ICEI年次会議およびインド3大学での交流

本出張の概要について

1. 出張目的

ICEI(ICAアジア太平洋地域 教育機関協同組合委員会)年次会議への参加

  1. 関連してICEIとNCUI(インド全国協同組合連合会)が協賛するスリラム商科大学
    (SRCC)での国際交流プログラムへの参加

チャーナキヤ大学に招待を受け、日本の大学生協についてのプレゼンテーション

2. 主な行程

  • 12/20 香港経由でインド(デリー)に到着
  • 12/21 ICEI年次会議への参加(NCUI本部)
  • 12/22 SRCCでの国際交流プログラム参加→バンガロールに移動
  • 12/23 チャーナキヤ大学訪問(新キャンパス予定地見学)、日本の大学生協についてプレゼン、現地大学生と交流
  • 12/24 ニッテ・ミーナクシー工業大学訪問(意見交換、生協見学)、チャーナキヤ大学・ドングレ副学長自宅訪問
  • 12/25 マレーシア経由で日本に帰着

ICEI年次会議について(12/21)

ICEIとは

  1. ICEIは2008年にベトナムのハノイで開催されたICA-AP地域総会で設立されました。それ以前の15年間(1993年〜2008年)は、ICA-AP消費者協力委員会の小委員会として、キャンパスでの生活の質を高めるためのキャンパス協同組合を推進してきました。
  2. 2002年にICAに加盟した全国大学生活協同組合連合会(NFUCA)は、ICEIの設立に重要な役割を果たしました
    1. 現在はNFUCA専務理事(中森)がICEI副議長に就任
  3. 10カ国(中国、マレーシア、日本、ネパール、インド、イラン、パレスチナ、シンガポール、韓国、スリランカ)の19組織がメンバー
  4. ICEIの目指すこと
    1. 教育機関(大学、短大、高校)において、教職員や学生がメンバーとして参加する協同組合の発展を促進する。
    2. 協同組合の価値や自助努力、相互扶助の重要性を理解してもらい、協同組合の活動に直接参加してもらうことで、若者の協同組合への統合を促進する。

2022年活動のまとめ

  1. 当初活動方針
    1. 3-4年後のICEI戦略計画を検討する
    2. ICA-AP研究委員会との共同ウェビナーの開催
    3. ANGKASAとの共同で、話題性のある課題に関する円卓会議の開催
    4. 戦略計画に関する会員とのワークショップの開催
  2. COOP Colloquiumの開催(2022年4月)※研究委員会との共同開催
    1. 協同組合に関する社会の意識、協同組合のモデルや価値観に関する基本的な教育、協同組合の事業経営と運営に関する専門的な教育、実践的な経験について各国の状況を出し合いました。
  3. 円卓会議の開催(2022年9月)※ICA-AP生活協同組合委員会、マレーシア協同組合連合中央会(ANGKASA)との共催
    1. 18カ国から85名が参加し、協同組合原則「⑥協同組合間協同」に関する議論を行いました。
  4. 会員拡大に対する論議
    1. 未参加国からの拡大/過去に取り組みの進んでいた国からの参加促進/準会員制度の検討

2023年活動計画

  1. ICEI戦略の文書化
  2. 会則の改正:「準会員」導入の提案。→地域総会に提出する。
  3. 委員会の増加:べトナムやタイなどのICA-APメンバーと会議を行い、ICEIについて説明し、委員会に新メンバーとして招待する。
  4. フィリピンにて2023年11月に行われるICA-AP地域総会の際にICEI年次会議を開催する。
  5. 1~2回のウェビナーまたは対面式セミナー:テーマとホスト国(未定)

日本の大学生協の状況について報告をしました。

記念品をいただきました。

ICEI年次会議の集合写真です。

NCUI(インド全国協同組合連合会)の中の店舗を利用しました。その時の集合写真です。

スリラム商科大学でのセミナーについて(12/22)

スリラム商科大学で開催されたセミナーに参加しました。アジア太平洋地域における協同組合事業と若者の起業機会について考えるセミナーです。ICEI(ICAアジア太平洋地域・教育機関協同組合委員会)やNCUI(インド全国協同組合連合会)の方からのご挨拶、基調講演、日本・フィリピン・マレーシア・ネパールから各国の協同組合事業や若者の参加の成果と課題についての報告が行われました。

スリラム商科大学の詳細はこちら

日本からは、大学生協での学生委員会の取り組み(店舗での取り組みや、健康安全、友達づくりの取り組みなど)と大学生協の課題と展望について報告しました。

若者が多いにも関わらず雇用の機会が不足しているインドでは、Cooperative Businessの考え方がとても重要視されています。若者は、協力して、ニーズのあるところに事業を創り出すことを期待されています。これからのインドを支えていく学生さんたちにとって、日本の大学生協での「学生が積極的に参加している様子」はとても刺激的だったようです。

交流の時間では「学生の生活が多様化する中で、どのようにニーズを捉えるのか」「キャンパスの中に生協をつくるにはどのような手順を踏めばいいのか」などの質問が寄せられました!


