大学生協の仕組みと運営

Ⅰ 組合員の参加を大切にした生協運営を

生協加入は任意ですが、法的にも組合員による利用が前提となっています。食堂や教科書教材販売など、大学生協は大学生活に欠かせない存在であることから、学内の全員が組合員になることが望まれます。

大学生協は、組合員自身が出資・利用・運営に関わる組織であり、意見を出し合いながら共同で運営されます。総代会や理事会などの仕組みに基づき、組合員の生活や思いを起点に事業活動が展開されており、新入生の生活の悩みをもとにしたアドバイザー活動のように、組合員の声が実際のサービスへと反映されることで、生協への信頼と参加が広がります。店舗や食堂での「一言カード」などの取り組みにより、組合員の声を日常的に集め、日々の業務運営に生かしていくことが大切です。

大学には学部学生だけでなく、大学院生、留学生、教員、大学職員等の多様な構成員が生活しています。生協加入の呼びかけは、学部学生だけに偏らず、キャンパスのすべての構成員に対して行い、組合員加入をしていただく努力が重要です。
 

Ⅱ 生協の組織

生協は組合員によって運営されますが、人数が多くなると全員で運営するのは困難なため、意思決定や執行に責任を持つ仕組みが必要です。生協では「総代会」「理事会」「代表理事」「監事」が主要な機関として設けられています。

法律や定款に基づき、総代会が最高議決機関となり、事業計画や予算、役員の選出を行います。理事会は日常運営を担い、監事はその監査を行います。学生委員会や院生委員会、教職員委員会等の組織委員会や生協職員も実践面で重要な役割を果たします。一つひとつの大学生協は規模が小さいため、全国的な連帯組織を通じて協力し合っています。

生協の仕組みの大枠は生協法で定められており、具体的には、生協法に沿って個々の生協が定める定款・規約などによります。なお、生協法や定款などは、全世界の協同組合関係者がまとめた「協同組合原則」や各生協の日々の活動等を反映して作られています。

 

Ⅲ 総会・総代会

総代会は生協の最高議決機関であり、年1回以上開催が義務付けられています。通常総代会では、事業報告や決算の承認、新年度の計画や予算の決定、役員の選出などを行います。また、必要に応じて臨時総代会も開かれます。生協法や定款に基づいた正確な運営は重要ですが、参加者が意義を感じられる工夫も求められます。多くの生協では、事前の議論やわかりやすい資料、当日のプレゼン、討論の工夫などで、参加しやすく充実した会議を目指しています。

組合員数が一定数以下の比較的小規模の生協では、総代会ではなく総会制をとる場合もあります。総会制では年1回、組合員全員の参加によって事業報告その他を承認します。
 

Ⅳ 総代(総代会制の生協のみ)

総代は生協の組合員を代表し、最高議決機関である総代会に出席して生協の方針決定に関わります。日常的には組合員の声を運営に反映させるとともに、決定事項を組合員に伝える役割も担います。総代になる機会はすべての組合員に保障されている必要があり、定款や選挙規約に基づいた選出が求められます。

また、総代は、全学の幅広い構成員から選出されることが期待されます。総代は学部・クラス・職場等の単位を基盤として理事会が定めた選挙区から選ばれるのが普通です。総代活動を活性化するためには、意見を尊重し、会議や情報共有、イベントへの参加呼びかけなどを通じて意欲を高め、コミュニティ形成に貢献していくことが重要です。
 

Ⅴ 理事会と代表理事

理事会はすべての理事で構成され、生協の重要な意思決定を担い、業務執行の方法や担当者を決定します。業務には商品供給だけでなく、組合員の交流活動や社会への働きかけなども含まれます。

理事会は、業務を実際に行う代表理事を選定し、その執行状況を監視・監督します。代表理事以外の理事は、特別な決定や委任がない限り執行権限を持ちません。多くの生協では、「教員等による理事長」と「生協の業務に従事することを職業とする専務理事」とを代表理事にしていますが、1人だけ代表理事を置く生協や、4~5人の代表理事を置く生協などもあります。
 

Ⅵ 理事会の運営

生協を適正に運営していく責任

大学生協が発展し、社会や大学に与える影響が拡大していることに伴い、理事には法令や定款を順守し、生協や組合員の利益のために注意深く運営にあたる責任があります。経営が極端に悪化し、法令や定款を逸脱した運営が常態化すれば、社会や大学からの信頼を失い、生協の存続にも影響する恐れがあります。そのため理事会では、学生・教職員など各階層の理事が、組合員の生活や意見を反映させ、生協を適正に運営することが重要です。

理事は、その地位にあるものとして(たとえば、学生理事ならば、学生である理事として)、普通に必要とされる程度の注意と関心を払い、自己の利益のためではなく生協と組合員のために、生協運営にあたる義務があります。この義務を善管注意義務と言います。

理事会では総代や組合員の声を踏まえた議論を行い、生協全体としての方向性や行動計画を立て、各部門の活動に反映させていくことが求められています。学生・院生・留学生・教職員の率直な声・意見を持ち寄って生協としてのビジョンとアクションプランを作り、それに沿って各委員会や店舗等での活動を総合的に進めることも重要です。
 

理事会論議の工夫

大学生協の方針を多くの人に共感されるものとするには、理事会での議論を分かりやすく工夫することが重要です。異なる立場や経験を持つ理事が意見を出し合えるよう、具体的な事例や生活の様子を交えて率直に話せる雰囲気を作ることが求められます。また、学生委員や担当理事が積極的に提案・報告することで、議論に新たな発見が生まれます。

