社団法人 全国高等学校PTA連合会
田名部 智之 会長 インタビュー
今こそ再認識されるべきPTAという存在
PTAという言葉は当たり前のように知っているけれど、何をやっているのか分からない。時代とともに変化する教育環境の中で、PTAはどのように子どもたちや先生、父兄と向き合っているのでしょうか。
PTA活動の「今」と「これから」についてお話を伺いました。

【インタビュアー】
中島 達弥
(全国大学生活協同組合連合会 専務理事)
中島 達弥
(全国大学生活協同組合連合会 専務理事)

社団法人 全国高等学校PTA連合会
田名部 智之 会長
田名部 智之 会長
| 2006年 9月 | 株式会社 田名部組 代表取締役(現職) |
|---|---|
| 2015年 7月 | 株式会社 田名部ホールディングス 代表取締役(現職) |
| 2018年 4月 | 八戸工業大学第一高等学校 PTA会長(現職) |
| 2020年 5月 | 青森県高等学校PTA連合会 会長 |
| 2020年 6月 | 東北地区高等学校PTA連合会 会長 |
| 2022年 6月 | 一般社団法人 全国高等学校PTA連合会 副会長 |
| 2024年 6月 | 一般社団法人 全国高等学校PTA連合会 会長(現職) |
初等中等教育分科会、日本学生支援機構運営評議会等の委員を兼任
ライフワークとしてのPTA活動

中島- 全国の高校のPTAで構成される全国高等学校PTA連合会(以下、高P連)は、高校生の健全育成とPTA活動の支援を目的とした組織です。現在、その高P連の会長をなさっておられるわけですが、そもそも田名部会長がPTA活動に関わるようになった経緯についてお聞かせください。

田名部- 私とPTA活動の関わりは、子どもが幼稚園に通うようになったことが始まりです。私は青森県八戸市に住んでいるのですが、私立の幼稚園だったこともあり、父兄の中には地元の経済界の方々などもいらっしゃって、その方々からお声をかけていただいたというのが大きかったですね。

中島- お子さまが幼稚園に通うようになってからということは、もうずいぶんと長きにわたってPTA活動に携わってこられたわけですね。

田名部- かれこれ20年余りになりますから、確かに長いですよね。高P 連の会長になってからも、今年で3年目になります。会長の任期が3年ですので、ようやくその責務から解放されます。

中島- ひと口に20年と言っても、それを継続されることは容易ではなかったと思います。田名部会長にとって、これまでPTA活動を続けてこられた原動力は何だったのでしょうか?

田名部- 個人的なことを言わせていただければ、PTA活動を通じて、子どもたちとのコミュニケーションの場を得ることができたことだと思います。私が会社経営をしていることもあって、なかなか子どもたちとの時間を確保できませんでしたが、PTA活動で学校を訪れることも多く、学校で子どもたちと会うことで足りない分を補っていたという感じでしょうか。
運動会などのイベントがあればPTA会長として挨拶をするわけですが、そのこと自体も子どもたちは誇りに思ってくれていたようです。高校生にもなれば、親が学校に来るなんて、嫌がったり、恥ずかしがったりしてもおかしくありません。それは私も意外でしたし、ありがたかったですね。皆の役に立ちながら子どもたちとも近いところにいられる。私にとってもうれしかったですし、子どもたちもそう思ってくれていたようです。もちろん、大変なこともたくさんありましたけど、むしろ役得だったわけです。

中島- 子どもたちのためというPTA活動の本分を全うし、その活動自体をお子さまとのコミュニケーションを深めるためのライフワークとして取り組んでこられたというわけですね。そんな田名部会長とお子さまとの関係を見て、周りの同級生たちの反応はどうだったのでしょうか?

田名部- 私も高校生の時はそうでしたけれども、PTA会長みたいな大人の挨拶は退屈でしたし、バカにしていたものです。「あ、お前のところの親父が出てきた」とか、いじめではないですけど、ちょっといじりの対象にするとか。でも、世代なのでしょうか、いまの子どもたちはむしろ「お前の親父すごいな」と、リスペクトの対象として扱ってくれたというのはありますね。

中島- PTAの会長というと、、比較的年配の方が務められているイメージでしたが、田名部会長はそうではありません。

田名部- ありがとうございます。確かに父兄の皆さんとほとんど同じ年代だったことも同級生たちの意識の中にはあったかもしれません。むしろ「もうちょっと学校がよくなるように、お父さんに頼んでよ」といったことを私の子どもに言ってくることがあったのも、私を身近に感じていてくれたことの表れだったかもしれません。
PTA活動の実態とその役割

中島- 田名部会長が長年にわたり精力的に取り組んでこられたPTA活動ですが、一般的にはどのようなものなのでしょうか?

