ちょっと気になるSDGs


SDGsの前身となったMDGs(ミレニアム開発目標)

「SDGs(Sustainable Development Goals;持続可能な開発目標)」とは、2015年9月の国連サミットにおいて全会一致で採択された、「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載された国際目標のことです。今や世界の共通言語となっているSDGsがどのようにして策定されたのか、ちょっと気になるその背景と歩みを覗いてみましょう。

SDGsの歩み

日常生活の危機的状況
~世界と日本の持続不可能性を実感~

世界で頻発する終わりの見えないテロや紛争、国境を超える感染症、北極圏の氷の加速度的な減少や世界各地で多発する異常気象、また組織的なグローバル企業や長富裕層の税逃れ、貧富の差の拡大など、私たちの安心で安全な生活を脅かす厳しい現実は数えきれないほどです。この状況は日本でも例外ではなく、超高齢化社会の到来や頻発する災害などを含め、様々な危機的状況にさらされています。

メドウズらの未来予測では、環境汚染や利用可能な資源の激減によって、人類は2030年から2040年に大きな経済的破壊に直面するとされていました。これほどまでに、全世界で「環境」「社会」「経済」の持続不可能性が明らかになっているという現実から、だれも目を背けるわけにはいきません。

持続不可能性が近年で最も高まっている世界を変革することを目指しているのが「持続可能な開発のための2030アジェンダ」であり、その中で地球規模課題の解決を目指す大きな目標として策定されているのがSDGsなのです。

「持続可能な社会」を目指して~SDGs採択までの世界的な流れ~

第二次世界大戦後、世界は復興から成長へと歩みを進めましたが、その一方で人口の急増や地球環境の悪化、先進国と発展途上国の巨大な経済格差や貧困といった課題が浮き彫りになってきました。

国連が設置した「環境と開発に関する世界委員会」は、1987年に「我ら共有の未来(Our Common Future)」という報告書を発表しました。その中では持続可能な開発について、“将来の世代の欲求を満たしつつ、現在の世代の欲求も満足させる開発”と述べられており、これが現在でもこの言葉の定義として広く受け入れられています。

SDGsが記載されている「2030アジェンダ」も、現代の我々のために、将来世代の可能性を奪ってはならない、という考えのもと採択されました。

1945年の国連設立から今日まで行われてきた、国際会議や条約の採択を含む環境問題や性差別、人権・社会問題といった様々な分野に関する取り組みは、「持続可能な社会」を目指すうえですべてつながっています。

SDGsに至るまでの経緯について

SDGsには前身がある!?
~MDGs(ミレニアム開発目標)~

SDGsは、国連開発計画の主導で2001年に策定された「MDGs(ミレニアム開発目標)」を前身として作られました。このMDGsは発展途上国向けの開発目標であり、2000年に採択された「国際ミレニアム宣言」と1990年代の主要な国際会議で定められた開発目標をまとめたものです。【貧困・飢餓】【初等教育】【女性】【乳幼児】【妊産婦】【疾病】【環境】【連帯】に関する8つの目標と、それに基づく21のターゲット・60の指標が掲げられていました。MDGsは2015年を達成期限としていた目標で、1日1.25ドル未満で生活する人々の割合が半減する、小学校で男女の就学率がほぼ同数になる、マラリアによる死亡者数が約3分の1減少するなど一定の成果を残している一方で、乳幼児や妊産婦の死亡率低減未達成、サハラ以南の南部アフリカにおける進捗の遅れ、都市部と農村部の格差拡大といった課題は改善されず残ったままとなったのです。こういった結果を踏まえ、SDGsのGoal1~6、そしてGoal17はこのMDGsを引き継いで設定されました。

参画型・透明性を大切に~3年以上の議論の末策定されたSDGs~

前身のMDGsが国連開発計画の主導で策定されたのに対して、SDGsは徹底した参加型で、3年以上にわたる議論の末に策定されました。SDGsを発案したのは、2015年にノーベル平和賞を受賞したファン・マヌエル・サントス大統領を要するコロンビア共和国の政府です。2012年6月に行われた「国連持続可能な開発会議(リオ+20)」では、コロンビア政府が提案した「環境・経済を開発に統合する包括的開発目標」が同会議の主催国であるブラジルに受け入れられたことで、SDGsの策定が目玉となりました。

その後、国連ではこれを審議するオープンな作業部会(Open Working Group;OWG)が組織され、女性、子どもや若者、少数民族、産業界、NGO、科学者といった非国家主体を9つにまとめた「メジャー・グループ」も参加して審議がされました。草案に対し意見を言い合い、対案を出し、成案に進めるプロセスも公開されており、9つのメジャーグループとその他4グループの合計13グループが、公式プロセスで国連のSDGsに意見を反映させました。

SDGsを考える上での「5つのP」

持続可能な開発のための5つのP
~SDGsのもうひとつの捉え方~

SDGsは、持続可能な開発のための「5つのP」を掲げています。5つのPは、「People=人間」「Planet=地球」「Prosperity=豊かさ」「Peace=平和」「Partnership=パートナーシップ」を指します。SDGsの諸目標とターゲットはいずれも、人間、地球、豊かさ、平和のための目標であり、国際社会のパートナーシップにより実現を目指します。文末のかっこの中に関連するGoalを表します。

人間(People)
すべての人の人権が尊重され、尊厳をもち、病棟に、洗剤能力を発揮できるようにする。貧困と飢餓を終わらせ、ジェンダー平等を達成し、すべての人に教育、水と衛星、健康的な生活を保障する。(1,2,3,4,5,6)
地球(Planet)
責任ある消費と生産、天然資源の持続可能な管理、気候変動への緊急な対応などを通して、地球を破壊から守る。(12,13,14,15)
豊かさ(Prosperity)
すべての人が豊かで充実した生活を送れるようにし、自然と調和する経済、社会、技術の進展を確保するということです。(7,8,9,10,11)
平和(Peace)
平和、公正で、恐怖と暴力のない、インクルーシブな(すべての人が受け入れられ参加できる)世界をめざす。(16)
パートナーシップ(Partnership)
政府、民間セクター、市民社会、国連機関を含む多様な関係さが参加する、グローバルなパートナーシップにより実現を目指す。(17)

国際連合広報センターHPより

ウエディングケーキモデルって何??

SDGsの概念を表す構造モデル
~環境、社会、経済~

Azote Images for Stockholm Resilience Centre, Stockholm Universityより

SDGsがめざすのは、①地球の環境を守りながら、②すべての人が尊厳をもって生きられる社会と、③誰もが豊かな暮らしを継続的に営むことのできる経済を実現することです。①は環境、②は社会、③は経済の側面です。

それを分かりやすく図式化したのが、右下の図です。「社会」と「経済」は「環境」なくして成り立たないということです。ウェディングケーキに形状が似ていることから「SDGsウェディングケーキモデル」と呼ばれています。国際的に著名な環境学者であり、SDGsのもととなる概念「プラネタリ―バウンダリー(地球の限界)」を提唱したヨハン・ロックストローム博士とパヴァン・スクデフ博士が考案しました。

6、13、14、15の目標によって環境を守り、1、2、3、4、5、7、11、16の社会を実現し、8、9、10、12の経済活動を可能とします。これらを実現するために欠かせないのが、一番上にある17のパートナーシップです。国や企業をはじめとした全世界の人々がパートナーシップを組むことなしに、持続可能な社会を作り上げることを目標にしています。