面白いとはどう定義できるのだろう?さらに面白く生きることについても投げかけている。頭の固いタイプの私にとっては興味深いタイトルであった。
私の趣味はスポーツクライミングで、自身の身体能力・技能をもってゴールまでの手順をイメージし、トライを繰り返すものだ。とても面白いから趣味といえるが、例えばこれを少し分解すると「達成感」「没入感」「難解さ」など複合的な意味が含まれている。著者は小説家として「面白い」ものを世に出していくにあたり考えてきた、「面白さのメカニズム」について考察している。
面白さは生活の中、あるいは仕事を通して他者と関わっていく上で必要な要素である。「可笑しい」「夢中になる」「楽しい」あるいは「珍しさ」「意外性」「悔しさ」などを内包するときに、「面白い」と表現されるだろう。この面白さたちは感覚的であり、マニュアル化することは難しい。著者が自分の本の売り上げとレビューを調べてみたところ、評価の低い本ほど売れていたという負の相関関係が顕著だったという。
一方、現在の面白さのトレンドは「共感」であるが、これは「自己―作品」への共感ではなく、「みんなが面白ければ面白い」という、他者とつながりたいという欲求を満たした面白さである。この面白さを他者に依存することに著者は疑問を持っており、第六章『「面白さ」は社会に満ちているのか?』第7章『「面白く」生きるにはどうすれば良いか?』でメッセージを投げかけていく。文末には著者が面白さに出会った父とのエピソードから、「面白さ」がいかに人生を豊にするか、著者がどう生きてきたかが記されている。
たくさんの経験ができる大学生に、一度読んで頂きたい。
神戸大学生協 学生会館店 北橋 達也