ごあいさつ

全国大学生活協同組合連合会 会長理事 生源寺 眞一

ハンドブック発刊に寄せて

 大学のキャンパスには着実に浸透してきました。これがSDGsをめぐる私自身の最近の実感です。3年前にはどうだったでしょうか。大学として推進本部をスタートするなど、先駆的な取り組みに着手したケースもありましたが、まだまだ少数に限られていました。したがって、学生の皆さんへの情報提供も一部にとどまっている状態でした。そんな状況のもとで、大学生協連も学内・学外に発信する活動を本格化したわけです。とくに2018年12月に名古屋で開催された第62回の総会では、特別アピールが採択されました。特別アピールには、地球社会のあり方を模索するうえでSDGsが果たす大切な役割を確認し、広く共有するねらいがありました。

 今日では、大学の講義でSDGsが取り上げられることも珍しくありません。キャンパスの掲示版などで、17のゴールの図柄の入ったポスターを目にすることもあります。なかには「誰一人取り残さない」というフレーズを印象深く記憶している方もおられると思います。これはSDGsの公式文書「持続可能な開発のための2030アジェンダ」の前文の一節で、we pledge that no one will be left behindが原文です。さらに大学生協の学生組合員の場合であれば、自分自身が専門的に学んでいる分野と17のゴールや169のターゲットが深く結びついているケースもあるに違いありません。むろん、日々の暮らしと関係の深いSDGs、したがって、小さいながらも自分の貢献を意識できるゴールやターゲットもあるはずです。

 ここから先のSDGsの具体的な情報については、このハンドブックの本論に委ねることにしたいと思います。残された紙幅では、SDGsの特色について、やや俯瞰的な観点から私なりの印象を書き留めておきましょう。

 SDGsはふたつの大きな流れを引き継ぐかたちで構成されています。ひとつは2000年に策定された「国連ミレニアム開発目標」、すなわちMDGsの流れです。8つの目標を掲げたMDGsは基本的に開発途上国を対象としており、貧困と飢餓の克服を目指すものでした。この流れには前史があります。とくに1996年に開催された世界食料サミットにおいて地球上の栄養不足人口を減らすことが強調されており、これを具体的に反映して作成された目標がMDGsでした。世界の食料問題はSDGsのひとつの原点だと言ってもよいのです。SDGsの冒頭には「貧困をなくそう」と「飢餓をゼロに」とありますね。

 ひとこと付け加えておきますと、食料は途上国の貧困層だけの問題ではありません。SDGsの目標12は「つくる責任、つかう責任」と表現されていますが、そのターゲットのひとつには「2030年までに小売・消費レベルにおける世界全体の1人当たりの食料の廃棄を半減」と明記されています。先進国の私たちも無駄のない毎日の食事によって、みずからの貢献を自覚できるわけです。なお、日本では昨年「食品ロス削減法」が超党派の議員立法として成立しましたが、この法律もSDGsを強く意識しています。興味のある皆さんは、法律の前文を読んでみるとよいでしょう。

 さて、SDGsが引き継いだもうひとつの流れは、経済発展と環境破壊をめぐって形成されてきた国際社会の強い姿勢です。大きな転換点となったのは、1992年に開催された国連環境開発会議です。「環境と開発に関するリオ宣言」として基本原則が高く掲げられるとともに、具体的な行動計画である「アジェンダ21」が公表されたのです。ご存知の方も多いと思います。こちらの流れについても、国際的に多くのできごとがありましたが、ここではひとつだけ触れておくことにします。それは、1987年に国連の「環境と開発に関する世界委員会」が報告書Our Common Futureを公表したことです(邦訳は『地球の未来を守るために』)。

 委員長のノルウェイ女性首相の名前からブルントラント委員会と呼ばれていますが、内容の面では「持続可能な開発」のコンセプトを国際社会に急速に広めたところに大きな貢献がありました。すなわち、「将来の世代がそのニーズを満たす可能性を損なうことなく、現在の世代のニーズを満たすような開発」こそがSustainable Developmentだというわけです。なお、英語のdevelopには自動詞の「発展する」と他動詞の「開発する」の意味がありますから、Sustainable Developmentは「持続可能な発展」と訳すこともできます。SDGsも「持続可能な発展目標」ですね。むしろ、発展と開発の双方を含んだ概念だと理解すべきでしょう。

 私たち人間には、家族や友人など、身の回りの人々のことが気になる面があります。自分だけでなく、周りの人々の明日の状況が心配になることも少なくないでしょう。これに対して、SDGsには人類社会へのスケールの大きな気配りの精神が込められています。大きな流れのひとつは、サハラ砂漠以南のアフリカや南アジアに典型的な食料問題に光を当てていました。そして、もうひとつの流れは、将来世代の可能性の確保が不可欠だと明言しています。30年、あるいはその先も視野に含まれているのです。

 一方には、自分たち自身の毎日の身近なつながりがあり、他方でSDGsはPlanetとPartnershipという表現を用いながら、次の世代を仲間に含めた地球社会の連携の大切さを訴えかけています。そのスケールは違います。けれども、身近なつながりと地球社会の連携の橋渡しを担うことのできる組織が存在しているのです。それが世界各地で活動する多彩な協同組合にほかなりません。言うまでもなく、私たちの大学生協もその一角を占めています。

 組合員の交流はときには大学の枠を越えることになりますし、国際交流の取り組みも定着しています。大学生協は組合員の相互扶助の組織であると同時に、外に開かれた能動的な活動組織でもあるのです。縦のつながりという点でも、先輩から後輩への継承・発展に加えて、教職員組合員と学生組合員のあいだには異なる世代間の交流という要素が濃厚です。こんな大学生協の特色を踏まえながら、SDGsが具体的に提示している空間的・時間的視野の意味合いをしっかり受け止めたいと思います。そして、毎日の暮らしをベースにした協同活動の発展形を模索すること。これがSDGsを受け止めた大学生協の橋渡しの役割にも結びつくのではないでしょうか。
(2020年8月)

全国大学生活協同組合連合会 会長理事 生源寺 眞一(福島大学食農学類長)

SDGsを深く学ぶ

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「現代の魔法使い」とも称されるメディアアーティストの落合陽一さん。筑波大学で教鞭を執りながら、メディアアーティストや、社会問題へ一石を投じるビジョナリーとしてもご活躍されています。また、これからの社会を取り巻くグローバリゼーションやテクノロジーなどをテーマにした著作も数多く出版されています。今回のインタビューでは、急速に進む技術革新や新型コロナウイルス感染症の拡大など、予測不能な社会の中で、大学生・若者がどう生きるべきか・学ぶべきか、教えていただきました。

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