今回のセミナー案内です!

お花とインド国旗の色のバッジで迎えていただいました。インドではお花をたくさんいただきました。

会場の様子①

会場の様子②
SRCC(スリラム商科大学)の学生さん約50名が参加していました。

日本の報告では、日本の大学生協が大切にしている言葉として「未来ハ我等のものな里」を紹介しました。

終了後はたくさん写真を撮りました!

チャーナキヤ大学でのプレゼンテーションについて(12/23)

インドのバンガロールにあるチャーナキヤ大学で日本の大学生協についてのプレゼンを行いました。チャーナキヤ大学は大学自体が設立して1年もたっていない新しい大学で、大学生協の設立を目指しています。学生もまだ1期生の100人ほどで少ないですが、その生徒が大学生協を主体的に作っていくメンバーとなることが期待されてこのプログラムが組まれました。

チャーナキヤ大学の詳細はこちら

プレゼンの内容としては、まず、日本の大学生協が行っている事業や活動についてやコロナ禍における日本の大学生協の状況について、そして今後の日本の大学生協が取り組んでいくことについて説明をしました。
次に日本の大学生協学生委員会の取り組みについてと今後の展望について紹介しました。健康安全の取り組みや友達づくりの取り組みなどを紹介し、日本の大学生協は学生が主体的に運営参加をしていることを伝えました。
最後にチャーナキヤ大学でも大学生協が設立を目指しているということで実際に日本の大学生協設立の事例を発表し、その中で学生がどのような役割を果たしたかということを説明しました。

発表を通して、日本とインドでは全く大学生を取り巻く環境や文化が違いますが、大学生協という協同組合は学生自身が主体的に運営参加をすることで作られるものであり、大学生協と関わることで協同組合の仕組みや大事にしている考え方を学んでいくことができるものだということを伝えられました。


午前中は新たに作っているキャンパスの見学に行かせてもらいました。

学生が集う活気のあるキャンパスになりそうです。

中森専務より日本の大学生協の概況

日本の大学生協の学生委員会の活動の紹介。タヌローを紹介しました!

大学生協の設立についての紹介。

たくさんの学生が熱心に聞いてくれました。

こちらでも「未来ハ我等のものな里」を紹介しました。

質問のある学生が残って、延長戦も行われました。

学長と写真撮影

学生とも写真をたくさん撮りました。

ニッテミーナクシー工業大学見学(12/24)

ニッテミーナクシー工業大学を見学しました。

ニッテミーナクシー工業大学の詳細はこちら

見学の前に大学の方からニッテ大の概要やニッテ大の生協についてご説明いただきました。
ニッテ大にはCredit/Stationary/Jan aushadhi(薬局関係)の3つの協同事業があります。
特に学生が関わっているのがStationary分野です。キャンパス内にお店があり、文房具や生活用品を扱っています。ニッテ大の学生さんは「コープの自分たちの声が反映されるところが好き」と報告しており、世界共通の生協の魅力を実感することができました。


最初にご報告いただきました。

ニッテ大学のキャンパス。
寮に住んでいる学生も多いそうです。
1年生の学生さんは「このキャンパスにたくさんの思い出が詰まっています!」と笑顔で話してくれました。
日本の大学のキャンパスもそのような活気溢れる場にしたいですね!

生協です!
営業時間は9-16時だそうです。

文房具や生活用品が売られています。
寮に住む学生さんは「洗剤などが売っているのでとても助かる」と言っていました。

ニッテ大学でも日本の大学生協が大切にしている言葉として「未来ハ我等のものな里」を紹介しました。

終了後はたくさん写真を撮りました!

本出張での感想

角田 咲桜
2022年度 全国学生委員長

感想と今後の抱負

「協同組合での教育が人の成長・国の発展に貢献できる!」ということを強く感じ、「大学生の約半数が加入する大学生協が、日本の協同組合を盛り上げていくのだ!」ということを決意した6日間の出張でした。貴重な場に同行させていただいたこと感謝いたします。

インドで感じた協同組合の魅力

インドでは、若者人口の多さに対する雇用機会の不足などの国の課題が背景にあり、協同組合の思考が強く求められています。また、根深く残るカースト制度が背景にあり、組合員1人1人が平等である協同組合の考え方も重要視されていると感じました。協同組合の思考と起業精神が結び付き、国からも手厚いサポートがあるというのはとても新鮮でしたが、まさに本質をついていると思いました。

日本でも頑張りたい!

