学生・院生からのおすすめ本

「騙されたと思って読んでください。そして騙されてください」

この作品は簡単に言うと「小学生の男の子が過ごす一夏の物語」です。しかし、そこからは想像もできないような生々しさ、じっとり絡みつくような感情、じめじめとした陰惨な夏休みが待ち受けています。同級生の自殺、いじめ、猫の変死体、死体の消失、性愛。不気味で気持ち悪く、残酷で生理的嫌悪を感じるのになぜか物語に引き込まれる。おぞましい現実を見せつけながらも読者の視線を引きずり寄せる力がこの本にはあります。
そして最後に待ち受ける衝撃。頭蓋骨を開いて無理矢理新たな世界を見せつけられたような驚きは今でも忘れられません。
この感覚はきっと読んだ人にしか分からないものだと思います。今まで見たことも感じたこともない世界が広がっているのはとても新鮮でした。本の面白さが活かされた作品だと思います。言葉とは何か。小説とは何か。今自分が見ている世界とは何か。それを考えるきっかけになります。
「面白い」じゃ片付かない。そんな世界があなたを待ち受けています。その先に何があるのか、ぜひ読んで確かめてみてください。

富山大学大学院 小出　みなみ