CASE 6

学生の到達度を何回も確認しながら
「形成的評価」の機会を、
より増やしていきたい!

広島大学
松下 毅彦准教授



聞き手:大学生協東京事業連合 森川佳則

──広島大学医学部医学科での受講されている学生数、採用されている講義数について教えてください。

松下

現在は医学科の2年生127名、3年生121名で使っていて、これらの学年のすべての専門科目で利用しています。1年生は現在は教養科目を受けていますが、12月から専門科目が始まるので、 1年生122名でも12月から利用が始まります。当大学では4年生以上には講義科目はほぼないので、事実上医学科のすべての専門科目で利用していることになります。

──実際授業の使用までに困ったことなどありましたらお教えください。

松下

学生が一日中問題なく使用できる環境を準備する必要がありました。
当大学では大学全体として必携パソコンの制度を導入しているので学生は必ず全員パソコンを所持しています。しかし、パソコンを学生が必携していても、当大学ではすべての授業でこのシステムを使っていますので、1日の利用時間は6時間から8時間くらいになります。パソコンをフル充電しておかないと途中で充電が切れてパソコンが止まってしまい、以後授業を受けられなくなります。
そのため、各座席の電源コンセントの用意は必ず必要だと思います。当大学の講義室にはその設備がなかったので、このシステム導入に合わせて講義室に電源の設置工事を行いました。
また、ネット環境を整備する必要があります。当大学には元々講義室にはWi-Fiの設備がありませんでした。ちょうど昨年度、全学的に講義室にWi-Fi設備を設置することになったのですが、当初の計画では全員が同時に利用できるような性能のものではなかったため、特別にお願いして、医学科の講義室だけはアクセスポイントを規定より多く設置してもらい、ネット環境を整備しました。

あとは、当然ですが、学生にはまず使い方を覚えてもらう必要があります。時間を150分とって説明会を行いましたが、 いろいろと多機能過ぎて、1回聞いただけではとても使いこなせないというのが実際のところだったと思います。使い方を具体的な細かいところまで含めてどうガイダンスしていくかというのは、今後の大きな課題です。

──広島大学では多くの教員の方に利用いただいていますが、多くの教員が取り組むうえでのポイントやご苦労なされた点をお教えください。

松下

学生同様に、教員の先生方にも使い方を覚えていただく必要があります。これが実は学生以上に大変でした。私の方で操作マニュアルを作って配布しましたし、導入前には使用法の説明会も行いました。都合が合わない先生もおられるだろうと思って、同じ内容の説明会を3回行って、どれかに出席してくださいとアナウンスをしました。それでも都合の合わない先生がかなりおられたので、説明会の様子をビデオに収録して公開して、説明会に来られなかった先生はそれを観てくださいというようにしました。それでも運用開始当初は、使い方に関する問い合わせがかなり来ました。

──何か特徴的な機能の使用法、工夫などありましたらお教えください。

松下

アンケート機能はこのシステムの最大の特徴で、個人別の回答をリアルタイムで参照できるという、通常のクリッカーにはない機能を持っていますので、積極的に利用してもらうよう教員の各先生にはお薦めしています。
現在、多くの先生は授業の中で利用されているようです。ただ、アンケート機能を授業中に使うためには、スライド上映用のパソコンとは別に、もう1台パソコンが必要になりますので、システム導入に先立って教卓上に常設パソコンを設置しました。

──授業終了後、学生様にアンケートを取られたとお聞きしましたが、学生様の声で特徴的なものはありますか?

松下

このシステムは去年導入したのですが、去年の学生アンケートを見たところ、「ノートをとる機能が非常に使いにくい」という指摘が多数ありました。
実際に中身を見てみても、ノートをとる機能が、従来紙資料を配っていたときには、紙の上にペンで書き込んで学生はノートをとっていたわけですが、それに比べるとかなり手間の多い使いにくいものになっていると感じました。
しかし、今年度は改善されていました。

──授業や学生の姿で何か変化のあったポイントや、成果がありましたらお教えください。

松下

このシステムの導入は、当大学で導入した新カリキュラムに連動して行ないました。従来は教員が90分間一方的に喋るスタイルの講義で授業が行われていたのですが、新カリキュラムでは講義は授業時間の半分程度に留めて、残り半分の時間では、学生に学んだ知識を実際に使ってもらう演習授業を行うようになっています。この演習の時にアンケート機能はよく利用されています。このようなかたちで授業が双方向性になったことで、自分の知識の理解の程度、修得の程度も学生は知ることができますし、学生からの評判もいいようです。

──今後の授業に対しての展望・抱負などお聞かせください。

松下

現在の大学教育では、教育の過程で学生の到達度を何回も確認して、その到達度に合わせた指導を行っていく、いわゆる「形成的評価」の機会が絶対的に不足していると思います。
科目の最後にテストをして合否を決定するという評価は以前から行われているわけですが、それだけではなくて、今後はこのようなシステムも利用しながら、形成的評価の機会を増やしていきたいと考えています。

──今後、大学生協に期待することはございますか?

松下

教育の内容や方法は、大学ごとに異なりますので、当然ながら、このようなシステムに期待される機能も大学ごとに異なってきます。各大学の要望に合うような機能を今後も積極的に搭載していってもらえたらいいなと思っています。

松下 毅彦(まつした たけひこ)

1962年、東京生まれ。鹿児島大学医学部 卒、同大学院医学研究科修了。
スタンフォード大学研究員、鹿児島大学特任講師を経て、平成24年より広島大学
医学部附属医学教育センター 副センター長。
【専門分野】医学教育学、教育工学
【研究テーマ】ICT利活用教育、eラーニン グ教材の研究・開発、プロフェショナリズム教育、アウトカム基盤型教育の手法、 その他医学教育全般