佐野 史郎さん × 山本 恭司さん インタビュー

「居ていいんだよ」と子どもの存在を肯定して

顔写真

俳優: 佐野 史郎さん
ギタリスト:山本 恭司さん

変化の激しい世の中を生き抜くには、大学進学に際し、どのような心構えをしておくとよいのだろうか。また、保護者はこの年代の子どもにどう接していけばよいのだろうか。高校の同級生である佐野史郎さんと山本恭司さんから、高校生と保護者へのメッセージをいただいた。

(左)佐野史郎さん(さの・しろう) 1955年生まれ。島根県松江市出身。高校卒業後、上京して美学校で学びながら芝居を始める。劇団シェイクスピア・シアターの創立に参加後、状況劇場を経て、1986年「夢みるように眠りたい」で映画デビュー。個性派俳優として数多くの作品に出演し、映画監督や音楽活動など様々な分野で活躍。

(右)山本恭司さん(やまもと・きょうじ) 1956年生まれ。島根県松江市出身。15歳でギターを始め、高校を卒業後、ネム音楽院(現・ヤマハ音楽院)に入学。20歳でロックバンドBOWWOWのギタリスト・ボーカリストに抜擢され、キッスやエアロスミスの日本ツアーに同行して注目を集める。その後はVOW WOWを結成し、ロンドンを拠点に海外で約4年間活動して高い評価を得る。

青春ドラマのように夢を語った高校時代

「小泉八雲朗読のしらべ」
佐野さんが脚本と朗読、山本さんが音楽と演奏を担当する「小泉八雲朗読のしらべ」は2007 年より開催。海外公演も好評を博している。

――おふたりは松江南高校時代の同級生だそうですね。

山本
高1の頃から音楽好きなメンバーでセッションをしていて。僕にギターのコードを教えてくれたのは佐野なんですよ。
佐野
出会ったのが恭司が15歳のときだから、今年でもう49年になるのか。
山本
そう考えるとすごいね。
佐野
恭司とは高3のときに、教室の前の踊り場で「俺は役者になる」「俺はギタリストになる」と青春ドラマのように語り合ったよね(笑)。
山本
あの頃は食事中も食べ物を噛んでいる間は箸をピックに持ち替えて練習してたし、女の子とのデートにもギター持参。寝るときと授業中以外はずっとギターを弾いてたね。

何をやりたいのか考え抜くことが大切

「佐野 史郎さん
佐野 史郎さん

――進路を選ぶにあたって大切なのは、どのようなことだとお考えでしょうか。

佐野
大学進学を目指すのであれば、「何を学びたいのか」をはっきりさせておくことが大切だと思います。「この先生の講義を受けたい」ということでもいい。大学に入ることだけを目的にしていると、入学後に何をすればいいのかが分からなくなってしまいますよね。
山本
僕がネム音楽院に進んだのは、ギターを弾いていると「勉強しなさい」と叱られるような環境ではなく、ギターを弾けば弾くほどほめられる環境に身を置きたかったから。やりたいことがはっきりしていたから、迷いはなかったです。
佐野
僕は幻想怪奇的な世界に興味があって、それを活かすには自分という人間を「こいつはどんな適性があるんだろう?」という視点から見てみたんです。いわば、セルフプロデュースですね。それで俳優を志したわけですが、「なんとなく」ではなく、「何をやりたいのか」「自分はどういうものに向いているのか」を考え抜いたことが今につながっているように思います。

子どもに干渉しすぎず信じて見守れる親に

山本 恭司さん
山本 恭司さん

――好きなことを仕事にされたことで、取り組む意識に変化はありましたか。

山本
演奏を聴いてくれた人が笑顔になるのを見て、ギターには人を幸せにする力があるし、僕にもその力があるのかもしれないと感じるようになりました。これはどんな職業でも言えることですが、プロというのは人をハッピーにしてなんぼ。周りの人をハッピーにする力があることを実感できれば、自分もハッピーになる。そして、仕事をもっと好きになり、熱心に取り組むからさらに上達するという良いサイクルが生まれます。
佐野
人間がハッピーでいるために大切なのは、「居ていいんだ」と自分の存在を肯定してもらえること。世の中がどう変わろうと、「居ていいんだ」と肯定してもらえれば生きていける。僕は悪役を演じることも多いですが、世の中で「悪人」と言われるような人のことを、「どうしてそうなったの?」と寄り添い認めてあげたいという思いが根底にあるんですね。嫌われる喜びとでも言うんでしょうか。
山本
気持ち悪いものを美しくできる。それが芸能の力だから。

誰かを幸せにするのがプロになるということ

――高校生と保護者にむけたメッセージをお願いします。

佐野
高校生の皆さんは、世の中に対して「何か変だぞ」と思う感覚を大切にして、どうすればいいのかを自分で考えてみてほしい。いろいろ考えるなかで「これなら信用できる」と思えるものを見つけておくと、それを誰かが見抜いて進むべき道へ導いてくれるように思います。
山本
人は誰でも他の人には真似できない才能を持っているはず。だから自分にブレーキをかけちゃいけないし、親は子どもが興味を持ったことをやらせてあげた方がいい。夢に反対してブレーキをかけてしまうと、「あのときにやっておけばよかった」と子どもが後悔する結果になりかねません。もちろん、それが子どもの本当にやりたいことなのか、親を試そうとして言っているだけなのかは見極める必要がありますが。
佐野
子どもの選択に親がいちいち干渉していると、子どもは親に嫌われないように生きなければと追い詰められてしまうケースもあると思います。
山本
僕も10代の頃は親が干渉しすぎるように思えて家に帰りたくない時期があったし、そのせいで自立が早くなったところはあるかもしれない。
佐野
いまだに「髪を切りなさい」って言われてるんでしょ?
山本
いまだにね(笑)。
佐野
何の見返りもなかったとしても、子どもが幸せになれれば、親自身も幸せになれるはず。生きるうえで最も大切なのは、「みんなが幸せになる」ということ。子どもへの接し方で迷ったときは、その原点に立ち返り、親が「居ていいんだよ」と子どもを肯定できる存在でいられるといいですよね。