第47回学生生活実態調査の概要報告 part2
※データの無断転載はお断りいたします
2012年7月9日
豊かな人間関係と集団での体験が「内定」の力に
~第47回学生生活実態調査データより~
- "就職"の内定を得る大学生活は
- 内定に至らない学生の不安
全国大学生活協同組合連合会(以下 全国大学生協連)では、毎年秋に「学生生活実態調査」を実施しており、2012年2月には、47回の調査結果概要として、経済生活と東日本大震災以降の意識を中心に報告させていただきました。
この調査では、学生の意識や行動について広くたずねており、就職に関する意識も経年で捉えることができ、この間は厳しい就職状況を反映して、「内定」がとれるかどうかという不安が高まっています。
2011年秋の本調査では就職希望者の4年生のうち「内定している」は67.4%でした。今回は「内定」を切り口として、「内定」者と「非内定」者の背景にある学生生活の過ごし方の違い、また「非内定」者が感じる不安の内容などを改めて分析しました。
2011年度の大学卒業生の就職率は93.6%(文部科学省・厚生労働省調査『就職状況調査』より)と前年から回復傾向でしたが、引き続き多くの学生が就職に対して不安を抱え、大学生活にも影響を及ぼしている様子を認識いただければ幸いです。
はじめに 調査概要とサンプル特性
<調査概要>
1.調査実施時期 | 2011年10~11月 |
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2.対象 | 全国の国公立および私立大学の学部学生 |
3.回収数 | 16,885(回収率31.2%) |
<今回の分析に当たってのサンプル特性>
回収数16,885名のうち4年生で就職を希望している学生 1,881名(文系1,195名 理系686名)※ | 医歯薬系(539名)は国家資格取得やインターンなど就職事情が特殊なため除き、今回は文系と理系の傾向を全体として報告します。 |
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※ | 「内定者」および「非内定者」について 調査の質問項目「就きたい職業が決まっているか?」の回答により、以下のように定義しました。 |
- 内定者…「内定している」と答えた学生
- 非内定者…「内定はしていないが、はっきり決めている」
「だいたい決めている」「あまり決めていない」「決めていない」と答えた学生
【表1】 サンプル特性


"就職"の内定を得る大学生活は
豊かな人間関係と集団での体験が「内定」の力に
厳しい就職状況が続く中で、学生には資格取得や就活スキル以上に、コミュニケーション力や問題発見・解決力などの「人間力」が求められている。そのため大学も正規のカリキュラムで教室内の座学に留まらない、体験学習やインターンシップなどに力を入れ、学生が能動的に学習や活動を重ね、幅広い世代とのコミュニケーションや学生同士の共同体験を重視している。
今回の調査でも、人間関係を築くことや、サークル等の団体内での行動が「内定の獲得」にプラスの作用を及ぼしていることが強く見受けられた。
1. | まず、大学生活を送る際に「何を重点にするか?」では、「よき友を得たり豊かな人間関係を結ぶことを第一においた生活」を選択した学生の内定率が、他の項目を選択した学生を上回り、74.0%と最も高い(図1)。 |
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2 | そして、「日頃悩んでいることについての相談相手」が「いる」と答えた学生の内定率は69.5%だが、「いない」と答えた学生は53.8%と低く、15.7ポイントも差がある。特に男子ではこの傾向が強く、「相談相手がいる」男子学生の71.7%が「内定している」のに対し、「相談相手がいない」学生は52.0%に過ぎず、約20ポイントと大幅な差がある(図2)。 |
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3 | 次に、先の「何を重点にするか?」で、「サークル・同好会の活動を第一においた生活」を選択した学生の内定率が70.1%で二番目に高い。実際にサークルに「現在加入」している学生のうち71.4%が内定しており、「加入したことがない」学生の内定率58.7%と明確な差が見られた(図3)。 |
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4 | なお、今回の分析により、大学入学の際の入試形態別では、一般入試での入学者では68.8%が内定しているのに対し、推薦入試での入学者は64.2%と低いことも判明した。特に私立大学では、内定者が一般入試では72.2%であるのに対し、推薦入試では63.6%と差がはっきり表れている。(国公立大学は一般入試67.5%に対して推薦入試65.7%であった)(図4)。 |
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概して、推薦で入学した学生の学力が一般入試で入学した学生より劣ることは、以前から大学関係者より指摘されてきた。 推薦入試で入学した学生は、学力の向上だけに留まらず、多様な人間関係の構築や能動的な活動や行動がより求められているようだ。

