生協職員からの新刊お奨めの本紹介

『俺の日本史』 小谷野敦 新潮新書

著者:小谷野敦
新潮新書

歴史ブームのようである。テレビでは毎日のように歴史バラエティ番組が放映され、クイズ形式・ドラマ形式などで歴史の薀蓄を垂れ流している。私の勤める書店でもビジュアル的な歴史本が棚を飾っており、雑誌でも歴史を題材にしているものも多い。「歴女」なる言葉も生まれ、10代・20代の若い女性が戦国や幕末の激動の時代に生きた武将や志士に注目してファンクラブや追っかけまで発生しているようである。人文書の分野では売れないジャンルの典型であった「歴史」が注目されることは大いに結構なことであるが、歴史専門書の分野までこのブームは全く来ていないのは残念である。

ただ若い職員や学生たちと話していて、歴史に関することが話題にのぼることはほぼ無いに等しい。ごくごく限られたマニアたちだけのブームなのか、ブームというわりに広がりを感じないような気がしている。思い返してみれば私が社会に出た●●年前、職場の上司は飲み会の後半になると決まって赤穂浪士の話をしていた。特に俵星玄蕃が好きだったようで、「先生!」「おうっ、そば屋かあ~」などと三波春夫(新潟県出身)のマネをして盛り上がっており、若造の私もぎりぎりでそれについていける知識があった。おそらく歴史歌謡や講談・浪曲などで培ったものだと思うが、それを思うとブームである昨今より歴史が生活に溶け込んでいたような気がする。

本書はかつて生活に溶け込んでいた歴史の小粒なエピソードを満載に、古代から明治維新まで一気に書き上げたものである。博覧強記を自認する著者であるので、エピソードは歴史事象のみならず文学・思想・学術論争・映画・音楽・芸能・大河ドラマなど多岐に渡っている。さらりと一読するだけで、ブームではない生の歴史を感じることができると思う。

新潟大学生活協同組合
専務補佐 高塚俊英