国連広報センター
根本 かおるさんからのメッセージ

 「持続可能な開発目標(SDGs エス・ディー・ジーズ)」という言葉を耳にしたことはありますか?2030年までに先進国も開発途上国も協力してこの世からあらゆる形態の貧困をなくし、経済・社会・環境のバランスを大事にして後世につなげていくことのできる未来をつくろうという、17つのゴールからなる世界目標です。2015年9月に国連で採択され、今年で実施4年目に入り、より規模感とスピード感をもって取り組まなければ達成できないということが浮き彫りになってきました。

 SDGs誕生の背景には、「このままではこの美しい地球を、豊かな社会を将来世代につないでいけない」という強い危機感がありました。貧富の格差が先進国内でも途上国内でも国と国の間でも広がっています。経済のグローバル化は概ね人々の生活を便利にして世界を豊かにしましたが、その恩恵は平等には行き渡ってはいません。ソーシャルメディアの発達で、腐敗や不公平のニュースは瞬く間に拡散され、人々の間に不平等感と怒りを植えつけ、格差と不満が社会を不安定化します。紛争の数が増え、安全を求めて移動する難民・避難民の数は第2次世界大戦以降最高の水準になり、移民・難民への偏見や不寛容があらゆる地域で広がっています。

 さらに、今世紀に入って気候変動が「人類の存亡を左右する脅威」として猛烈なスピードで深刻化しています。小さな島国では地球温暖化による異常気象や海面上昇などの影響で移住がすでに現実のものとなり、日本でも台風の大型化、水災害の増加は顕著です。

 SDGsは極めて野心的で、2030年にあるべき社会の姿からバックキャスティングして行動することを要求します。国も企業もNPOも大学も、そして個人も、あらゆるアクターが全力を尽くさなければとても到達できるものではありません。私が様々な機会をとらえて「SDGsを自分事に」と強調しているのは、このような背景があるからです。合言葉は「誰一人取り残さない」。置き去りにされがちな少数者の存在を認識して最初から包摂することを求めます。

 SDGsの実践に向かい合うと、課題同士、担い手同士のつながりへの意識が深まり、ものごとをつなげながら統合的に考える力や、思いとリソースを持った人同士を結び付けてより良い方向を目指すプロデュース力が鍛えられます。日本では小学校では来年度から、中学校では再来年度から学習指導要領にSDGsが盛り込まれ、生徒たちは皆SDGsについて学ぶことになります。

 ユースの皆さんには柔軟な頭と大胆な行動力で、まずは日々の暮らしの中で気になることから取り組んでいただければと思います。大学生協であなたが手にする商品がどこでどのように作られて手元に届けられたのか考えることから始めるのもいいでしょう!

根本かおる 国連広報センター所長

東京大学法学部卒。テレビ朝日を経て、米国コロンビア大学大学院より国際関係論修士号を取得。1996年から2011年末まで国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)にて、アジア、アフリカなどで難民支援活動に従事。ジュネーブ本部では政策立案、民間部門からの活動資金調達のコーディネートを担当。WFP国連世界食糧計画広報官、国連UNHCR協会事務局長も歴任。フリー・ジャーナリストを経て2013年8月より現職。2016年より日本政府が開催する「持続可能な開発目標(SDGs)推進円卓会議」の委員を務める。著書に『難民鎖国ニッポンのゆくえ - 日本で生きる難民と支える人々の姿を追って』(ポプラ新書)他。