田名部- PTA活動とは子どもたちの健全な成長を目的として、父兄と先生が連携してさまざまな取り組みを行う社会教育団体(Parents and Teachers Association)の活動です。具体的には、通学路の点検や防犯パトロールなど子どもたちの安全・健全育成、運動会や文化祭などの学校行事・教育活動の支援、校内の環境整備、さまざまなイベントの開催や広報誌の発行などがあります。
例えば、私の子どもが通っていた私立高校は首都圏の高校とは違って、設備面でかなり脆弱な状態でした。近年、地球温暖化の影響で、青森県といえども夏になれば暑い。真夏日になることもあります。しかし、子どもが通っていた当時は、学校にはクーラーがありませんでした。それじゃあんまりだということで、PTA会長としてクーラーの設置を学校に働きかけたりもしましたね。

中島- それぞれの学校でPTAの皆さんがどのような活動をされているかということについては、理解することができました。ところで、田名部会長は高P連の活動もされていますが、高P連はどのような役割を担っているのでしょうか?

田名部- 高P連は全国の都道府県・政令指定都市の高校のPTAで構成される全国組織で、学校単位や都道府県市あるいは地区連合会では対応できない全国的な課題や事業に取り組んでいます。主なものは全国的な調査活動、広報活動、啓発活動、政府・国会等への要請行動などですが、会長をはじめ役員は政府等の各種審議会や協議会の委員に委嘱され、保護者の立場から意見表明を行っています。
私自身は文部科学省中央教育審議会の第13期生涯学習分科会、初等中等教育分科会、初等中等教育分科会教育課程部会、第13期生涯学習分科会社会教育の在り方に関する特別部会等にそれぞれ委員として参加しています。

中島- 会社の経営者であり、お子さまの高校のPTA会長、高P連の会長、文部科学省の審議会の委員を兼任されていることを考えると、田名部会長ご自身のワークライフバランスが心配になってしまいます(笑)。大変お忙しいとは思うのですが、そのあたりはどのように調整されているのでしょうか?

田名部- 仕事とPTA活動がバッティングしてしまうということはあまりないですね。運動会などのイベントは土日がほとんどですし、会社を自身で経営しているので時間の調整は比較的しやすいです。高P連の会議や打ち合わせも現在ではリモートなので、秘書に時間調整してもらえれば対応できます。本日のようなインタビューへの対応も、秘書の方で事前準備をしてくれますから、私は質問に答えるだけで済みます。
敢えて大変なことを挙げるとすれば、中央審議会のメンバーになってしまったことでしょうか。現在は4つほどの分科会に参加していますが、政府与党や国会、文部科学省のヒアリングなどがあると2~3時間は出席しなければなりません。こちらも最近はリモートでやることが多いので、移動の時間は何とか抑制できますが、それが一つの分科会で年12回あったとすると、4つですから単純計算で4倍になってしまいます。とはいえ泣いても笑っても高P連の会長任期は今年いっぱいなので、それまでは何とか頑張ろうと思っています。
変わりゆく教育環境とPTAの使命

中島- 田名部会長は中央審議会のメンバーとして、さまざまな意見を表明されていると思いますが、昨今の高校生を取り巻く環境変化についてはどのように見ておられますか?

田名部- 一番大きな変化は、AIをはじめとした科学技術の進化ですよね。便利になった半面、さまざまな課題が噴出していることも事実です。特にSNSやYouTubeなどの情報によるネットトラブルから子どもたちをいかに守っていくのか。実は先日も自民党のプロジェクトチームに呼ばれて同じことを申し上げました。それはジタルネイティブとして育っている子どもたちに我々が追いつくことはもはやできないのですから、ハードやソフトの仕組みも含めて、国からの働きかけによってメーカーがもっと積極的に対応してくれなくては困るということです。これは高P連を含めた全国のPTAの総意といってもいいでしょう。もちろん、各家庭においてスマートホンの使用時間を決め、学校でメディアリテラシー教育を進めることも大切ですが…

