最近自分が「やばい」「すごい」ばかり言っていることに気が付いて、「やばい」と思った。なにが「やばい」のか。自分が感じていることをうまく表現する言葉を知らなくて相手に伝わらないことがもどかしい。アウトプットできず何を感じたのかどんどん忘れていくことが恐ろしい。そういう「やばさ」だ。
この本はあらゆるものを「〜のようなA」という風に物事を「たとえる」手法について述べている。
では、たとえることで何が変わるのか。感じたこと見たもの聞いたことあらゆるものに対してたとえることで、相手にイメージさせることができる。共感することができる。感じ方の違いに気づくことができる。そしてそこでコミュニケーションが生まれる。自分が何を感じ、どう思ったのか、整理することができる。新しいものの見方を再発見することができる。ただの日常すらこの本を読み、実践することで輝いて感じる。
筆者は小説家であるが、わたしはこの本を読んでずるい、と感じた。同じ時間、同じ国で過ごしていたはずなのに、彼が過ごす世界はあまりに美しかった。小説家はこんな世界を生きているのかと思った。この本を読めば、あらゆることをたとえずにはいられない。自分の感じたことを真に相手に理解してほしい。しかしその方法がわからない。そんな人はこの本を読むべきだ。
この本は、「森の中で植物に擬態する昆虫たちの見つけ方を教えてくれるような本だ。」
わたしはこの本を読み終えていま、そう思う。
奈良県立大学
西元 里佳子