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2016年03月25日(金) | 新着情報

読書のいずみ
読書マラソン二十選!

『愛の国』 中山可穂/角川文庫

読み終わりたくないと思った。押し寄せる感情をコントロールできず、ページをめくる手を休めることもできないでいるの に。一文、一言、すべてが愛おしくて、ずっと物語が続いていくことを願っていた。そんな小説は、初めてだった。舞台は近未来、ファシズムが支配する日本。 現実にはこうならないでほしい、とリアルに感じてしまう社会で描き出されるのは、愛の苦しみと、マイノリティの孤独。残酷で美しい、希望と絶望、祈りと 死。込められているテーマはいくつもある。しかし一言にまとめると、やはり「愛」になるだろう。わたしが言葉にするとこんなにも薄っぺらくなってしまう が、それ以上の言葉を持っていない。壮大な、愛の物語。本書の表現は、これに尽きる。
ラスト、わたしは主人公に泣きながら別れを告げた。さようなら、ミチル。出会えて、良かった。

(横浜国立大学/ヘキサン)

 
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