」(岩波書店)も是非合わせて読んでみてください。