“銀行残高428円”———本に撒かれている帯にはそう書かれていて、ギョッとして手に取った。主人公のあすみが銀行残高428円になった原因は簡単に言ってしまうと男に騙されたせいなのだが、経緯を見ていくとあすみの金銭感覚がゆるゆるだったり、無駄使いが多かったり、なんやかんやで本人の責任がかなり大きい。だって、お金が無いから親に懇願の手紙を書こうとして、6万円超えの万年筆を買ってしまうのである。謎だ。
物語は社会人の話だから学生の皆さんは、まだまだ先の話で自分には関係ない、社会人になってもそんな風にはならない、と思う人もいるかもしれないが、金銭感覚というのはすぐには矯正できない。あなたが買ったその一本のペットボトル、いくらだろう?スーパーとコンビニではいくらくらい違うんだろう?ふらっと入ったカフェでいくら使ったんだろう?ちょっと一回、家計簿をつけてみたらどうだろう。意外と自分が何にいくら使っているか分かっていない人も多いんじゃないだろうか。
あすみの金銭感覚はゆっくりゆっくり矯正されていく。友人の助言を聞きはしても実行までになかなか踏ん切りがつかなかったり、カツカツなのに見栄えを気にして高い化粧品を買ってしまったり、傍から見たら、そこでお金を使うんかーい!ってツッコミを入れてしまう時もあるが、その時あすみは自分では気づけなかったのである。だんだんと自分の無駄遣いしているところに気づいたり、これしかないと思っていたはずのものの代替に気づいたりする。
学生の皆さんはそんなあすみのことを他人事とは思わずに見守りつつ、読了後には自分のお金の使い方と向き合ってみることをお薦めしたい。
新潟大学生活協同組合
書籍部
加藤 みのり