幼い頃は、ただ走っているだけで楽しかった。
この本を手に取る私は、「何か楽しいことないかな」が口癖になっていました。なにかと多忙な日々がただただ過ぎ去る中で、心から楽しめる「何か」がふと現れるのを待っていました。遊びについて学ぶことができる本という、漠然とした感覚で読み始めましたが、本の内容は驚くほど自分の感覚・意識に入って来やすいものでした。
誰かに言われたわけでもないのに、自発的に遊んでいたあの頃を覚えていますか?
オリンピックで何枚ものメダルを手にした陸上選手、為末大が綴った「遊びとは何か」。彼自身のスランプの経験や世界観が読む人自身の視野を大きく広げてくれます。彼の考えや想いが率直に書かれている本なので、スポーツと縁遠い私でも「その気持ち、わかるな…」「こんな時はこう考えたらいいんだ」と、自分の理想の道を歩む先輩と話をしているような気持ちで読むことができました。
文化は遊びの中にはじまる。
遊びの反対は真面目じゃない、遊びが真面目に転換して、真面目が遊びに変化する。
義務になった時、責任となった時に、それは楽しくなくなる。
筆者は上記のような「遊び」と「人間」の関係について考えぬかれた本、『ホモ・ルーデンス』の内容を随所に取り入れています。そのため、1冊を読んでいるのに2冊分の楽しみがあるように感じました。
読み終えた頃には、
――何かに挑戦したいとわくわくする
――頑張りたい気持ちになれる
――自分にも自分が楽しいと感じられるものがあることに気づける
そんな本です。
学生が大人になろうとしている今だからこそ、
または大人になって「遊び」を忘れている時にこそ読んでほしいと思います。
なんだか元気になれないと感じている人に、ぜひお勧めしたいです。
徳島大学 平田結風