国連大学
沖 大幹 上級副学長からのメッセージ

 持続可能な開発目標(SDGs)は、2015年9月に193の全ての国連加盟国の合意を得て採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ(2030アジェンダ)」の中核です。アジェンダ2030の前文では、「人類を貧困の恐怖及び欠乏の専制から解き放ち、地球を癒し安全」な世界へと変えていこうという国際的な決意が表明されています。また、経済、社会、環境の3つの側面のバランスをとってすべての人間が豊かで満たされた生活を享受できること、尊厳と平等の下に、また、健康な環境下で各人が自分自身の潜在能力を発揮できること、平和やパートナーシップ、気候変動対策や持続可能な消費や生産など地球環境保全などが持続可能な開発には不可欠であることなども明記されています。

 SDGsは17の目標群にまとめられた169のターゲットからなります。あまりにも膨大なので、つい「できることから始めよう」という気になるかもしれませんが、それには注意が必要です。「できること」だけでは、最も貧しく最も脆弱だけれども、最も開発が困難な人や地域がつい後回しになりがちだからです。

 アジェンダ2030を象徴する標語は「誰一人取り残さない」ですが、それは、手軽に「できることだけやっていれば良い」のではなく、「最も遅れているところに第一に手を伸ばすべく努力する」必要がある、という戒めなのです。

 確かに、169のターゲットは国連加盟国や国際機関でないと正面から取り組むには困難なものが大半です。そのため、ターゲット12.3の「食料の廃棄を半減」といった、一市民でも取り組みやすい目標に注力したくなるかもしれません。一方で、我々にできる身近な気候変動対策である「省エネ」は、SDGsの直接の目標やターゲットではありませんが、アジェンダ2030の趣旨には十分沿っています。そこで、現状のSDGsにはなくとも、アジェンダ2030の趣旨を汲み取り、より良い世界へと変革していくために必要なターゲットを独自に設定し、その達成に向けた行動をしても良いのではないでしょうか。

 また、我々生活者が世の中を変えられる最大の武器は投票権に加えて購買力です。アジェンダ2030の趣旨にそったビジネスを展開している会社や組織のモノやサービスを選択的に利用する、という行動を通じてみんなでより良い未来社会を構築できると確信しています。

国際連合大学 上級副学長 沖 大幹