生協職員からの新刊お奨めの本紹介

『時給三〇〇円の死神』双葉社 藤まる

表紙

『時給三〇〇円の死神』
双葉社 藤まる

突然ですが、あなたは時給300円で働きますか?
そのアルバイト内容が、あの世に死者を送る「死神業務」で期間限定だったら?
残業手当も交通費も出ないブラック業務ですがいかがでしょうか?
私は例え時給が10倍の3000円でも死神のお仕事は遠慮したいところですが、この本の主人公、佐倉くんは疑いつつ流されつつも引き受けるのです。
家庭の事情もあり、人生を諦めているような佐倉くんですが、根はいい子のようです。
なにそれ?と興味をひかれるタイトルからもうおすすめポイントそのいちです。

佐倉くんは可愛い相棒、花森ちゃんと共に死神のアルバイトをする中で、思いもよらず深く傷つけられたり、自分の未熟さを嫌というほど突きつけられます。
その一方、花森ちゃんの笑顔やちょっとした仕草にドキドキしたりもする、普通の男子高校生な面もあり、読み手としてはホッとできます。

高校生にして自分の人生を諦めきっている佐倉くんが、絶望しつつも死者さんたちの複雑な事情を受け止め、あの世に送ってあげようと必死になって奮闘する姿にグイグイ引き込まれます。
花森ちゃんとの恋じゃない関係性も超重要ポイントです。

無事に期間限定の死神を勤め上げると、ご褒美としてなんでも願い事を叶えてもらえるのですが、佐倉くんの願い事は私にとっては意外なものでした。
そんな願い事でいいの!?と驚きましたが、とても佐倉くんらしいなとも思いました。
誰かの幸せを祈る事はこんなにも簡単で素晴らしいことだったんだ!とこの本を読んで再確認させられました。


東京理科大学消費生活協同組合
神楽坂店書籍部 内山 博子