生協職員からの新刊お奨めの本紹介

「ルポ 母子避難」吉田千亜 岩波新書

著者:吉田千亜
岩波新書

 今回お薦め本として選ばせて頂いたこの本は、新刊として本が入った時にいずれ読んでみたいなと思っていた本でした。
 私には小学生の孫が3人います。当時避難させる事には考えも及ばず娘夫婦も出来ない事情があって葛藤の中今日があります。
先日の新聞に自主避難者の借上住宅の打ち切りが2017年3月に決定と報じられていました。自主避難者の中には福島県外の人達も含まれている現実なのです。

 3.11の震災から5年が過ぎて一見復興は進んでいるかのように思われる「福島」ですが原発による母子避難問題をとうして今の現状を知りたいと思いました。サブタイトルの「消されゆく原発事故被害者」目にした時から気になっていました。本文の構成は事故後、避難した母子に寄り添い続ける著者が第一章から第七章を通して、福島の地震直後、子供を持つ親の選択、問題、復興の名の元での政府、行政、自治体の対応、避難された実例を仮名によって伝えています。
 原発の災害が大きな要因である事は言うまでもなかった当時の状況、子供を被爆から守る為に少しでも「福島から遠くへ」と行動を取った母親達、その為に孤立無援の悲しみ、二重生活の苦悩、理解されなかった苦境を伝えています。中でも自主避難を余儀なくされた母子達、継続をする事を選んだ人々、するしかない人々に対して、政府や東電からの支援も賠償もなく、まして自治体からも見捨てられて行く人達がおり「命」に関わる状況である事を著者は訴えています。 自主避難者と避難指示対象者との格差がある事を改めて思い知りました。今、私達の周りは一応除染は終わりました。放射線の値もゼロではないですが少なくなってきています。でもまだまだ「除染中」の案内を目にするのも事実です。廃炉になるまでの原発を、いつ終わるともわからない年月と向き合いながら生活をして行かなければならない現実があります。
 それでも希望は捨てていません。県はJA農協連との協力で「農産物」の安全をすすめています。福島の食に対する不安はありません。 当大学の学食でも安全な材料で提供しています。今は、家族子供達も一緒に地元の物を食べています。


福島大学生協 図書館店書籍部 畠キヨ子

「避難棄民者」と言う言葉まで生んでしまった原発問題、「復興」とは何だろ?「自主とは責任」の問いかけに1人でも多くの人が考え思って欲しい一冊です。