生協職員からの新刊お奨めの本紹介

「永遠の0(ゼロ)」百田 尚樹 講談社文庫

表紙

著者:百田 尚樹
講談社文庫

百田尚樹さんの最近の著作で「鋼のメンタル」という本を読んだ際、この「永遠の0(ゼロ)」を書き進めている頃のことが書かれていた。日々の生活に困窮していたにも関わらず、執筆途中の本作を読んだ奥さんから完成させるように背中を押されて書き上げ、作家デビュー。ついには映画化もされアカデミー賞も受賞した作品です。
映画原作としてCM等で作品を知っている方も多いでしょう。かく言う私もそのCMで作品タイトルを知った一人ですが、そんなきっかけでこの本を手に取りました。

かつては小学校や中学校の夏休みの課題で「戦争中の体験を近親者に聞く」というものがその一つにありました。今やその時代に生きた方々は減り、当時の実体験を直接聞くことは至難、ニュースになってしまうほどの事態になってしまいました。70年もたてば当たり前のことですが、学校教育の中で戦争を知り、伝え、過去の惨禍を繰り返さないための努力は続けられているはずですが、学ぶ事が大変難しい課題となってしまいました。

26歳の若者の視点で始まる本作は、太平洋戦争末期に特攻で亡くなった実の祖父を知るための調査を足掛かりにして、私たちをも過酷な戦場へと導きます。当時の体験を話す元戦友の語りが多くを占めている作品ですが、祖父の存在を通すことで、まったく無関係だった時代を身近なものとし、この若者は自らの生をも考えさせられることになります。
 様々な見られ方をされる特攻隊員ですが、一人の人間としての祖父の実像が徐々に明らかになるにつれ、戦時という異常な日々を疑似体験させられることになります。
彼らは「特別な人たち」ではなく、そして私たちもそうでしょう。

昭和初期まで一つの就職先でもあった軍隊は、そのかなりの者がやむを得ずの選択、あるいは時代の当然として入ったにも関わらず、十把一絡げそのひとり一人の存在を無感情な人として捉えるのは酷なことです。日々の糧を得るために就いた職場、アルバイト先がブラック企業だった、これには本人の責任がゼロでは無いにしてもその個人をばかり責めることはできないことと似通ってはいないでしょうか。


東洋大学生協 白山店
副店長 星野 禎

組織に中で上手に振る舞うことや成功に近づくためのHowTo本があふれています。戦中に称賛されるためのHowToは現代では犯罪に類される行為が多く含まれていることでしょう。盲目的にいま属している組織に従い続けることが、場合によってはいかに危険なことか、考えさせられることになった作品でした。

果たして今自分が所属している組織はどう?