2023.10.2 更新
学生の皆さんに読書をおすすめしたい理由のひとつに、「自分とは全く縁がない世界を垣間見せてくれる」から、という理由があります。
私自身は中学2年の段階で数学をあきらめたタイプの学生でした。
しかしこの本はとても面白く、一種のミステリーとも思えるような展開。それまで「嫌い」を通り越して「この世にない」くらいに無関心だった「数学」や「数学者」、ひいては「学問」に改めて関心を持たせてくれた1冊です。
フェルマーというとんでもなく傍迷惑な学者がいたこと、この本を読むまでは知りませんでした(傍迷惑とは言いすぎかもしれませんが、初めて読んだ時の素直な感想です)。
彼の書き残した言葉、
「私はこの命題の真に驚くべき証明をもっているが、余白が狭すぎるのでここに記すことはできない」
これに300年以上も数学者たちは悩まされることになるのですから、フェルマーはなんと罪作りなことでしょうか。「余白が狭すぎるから」とは!?
この問題が証明されるまでいったい何人が頭を抱えたかと思うと、ため息が出るようです。
しかし私のような素人からしても、これは胸が躍るような問題で、物語でした。
この難問に挑んだ幾多の数学者や、最後に証明を果たしたアンドリュー・ワイルズの物語には、数学がわからずとも心動かされます。
ワイルズのいう「言葉にしようのない、美しい瞬間」には、私は一生巡り合える気がしませんが、この本を読むことで想像することはできます。
私は数学が出来ませんでしたが、数学者のいう「数学の美しさ」というものの存在は知ることができました。
読書にはまれにこんな出会いがあります。
ぜひ色々手に取って、普段の自分からは考えられない世界にも飛び込んでみてほしいと思います。
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湯瀬麻美