本書を読む前、「フィンランド」と聞いてまず浮かんだのは「幸福」という言葉でした。自由・平等・福祉・健康・寛容さ、などを基準にした世界156か国のランキングで2019年1位にランクインしています。以前から社会支援の手厚い国と、メディアで発表されているのは見聞きしたことがありましたが、じっくり「なぜか」と掘り下げたことはありませんでした。本書を読んで痛烈に感じたことは、「主体性」です。フィンランドには「人生観の知識」という授業があるそうです。日本でいう「道徳」のようなものです。しかし、この「人生観の知識」には日本の道徳では伝えきれない多くの部分が伝えられていると私は感じました。私の主観ですが、日本で道徳教育というと「思いやり・善悪の判断・生命を大切にする心」などを身に着ける、またそれに類する教育だと思います。しかしフィンランドの「人生観の知識」の目的は「自立し寛容で、責任と良識ある人へと成長すること。グローバル化し、急速に変化する世界での民主主義的なシチズンシップ」です。日本の道徳教育とは幅も深みも違うと私は感じました。もちろんフィンランドの教育と日本の教育で重点を置いているものも違い、どちらが正しいというものでもないと思いますが、フィンランドの教育には道徳教育を学んだ後、様々な違った環境の中で自分はどのように考え、行動するか」が重要視されているように思えました。
「自分には何をする権利があって、その権利の中で何を行うことができるのか」これを小・中・高で学び、社会で考えてきたことを発揮する。読んでいて、「なるほど確かに世界一かもしれない。私もこんな教育うけてみたい。」と思えるものでした。人によって感じ方はそれぞれだとは思いますが、きっと読み終わったあと、読者の思考をゆさぶる本だと思います。「是非皆様におすすめしたい。」そう思える本でした。
琉球大学生協 中央店
野中隆大