2014 アメリカ大学食堂視察 報告書

(4)視察のまとめ

3、 厨房設備の特徴

【厨房区画】

日本の厨房は区画で仕切られており、出食カウンタ ーも腰壁やカウンターにトレースライドや扉を設置して区画を作りますが、今回視察したほとんどのダイニングでは、この区画がありませんでした。出食の厨房機器や壁に扉がなく、区画としては成立していませんでした。日本の厨房は衛生区画を設けていて下足で厨房内へ入ることはできませんが、今回訪問した大学の厨房は下足で厨房内に入ることができ作業もそのまま下足で行っていました。また、防火区画をどこで設定しているか分かりませんでした。
床はドライ仕様、空調も適温と思われます。

【フード】

フードは厨房機器だけでなく作業をする人のエリアまでカバーされている為フードが大きくなりますが、フ ード内に照明があるので調理している手元が明るいです。そしてフード内にスプリンクラーが配置されていました。最近消防署からフード下にスプリンクラーを設置する指導がありましたので、今後の参考にしたいと思います


【下膳】

ドラム式トレーリターン式が多くの店舗で採用されていました。利点はドラム式トレーリターンはディッシュを載せるトレーが沢山まわっており、下膳に人を配置しなくても空きのトレーがなくなるまで人を配置しなくても済む点です。
コンベア式も腰壁にシルバー回収用の開口に残飯回収用に工夫している店舗がありました。これにより洗浄室側で残飯を処理する作業を効率よくできます。 Umass Worcerter のディッシュリターンはクリンテーブル上に水が流れている洗面器の様な窪みがあり、そこで残飯を落として軽く洗う作業をしていました。初めて見るスタイルで参考になりました。

【循環システム】

残飯と水を分離するシステム
ベルトコンベアのトラフ内の残飯が下の階で水と残飯を分ける装置に接続されていて、自動で残飯はゴミ箱へ水は循環して再利用される仕組みになっています、ゴミはコンポスに利用されるので水には洗剤を使用しない様になっています。日本ではトラフの下部に水の再循環ポンプがあるので、水は再利用されていますがゴミはトラフ内のかごに貯まるので手作業で廃棄します。通常汚れを落とす為に循環している水に洗剤を混ぜています。洗剤を使用しなくするためには、その後の工程でしっかり汚れを落とす仕組みが必要です。
但しシャワーシンクの水は再利用されていません。

【カウンター】

今回カウンターに腰壁を作っているケースはほとんどなく、出食カウンターの厨房機器にシートや天板等内装を施すか家具に厨房機器を埋め込むケースが多かったです。曲線などのカウンターの天板を作成し。その中に厨房機器を埋め込んでいました。
カウンターで最終調理をするダイニングがほとんどでした。これは出来立ての食事を提供するためとパフォーマンスのためです。厨房機器をして、簡単なものはカウンターに卓上 IH コンロを設置して卵料理をしているところや、本格的にトッピングとガスレンジを一体化して効率よく調理できる機器は参考になりました
カウンター下にディッシュを収納できる棚が有りました。大量のトレーが使用されるため収納場所を工夫した結果と思われます。食器ディスペンサーを置くスペ ースないためサービスエリアを有効に使うことができますが、日本では衛生管理の問題により実現は困難と思われます。
ほとんどトレーを使用していない為トレースライドがありませんが、その代わりにディッシュスライドが有ります。ディッシュスライドがない場合はカウンターにディシュを置けるスペースが確保されています。

【冷蔵、冷凍庫】

冷凍の食材がないため冷凍庫は小ないです。
冷凍の食材は魚など冷凍にしないと運搬できない食材に限られ、基本的には新鮮なチルドの食材でほとんど閉められます。

【スニーズガード】

今回のスニーズガードは大変参考になりました。
古いタイプは金属のフレームを使用して、大変ごついものですが、最近の主流はフレームが無く、パイプ仕様でスニーズガードの高さを変更したり、回転させることができるためカウンタ内の出食形態を変更したとしても柔軟に対応できる様になっていました。
日本で夕方や朝にスニーズガードを回転などしてビュ ッフェスタイルにするケースがありますが、今回のスニ ーズガードを参考にできないか検討したいと思います。

【その他の厨房機器】

カウンターのウォーマーとしては、湯煎とヒートプレ ートがありましたが、どのような基準で別けているか分かりませんでした。
今回視察した大学のほとんどは生の食材を加工しているので、特殊な機械を使う必要がないように思いました。食材とメニューに合った厨房機器を選定するので。当然の事と思います。逆に生地から作るといったところではパスタマシンやトルティアマシンが必要とされる訳です。逆にヌードルではオートリフトの無沸騰茹麺機を紹介したいとも思いました。

【施設】

日本と異なるのホールの考え方が異なっていると感じました。ホールを食事をする場所だけでなく、アニメテ ィを含め、空間つくりに工夫をしていると思いました。 コンセプトに合わせた建築からの空間設計、照明設計家具の仕様など色々参考になりました。大学との打合せの中で先生方がイメージされる空間が今回の視察で具体的に理解出来たと思いますし、要望される理由も感覚的ですが理解したような気がします。
しかしながら限られた食堂で、限られた休み時間で限られた空間で如何に沢山の組合員に食事をして頂くか、という現実と調整していくのが今後の課題になると思います。