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2017年01月06日(金) | 新着情報

『読書のいずみ』 座・対談 「夢をかなえる《覚悟》」
阿部智里さん インタビュー



阿部 智里さん(小説家) VS 
北野晶子さん(信州大学大学院農学研究科 M2) 田中美里さん(早稲田大学文化構想学部2年)

 

1.エピソード0

北野
最新刊『玉依姫』を読ませていただきました。いつもと同じ雰囲気の表紙なのでストーリーもそのつもりで読み始めたのですが、いきなり女子高生が出てきて一瞬戸惑いました(笑)。
今回は、「八咫烏シリーズ」のエピソード0ということで『玉依姫』を出されたという
ことですが、五冊目のこのタイミングで出されたのは何か理由があったのでしょうか。

阿部
シリーズ全体のストーリーはもう最初から構想できているのですが、実は最終巻でとても重要な謎解きが一つあって、『玉依姫』はその謎解きのヒントを出すためにどうしてもここで出す必要があったのです。
『玉依姫』を最初に書いたのは高校二年生の時でした。でも、応募した松本清張賞で落ちてしまって、一度忘れることにしたんです。
この『玉依姫』には“八咫烏たち"という脇役が出てきます。その脇役である彼らが当時読んでくれた友人たちの間でとても評判が良かったので、次に何を書こうかと考えたときに、彼らを主人公にして書くことにしました。そうやってできたのが、『烏に単は似合わない』(以下、『烏に単〜』)に続く「八咫烏シリーズ」です。だからといって『烏に単〜』のあとに続けて『玉依姫』を出そうとすると、どう考えてもストーリーが不自然なつながりになってしまって整合性がとれなかったんですね。

北野・田中
なるほど。

阿部
でも、シリーズを決着させるためにはどうしても『玉依姫』を出す必要があったので、『烏に単〜』を出した直後から『玉依姫』を出すタイミングをずっと探っていました。
この話は良くも悪くも異色なので、出すタイミングを誤るとその時点で打ち切りになってしまう可能性が十分にありました。でも、ありがたいことに四冊目の『空棺の烏』までが評判になってくれたので、このタイミングだったら今『玉依姫』を出しても乗り切れるだろう、というある意味商業的な判断の下で、これを出したというのが大きな理由です。
 

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