生協職員からの新刊お奨めの本紹介

『余命10年』文芸社文庫 小坂流加 

表紙

『余命10年』
文芸社文庫 小坂流加 

 この本との出会いは、2017年の夏。電車の中で読む本を探していた時だった。
表紙を目にした時、タイトルと、帯の「死ぬ準備はできた。」という一文から死を宣告された(重たい?)話だと推測したが、表紙の軽いタッチのイラストに違和感があった。
作者は小坂流加さん。・・・誰だ? と、手に取り、表紙をめくって作者のプロフィールを読んだ。
 作者は静岡県出身。県内の人か。と親近感がわいたが「本作の刊行を待つことなく2017年2月逝去」の文に、どんな内容か気になった。もしかしたら作者からの何らかのメッセージが込められているのではないかと、レジへ向かった。プロフィールのみを読んだだけでレジへ向かったのは初めてだった。

 読みながら「余命10年と言われたら、あなたは何をしますか?」と、作中で作者から問いかけられ、考えた。
 まず最初に驚くだろうが、次に、泣くだろうか。喚くだろうか。無気力になるだろうか? 宣告される年齢でも考え方は違うだろうが、死へのカウントダウンが始まるのだ。怖くならないと言えば嘘になる。
 主人公の茉莉(まつり)は、残りの人生を精一杯生きようとした。
漫画を描き出版社へ持ち込む。コスプレの衣装を作る・・・enjoy!オタク生活!! でも一つだけ心に決めていた事があった。残された人の気持ちを考えて、恋は絶対にしないと。

だけど、恋は落ちようと思って落ちるものではない!

 病に倒れた女の子と男の子のピュアなラブストーリーの小説は色々読んだし映画も観たけれど、この本を読んだら、それらが全部色褪せてしまう。これは単なるお涙頂戴モノではない。死と直面した作者であるからこそ書ける小説だと思う。読んでいる間、文章の端々から作者の切ない叫びがほとばしり、それに圧倒され、胸を締め付けられ続けた。

 頑張って漫画を描き続け、ようやくデビューして一冊のコミックスを出した直後に急逝した茉莉の心の叫びと、まるで命を削るようにして小説を書き、文庫本を刊行する直前に亡くなった作者の心の叫びがリンクした。

「ちゃんと生きて!」と作中で茉莉は言った。
「自分で決めたこと投げ出さないって、逃げないって約束したでしょ。」と。
これは、茉莉の病気を知り、それでもいいからとプロポーズし、茉莉がいないなら意味は無い、茉莉の為に全てを捨てると言った和人に、茉莉が言った言葉なのだが、読んだ時、自分が言われたのかと思った。
 作者は「諦めるな!」「生きろ!」「頑張ればできる!」と、全ての読者に伝えたかったのではないかと、私には思えてならない。
 自分の寿命がどれくらいあるかなんて、誰にもわからない。生きていれば、挫折をして、悔しくて泣きたい日もあるだろう。それでも、精一杯、頑張って、今を生きよう!と、読んだ後に思えてくるイチオシの本だ。
 人それぞれの悩みの大きさは様々だろう。けれど、きっと、この本は、悩んでいるあなたの背中を押してくれる事だろう。


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