この本のタイトル「ワンさぶ子」とは白柴の犬の名前だ。
著者の宮下奈都さんのお家に家族として迎えられたわんこと家族のお話である。
内容は三年間の日常をエッセーとして描かれている。
登場人物は、おかーさん(宮下奈都)おとーさん、上のおにーちゃん、下のおにーちゃん
末っ子のきなこちゃん、サブわん子の6人?家族と、お隣に住むおかーさんの両親。
月別で綴られていて、その月の最後は「ワンさぶ子」が発言している(笑)
この宮下さんの家族エッセーに出会ったのは、「神さまたちの遊ぶ庭」というエッセー本。
おとーさんの北海道に住みたい!!の一言で、福井から北海道のトムラウシという聞いた
こともない地名の土地へ家族ともども山村留学する本当のお話だ。
当時子供たちは14歳、12歳、9歳。
宮下さん的には乗り気でなかったようだが、子供たちの「いいね」「おもしろそう」
「どうせならそういうところで暮らしてみたい」ですんなり決着。
それで行っちゃう宮下家がすごいと思う。読んでて本当にすごいと思った。
それからのトムラウシ生活の一年は、この家族にとってかけがえのない宝物となる。
そして私の中でも宝物になっている。
何度も何度も読み返しては毎回感動して、毎回涙して、毎回幸せな気持ちになる。
宮下ファミリーのファンとしては、最新作が出た!となると読まずにはいられない。
最新作では子供たちはもう大学生、高校生、中学生と成長していて、みんなが脳内で
妄想し続けてきた待望のわんこが家族の一員になっていた。それがワンさぶ子。
相変わらず面白くて可笑しくて、やっぱり「宮下家」はいい!!
でもいい事ばかりではなく、辛いこともある。
実は宮下さんは「パニック障害」を抱えている。
迷走神経反射や不整脈、過呼吸、突然の発作で毎回死ぬんじゃないかと思うくらい辛い。
今は薬で抑えられるらしいが、その薬のせいで集中力が欠けるらしく、小説を書くために
薬を止めたら大きな発作で倒れた。
その時思ったそうだ。
「小説を書きたい自分のエゴのために大切な家族を苦しめるのは絶対だめだと思ったのだ。ひどい苦しみと痛みに襲われるリスクを負い、家族を脅かしながら小説を書く人生と
書けないかもしれないけれど、発作からは距離をとって暮らせる人生だったら、やっぱり
私はワンさぶ子をモフモフしながら穏やかに生きていける方を選ぶ。
そうでなくてはいけないと思う」
そう!宮下さんの原点はここなんだ。
コロナ禍でなかなか家族に会えない、友達とも会えない、大学へ行けない・・・
本当に非常事態の世の中だ。
そんな時だからこそ、ピリピリムードからすこし離れて、ワンさぶ子と一緒に宮下ファミリーの一員になってみませんか?
きっと穏やかな気持ちになれるはず!
ひとりでも心温まってほしいと願いながら。
愛媛大学生協
生協ショップひめか
神岡 桂