樹木に「性格」があるか?
樹木に「コミュニティ」があるか?
樹木は「コミュニケーション」を取るか?
一聴するとちょっとおかしな事を言っていると怪訝な目で見られそうですが、この本を読み終わるころには、不思議なくらいスルリと腑に落ちてしまいます。
著者はドイツで、ある地方自治体の所有する森林の管理運営を任されている、(公務員ではなくフリーランスの!)森林管理者。
採算や業務効率だけを優先した営林に疑問を感じ、生命体としての樹木と真剣に深く向き合うことによって得た発見の数々が詰まったこの本は、ドイツでベストセラーになっています。
私たちは「植物は生きている」ということを頭では分かっていても、人間や動物に比べると、どうしても「モノ」的な感覚で見てしまいがちではないでしょうか。しかし、本当は1本1本に個性があり、親木が幼木を教育して強くしたり、根を使って情報を伝達しあったり、お互いにフォローしながらコミュニティを維持したり、おどろくほど人間味を感じてしまう事例が次々に出てきます。
科学的な学説や観察結果などをもとにしながらも、その説明の語り口はなんだか樹木たちの物語のようなエッセイのような…。だから、科学的な観点でも「なるほど!そうなんだ」と納得できる説明なのに、それと同時に、読んでいると樹々たちの生き生きとした生活をのぞかせてもらっているようなワクワク感があるのです。
そして、ともすると単に“システマチックに繰り返される大きなサイクル"というイメージを持ってしまいそうな「大自然の営み」という言葉が、実はとてつもなくドラマチックな中身を秘めているのだと知ることが出来るのです。
「環境問題」と言っても小難しい本にはなかなか手が出ない、という方はまずはこの本で樹木たちの生活を知ってみるのはいかがでしょうか?
読み終わった後、きっとどこかの森や林を歩きに行きたくなるはず。その時、そこにある樹々を感じる「感度」が多少なりとも変わっていることに気付くかもしれません。
日本女子大学生協 目白店書籍担当 大友 優子