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2015年12月28日(月) | 新着情報

『読書のいずみ』 座・対談 「本格ミステリ、書いてます」
初野晴さん インタビュー

初野晴さん (小説家) VS  熊崎菜穂さん (金沢大学人間社会学域3年)


 

1.“ハルチカ”新刊

熊崎 新刊の『惑星カロン』は、“ハルチカ”シリーズ(以下、“ハルチカ”)の『千年ジュリエット』から約3年、待ちに待った新刊としてすごく楽しく読ませていただきました。今回は吹奏楽部の片桐部長や生徒会の日野原会長などといった3年生が引退して、吹奏楽部の面々が今とこれから先の時間について、より考えている巻だったと思います。前作から今作へつなげるにあたって、何か意識したことはありますか。
 

初野 “ハルチカ”は、ミステリの実験作を発表する場のような気持ちで書き始めたものなんです。だから、優先するのはやはりミステリの要素で、青春パートや吹奏楽の演奏パートというのは自分のなかで必ずしもプライオリティが高いわけじゃない。でもシリーズを重ねてくると、どうしても時の流れを意識せざるをえなくなってくるので、『空想オルガン』のあたりからその辺りもフォローしています。
 

熊崎 シリーズを重ねていくと、書くときのモチベーションにも変化がありましたか?
 

初野 自分の好きなように書きたいんですけど、シリーズとなった以上、成長や演奏パートとか、きちんと描かなければならない部分が出てきました。このシリーズは、一対一の対話、ダイアローグが多く、場面転換が少ないのが特徴ですよね。そこを重点的に描きたいから、削っているものも結構多いんです。知的好奇心を刺激する部分とかユーモアといったものを入れていくと、恋愛、そして演奏パートに筆がさけなくなる。そこが非常にもどかしい。
 

熊崎 そちらを期待している読者もいますが。
 

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