生協職員からのおすすめの本紹介

2024.4.8 更新

『七人の敵がいる』加納朋子著 集英社文庫

表紙

『七人の敵がいる』
加納朋子著 
集英社文庫

ISBN

9784087468052

購入はこちら

 

この小説の単行本が刊行されたのが2010年、文庫版が刊行されたのが2012年、私がこの小説を初めて読んだのが2013年、今からひと昔近く前の若かりし時期です。衝撃が走るとともに、自分も物を書いてみたい、表現したいという気持ちが芽生えたのは、この小説がきっかけだったかもしれません。

ワーキングマザーの奮闘が描かれ、テレビドラマ化もされた子育てエンターテイメント小説。「今とは時代が違うから……」いや、今だからこそこの本を推してみます。学校生活や習い事、夫婦関係やPTA、親子関係やキラキラネーム……今までのご自身の経験と照らし合わせると響くもの、今からのご自身の未来に対して思うことが芽生えるはずです、きっと。

7つのチャプターで構成されており、読みやすい仕様ですが、時間軸、物語の繋がりが多少掴みづらく感じられるかもしれないです。登場人物の人間模様、主人公が少しずつ成長していく姿が垣間見られます。そして、理想的な4分間の漫才かのごとく、ラストに向けて怒涛の畳みかけ。

私がこの本に巡りあったのは大学卒業後(20代前半)でした。特に大学生時代は、このままでいいのかと自問自答しながら煮え切らない気持ちを抱える時期だと思います。その時期に一度読んでみて、経験・年齢を重ねてから、または登場人物と同じような立場になったときに再度読むとより深まる気がします。‘敵’だと思っていた誰かは‘友’に成り得るのか、本当の黒幕はどこの誰なのか、果たして本当に存在しているのか否か……。

各々の立場で様々な思惑があるのは事実。将来当事者になる予定の方もそうでない方も、その思いをこの物語から感じ取って見留め、あなた自身が偉大なる本当の黒幕にならないように、真っ直ぐな瞳のあなたでいられるように、誰もが全世界的に表現者になり得る時代にいるあなたのこれからの出会いに温もりを添えてみてはいかがでしょうか。

広島修道大学生活協同組合 ブックストア 吉田堅次郎
広島修道大学生活協同組合
ブックストア
吉田堅次郎