理事会での議論や決定事項を組合員に伝える広報宣伝活動も重要で、機関誌やSNSなどを活用し、計画的に情報を発信する必要があります。
 

Ⅶ 監事の役割

監事は理事と同様に総代会の選挙で選ばれ、主な職務は理事の業務執行を監査し、その結果を監査報告としてまとめることです。さらに、財産や業務に不備があれば総代会などに報告したり、必要に応じて総代会を招集したり、提出議案や書類を調査したりする役割も担います。

監事は理事会に出席し、業務の適正を確認して必要な意見を述べることが求められます。理事会から独立した中立的立場を保ちながらも、監事と理事はともに生協の発展を目指す立場にあることも重要です。

監査は通常、監事会として集団的・計画的に行われ、活動の運営や報告内容について意見をまとめることが期待されます。ただし、監事会は監査や決定を行う機関ではありません。各監事は一人ひとりが独立した監査権限を持つ機関です。
 

Ⅷ 組織委員会

組織委員会は理事会のもとに設置され、大学生協のビジョンとアクションプラン実現のために活動する組合員集団です。自身や周囲の興味関心を出発点にしながら、組合員の参加を広げ、自己実現と協力を重視します。生協店舗や職員と日常的に関わり、課題解決や活動のアイデアを持つことが強みであり、他の組合員と連携しながら実現を図ります。人とのつながりを広げる点も魅力です。
 

学生委員会

学生委員会は、大学生協の組合員である学生が主体となって、「たすけあい」「学びあい」「コミュニティづくり」を実践し、魅力ある大学生活の実現を目指す組織です。理事会のビジョンやアクションプランの実現にも関与し、学生だけでなく全組合員を対象とした活動を行います。全国には多くの学生委員会が存在し、約9,000人(2024年度学生委員会実態調査結果より)の学生が参加しています。

学生委員は他の組織委員会と連携し、店舗活動や新学期活動、環境・防災活動など様々な場面で中心的役割を果たしています。こうした活動を通じて、大学生協の経営基盤が強化され、多様な人との交流を通じた学生の成長や視野の拡大も期待されています。
 

院生委員会

大学院生は、大学全体の1〜3割を占めることがあり、研究や将来への不安、経済的困難などから強いストレスを抱えがちです。特に女性にその傾向が強く、生活が学部生より厳しいと感じている院生も多くいます。

大学生協では、各大学の状況に応じて院生委員会が活動しており、院生の多忙な生活を考慮しつつ、学生委員や職員と連携して取り組みを進めています。院生は大学内での滞在時間が長く生協の利用も多いため、生協側も無理なく関われる工夫を重ね、互いの理解と協力によって生活支援の充実が求められています。
 

留学生委員会

留学生委員会は、留学生との交流を通じて国際理解を深め、生活支援や日本文化体験の場を提供しています。各大学生協では、留学生の視点を取り入れたガイドブック作成や料理教室、模擬店出店などの活動が行われています。

言葉や文化の違いから孤独感や就職・生活上の課題を抱える留学生も多く、彼らの意見を反映した支援が重要です。全国の留学生委員会はネットワークを形成し、防災や平和学習を含む交流の機会を広げています。
 

教職員委員会

大学生協の組合員には教職員も含まれており、大学という生活と教育・研究の場の一員として、生協の運営に重要な役割を果たしています。教職員は生活者としての要求を反映させるだけでなく、専門性を生かし、研究・教育環境の改善に貢献しています。また、学生との交流や大学との協力関係の構築にも力を入れ、地域への文化・社会的貢献も行っています。多忙化する教職員の実態に応じた組織作りも今後の課題です。全国大学生協連では理事会の下に全国教職員委員会を設置し、全国教職員セミナーの企画立案や政策提言活動を行っています。
 

Ⅸ 生協職員

生協職員の役割

大学生協における生協職員は、複雑化した経済社会において事業活動を専門的に担う重要な存在です。職員は店舗業務の運営を通じて組合員の要求を把握し、それを事業や活動に反映させる役割を担っています。組合員の声は「一言カード」や懇談会などを通じて集約され、職場会議や経営委員会での議論を通じて実現を図ります。生協の業務は書籍・食堂・キャリア支援など多岐にわたり、それぞれが連携して運営されています。

また、学生委員や学生アドバイザーとの協働も重要で、彼らの成長を支援する視点が求められます。さらに、組合員との日常的な対話を通じて生活実態や要望を把握し、試食会や懇談会、SNS発信などの機会を活かして改善を進めることが重視されています。こうした取り組みを通じて、生協職員は組合員の生活向上に貢献し続けています。
 

生協職員のやりがい

大学生協職員の仕事のやりがいは、組合員の声や要望に応え、それを実現するために工夫しながら行動する中で、自身の成長を実感できる点にあります。日々の業務や一言カードへの対応、ビジョン実現に向けた取り組みなどを通じて、職員は問題解決力や協働の力を高めています。大学生協の活動には多くのやりがいがあり、生協職員は、組合員の声を反映し問題解決に取り組む中で、自らの成長を実感しています。

入学準備説明会などを通じて新入生の支援に貢献し、「自分もあんな先輩になりたい」といった憧れや目標が生まれます。説明会運営の中心は学生委員や学生アドバイザーなどの先輩学生が担いますが、彼らの成長を見守り、支えるのは身近な生協職員です。学生委員や学生アドバイザーは、生協活動を通じて新たな人間関係が築かれ、大学生活への意欲や満足感が高まり、「大学が好きになった」と感じる学生も増えています。生協職員の仕事は単にモノを売るというだけでなく、このように学生の成長を支援する活動でもあります。