内定に至らない学生の不安
内定に至らない学生の大半が、就職についての不安を抱え、専攻分野や自分の能力について再考する学生も
アルバイト就労も少なく、暮らし向きの見通しも厳しい
(1)不安や悩みが多い、内定に至らない学生1. | 日常悩んでいることについて、内定者の11.2%は「特になし」としているが、一方で非内定者は悩んでいることが「特になし」が2.8%に過ぎず、ほぼ全ての学生が悩みを抱えている。その内容はやはり「就職のこと」が74.1%と最も多い(図5)。 |
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2. | 悩みが、非内定者は「自分の性格や能力のこと」(32.3%・内定者24.8%)や「生きがいや夢中になれることが見つからない」(17.0%・内定者10.5%)、さらに『就職に対する不安』では「自分が何に向いているか」が30.0%を占めるなど、自身を見つめる内容が多い(図5・図6)。 |
3. | 「専攻分野や進路のこと」も内定者が9.9%に対し非内定者は27.2%と高い。また理系の男子では「専攻分野…」のほか「授業・レポート等勉学上のこと」といった学業に関する悩みが非内定者に多く、進路変更も含めた検討に迫られている様子がうかがえる(図5)。 |
4. | そして「心身の不調・病気など健康のこと」について日常的に悩んでいる非内定者が12.7%(内定者は8.8%)もおり、内定に至っていない学生へのサポートが欠かせないことも今回の結果から明らかになった(図5)。 |


(2)学生生活の充実や、大学が好きなことも内定に大きく影響
1. | 学生生活について「充実している」「まあ充実している」学生は、内定者の91.1%に対し非内定者は84.1%と低い。特に男子は、内定者が88.6%、非内定者は74.7%と、その差は13.9ポイントと、女子(1.3ポイント差)に比べてこの傾向が大きい(図7)。 |
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2. | 自分の大学が「好き」も内定者42.3%に比べ非内定者は34.4%と少ない(図8)。 |
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(3)アルバイトもままならず、暮らし向きも苦しい、内定に至らない学生
1. | 半年間のアルバイト経験が「ある」のは、内定者77.8%(男子73.4%・女子81.4%)、非内定者67.9%(男子59.7%・女子74.6%)と非内定者のアルバイト経験は少ない(図9)。 |
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2. | 現在の暮らし向きについては、「大変楽な方」や「楽な方」が内定者48.9%に対して非内定者は40.7%と少なく、「苦しい方」や「大変苦しい方」は内定者11.2%、非内定者15.6%と多い。さらに今後の暮らし向きについても「かなりよくなる」や「少しはよくなる」は内定者41.6%、非内定者17.3%で、「少し苦しくなる」や「かなり苦しくなる」が内定者21.7%、非内定者39.5%と、今後の経済生活も厳しい見通しの非内定者が多い。(図10・11) |
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2012年5月に発表された「就職状況調査」(文部科学省・厚生労働省)によると、2012年3月大学卒業者の『就職率』は93.6%と前年から2.6ポイント改善している。一方で2011年10月からの半年間で『就職希望率』は8.0ポイント減少しており、特に「私立男子」はマイナス12ポイントと減少が大きい。その背景には、非内定のまま不安や負担によって進路変更を余儀なくされた学生も多く存在していると思われ、厳しい就職戦線がもたらす学生への影響に対し、引き続き様々な場面でのサポートが必要とされている。