中島- たしかに家庭や学校でできることには限界がありますね。、サービスの提供主体である企業・事業者に責任を持ってもらうことを要請し、高P連としても団体の力で国に対して積極的に働きかけていこうということですね。

田名部- これまでPTAと言えば、通学路に立って子どもたちを見守るとか、パトロールをするとか、非行防止を促すとか、いわば直接的な「人対人」の触れ合いを大切にしてきました。しかし、今やそういう守り方では子どもたちを真に守ることができない時代になってしまったということなのかもしれません。また、SNSについては、薬物や詐欺などへの誘因も非常に巧妙になってきているので、こうした被害からも子どもたちを守る必要があります。

中島- 大学生協と消費者庁との話し合いの中でも、大学生の薬物や詐欺被害の増加は極めてシビアな問題としてとらえられています。彼らをそういたトラブルから守るために、我々としても関係省庁との連携を密にしながら対策していきたいと考えています。

田名部- さらに言えば、子どもたちだけでなく、先生方を守るのも我々PTAの大切な責務であると思っています。世の中にはモンスターペアレンツといわれる父兄もいますし、時には子ども自身がモンスターになってしまっている場合もある。その対応に先生の方が疲弊してしまっているという現実があります。昭和の時代であれば悪いことをしたら強く注意し、時にはこつんとやることもありました。でも、そうすることで子どもたちを諫め、導いてきたわけです。もちろん今は許されないことですけれども、それが本当に少し注意しただけで逆ハラスメントみたいな感じで訴えられたりするようになってしまいました。
また、先生方の働く環境についても、しっかりと目を向けていかなくてはいけません。働き方改革といいながらも教育の現場では、そのための施策がなかなか浸透しない。残業するなといいながらも、実際には残業する先生としない先生で大きな格差が生まれてしまうということもあります。
我々のように頻繁に学校に行っている立場の人間じゃないと、本当の学校の姿というのは見ることはできません。だからこそ、我々PTAが子どもたちだけでなく、先生方をも守る仕組みづくりに努めていかなくてはいけないと思うのです。

中島- 教育の現場において大切な役割を担っているPTAですが、近年ではその存在の是非を問う声があるともお聞きしています。

田名部- 「PTA活動はやりたくない」とか、「そんなことにお金をかけたくない」とか、そのための労力や面倒くさいことはもう全て学校任せという無責任な父兄がだんだん増えてきて、それを正当化するために「PTAは時代遅れ」などと言う訳です。大きく時代が変わってきている現代においては、そうした声に対しても我々としては確たる信念をもって、PTAだからこそ有することのできる「団体の力」で子どもを守り、先生を守り、教育を守るという自らの使命を全うしていきたいと思っています。
大学生協とPTAとのより密な連携を

中島- 最後に、田名部会長ご自身のお立場から大学生協に対するご意見・ご要望があればお聞かせいただきたいと思います。


田名部- 現在、子どもが大学生ですが、大学生協さんについては常日頃から大変お世話になっていて、親としても彼女の学生生活を支えてくれるありがたい存在として認識しています。彼女が大学への進学を決めた頃から感じていたことですが、大学生だけでなく、受験を控えた高校生に対しても「大学進学ガイドブック」をはじめ、受験生が抱く様々な疑問や不安に対してきめ細かな情報提供をしていただいていると思います。
何十年も前であれば青森県をはじめとする東北地方では、中学校を卒業して働くというケースも少なくありませんでした。しかし、今やほとんどの子どもが高校から大学へと進学しています。高校から大学へ、そのためのジョイントとしての役割を担ってくださっている大学生協さんには、受験を意識し始める高校2・3年生だけでなく、高校に入学した時から彼らに寄り添う情報発信をはじめとしたプラスアルファのサービスの提供を期待したいところですね。

中島- たしかに子どもたちの進学意識の早期化には、大学生協としてもきちんと向き合い、適切な情報、新たなサービスの提供に努めていかなくてはいけないと感じました。

田名部- その点については我々以上に確かなノウハウをお持ちですので、高P連としても大学生協さんともう一歩踏み込んだ情報交換ですとか、より密な連携を図らせていただきたいと思います。

中島- 本日は、田名部会長のお話しを通じて、PTAの活動とその意義についてより深く理解することができました。大学生協がこれからどのような価値提供ができるのかを考える新たな契機にしたいと存じます。ありがとうございました。
2026年4月20日リモートにて対談