初めての一人暮らし、保護者にとって気がかりなことの一つが食生活ではないだろうか。大学時代にこそ自分の“食”を自分で管理できるようになっておきたい。大学生協の管理栄養士・高橋亮子さんに話を聞いた。
大学生協東京事業連合
管理栄養士
高橋 亮子さん
大学生協では毎年春と秋に栄養士による食生活相談会を開催。学生たちの生の声に耳を傾け、食生活に関するさまざまな悩みと向き合っている。
このとき圧倒的に多いのは体調不良の相談。アンケートでは「つかれやすい」「いつも眠い」「やる気がおきない」「肩こりしやすい」「だるい」の順に多く、これらの不定愁訴は、食習慣・生活習慣の乱れなどがおもな要因と考えられる。
管理栄養士の高橋亮子さんは、夕方から夜にかけてのアルバイトが、大学生の食習慣に良くない影響を与えていると指摘する。
「アルバイトのせいで、晩ご飯を食べるのがどうしても遅くなってしまいます。そのため朝は食欲がない、そもそも起きられないという理由で朝食を抜く学生が多いのです」
脳の活動エネルギーはブドウ糖の働きによるもの。朝食をしっかり摂らなければ集中力や記憶力が低下する。「ですから朝食はとても大切です。寝る前の食事は軽めにして、その分朝はしっかり食べてほしい」と高橋さん。「学生さんたちには夜のアルバイト前におにぎりやパンでエネルギーを補給し、アルバイト後はおかずや汁物などを軽めに食べるだけにしては、とアドバイスしています」
もうひとつ高橋さんが気にしているのがダイエットだ。「テレビにでてくるモデルさんの体重を目標にして、ダイエットする必要のない体型の女子学生がこぞってダイエットに励んでいます」と高橋さんは心配する。
とくに最近は炭水化物に含まれる糖質を制限する「糖質制限ダイエット」が流行りだ。「自己流でやってフラフラになっている女子学生も少なくありません。身体はエネルギー源を必要としていますから、糖質を摂らなければ代わりに脂質やタンパク質を働かせようとする。その結果、脂肪だけでなく筋肉まで落ちてしまうのです」
この他にも、過度のダイエットや間違った食事制限などは、貧血や低体重の子どもの出産など、将来にわたってさまざまなトラブルの原因になる。「栄養バランスの偏りによる肌荒れで、化粧がどんどん厚くなる女子学生も少なくありません。きちんと栄養を摂った方が美容にも良いということを知ってほしいですね」
理由があって自炊が難しければ、食べるものを正しく選ぶ。それが「食の自立」の第一歩といえる。
まずはしっかり糖質を摂りたい朝食だ。買っておくだけで簡単に食べられるものがいいだろう。「ごはん派なら卵や納豆、パン派なら牛乳・チーズなどの乳製品や卵と組み合わせます。シリアルと牛乳でもいいでしょう。野菜は切らずに食べられるミニトマトやきゅうり、カット野菜を。さらにミカンやキウイなどのフルーツでビタミンを補給できれば完璧です」(高橋さん)
一日一食、定食スタイルの食事ができれば栄養のバランスはかなり良くなる。昼食にカフェテリアスタイルの生協食堂を利用するなら、ごはん、主菜、副菜、汁物をそれぞれ選びたい。野菜不足の解消にはほうれん草の胡麻和えやひじきの煮物といった小鉢メニューの追加もオススメだ。
女子学生の場合、昼食はコンビニのおにぎりや菓子パンですませてしまいがち。「コンビニで買うなら幕の内弁当のようにいろいろなおかずが入っているものにしたい。そんなに食べられないというなら、せめて鮭や肉などが具のおにぎりに、サラダ、牛乳・ヨーグルトを組み合わせましょう」(高橋さん)
大学生協の「学食どっとコープ」は、学食メニューの情報検索サイト。パソコンやスマートフォンなどから学食メニューの価格・エネルギー量・アレルギー物質・栄養バランス(3群点数)・主要原材料の原産地がチェックできる。
今日の気分や予算から「おすすめメニュー」が表示されるなど便利な機能が満載だ。
なお、エネルギー量や栄養バランスなどの情報は生協食堂を利用したときに受け取るレシートにも記載されている。日々の食事のバランスチェックに利用したい。
昨今の経済状況により、大学生への仕送り額がかつてにくらべ減少している。節約と健康のためにはやはり自炊がオススメだ。
調理道具一式を揃えたばかりの入学当初は自炊する気まんまんでも、野菜を使い切れずに腐らせてしまうことが続くとすっかりイヤになってしまう—そんな学生を数多く見てきた高橋さんは、無理なく自炊を続けるコツを「スーパーやコンビニで売っている“カット野菜”を利用すること」と話す。「多品目の野菜が一袋にまとまっていて、水洗いをする必要もない。割高に感じるかもしれませんが、バランスのよい食事を手間なく無理なく続けることができます」
慣れてきたら4分の1にカットされたキャベツやばら売りのジャガイモ・ニンジンなど安価な野菜の丸ごと使い切りにも挑戦したい。
大学生協のウェブサイトではカット野菜を使ったレシピ、野菜丸ごと使い切りのレシピを多数掲載。いずれも電子レンジなどを多用した簡単なメニューばかり。進学を控えたお子さんに料理の基本を伝授する際の参考にしてほしい。