第66回総会第1号議案第2章では、経済産業省が出している「未来人材ビジョン」をもとに、「2030年及び2050年には「問題発見力」、「的確な予測」、「革新性」が仕事に必要な能力として一層求められると考えられています。そのため、社会課題に向き合い探求学習を始められる環境整備や、自分の属する環境を改善し続ける力を身に着けることが大切になります。組合員の参加と協同で、組合員自身の生活向上を目指す大学生協は、大学生がこれから求められる力を学習・経験できる場としての役割を担うことができます。」とまとめました。このことを国と考え、協同組合を本気で学習・経験の場にしようとしているのが今のインドだと思います。

インドと国の現状や背景は異なりますが、日本でも協同組合で参加・参画するという経験は、その後の人生に活かされます。
日本では大学生協の存在が“当たり前”になってきていたり、昔に比べると生活が豊かになってきており、「大学生協の取り組みに参加して、運営に参画して生活が良くなった!」という実感が持ちにくくなっています。しかし、だからこそ、何事も組合員の声を出発点(ど真ん中!)に、何事も組合員とともに成し遂げることを大切に取り組み、大学生協で学生が学習・経験し成長できる場としての役割を担いたいです。
組合員が組合員とともに造ってきた歴史、学生が参加・参画できるフィールド、事業活動として取り組める環境がある日本の大学生協ならできる!と確信しています。

日本の大学生協でも「組合員のよりよい生活」を目指し、卒業後も「主体的に生きる人」を輩出しようとしています。その精神に加え、私は「大学生協が“協同組合”を学ぶ場になる。学生1人の人生を変える。」と思いながら、これからも大学生協で頑張っていきたいと思います。

林 優樹
2022年度 全国副学生委員長

感想

これからも協同組合人として頑張っていきたいと強く決意をしたインド出張となりました。このような貴重な機会に出席させていただいたことに感謝しているとともに、これからも世界の協同組合との交流を通じて日本の大学生協のアイデンティティを深めていってほしいと感じました。個人的には生協設立の話をここですることになったのは何かの縁だと感じ、これからも自分の中の軸としておきたいことだと再認識しました!

日本の大学生協の強み

日本の大学生協は60年以上も繋いできた歴史から、学生が運営に参加しやすい体制、全く規模の違う大学同士でも事業的にもそこから作られる活動的にも連帯ができる仕組みが整っているということが世界に誇れるアイデンティティであることが分かりました。これからも組合員の積極的な運営参加について、連帯で学びあい励ましあいながら深めていければと思いました。
また、インドは大学に進学する人が割合としては少ない、学生はほとんど実家暮らしである、アルバイトをしていないなど、学生の状況も全く日本と違いました。日本の大学生協は、大学や地域に深く根ざしながら、学生の生活をサポートしていくことができる組織だと思いましたし、そこを改めて追及していけるといいなと感じました。

協同組合について

これまで私は株式会社の仕組みと協同組合の仕組みを対比して考え、協同組合は何かをみんなの力で成し遂げることを目的とした組織という風な理解をしていました。ですが、インドではそうではなく、協同組合の原則、仕組み、そして大切にしている考え方を持ってビジネスチャンスを作っていく、起業に繋げていくという発想であることに驚いたとともに、改めて協同組合の重要性を考えさせられる機会になりました。
大学生協は社会に出る一歩手前の教育機関として、そして大学生活をフィールドとして自分たちで声をあげ、作り、育て、運営をしていくという成功体験のできる小さな社会である協同組合の1つとして、協同組合の成り立ちや原則、仕組みから考えられる協同することの大切さを組合員である学生と考えていきたいと感じました!

中森 一朗
全国大学生協連 専務理事

インドという国の印象

  • インドは初めての訪問でしたが、一言で言えば「勢いのある国」という印象でした。人口は約14億、2023年にも中国を抜いて世界一になると予想されています。拡大する人口に対して、「協同組合」という手法を用いて国民の生産力を向上させるという考え方の下、教育機関における若者への協同組合教育・実践が奨励されている雰囲気を感じました(なので、インドにおける協同組合教育のキーワードは「起業家精神」なのです)。
  • 現地の大学生と話しても、「IT技術を学び、将来はIT系の起業に就職したい」というように自身のビジョンを目を輝かせてコメントする学生が多くいたことが印象的でした。

インドの大学生から見た日本

  • SRCC、チャーナキヤ大学、ニッテ大学の3カ所で現地の大学生と交流する機会がありましたが、角田さん・林さんのプレゼンが終わると、学生がどっと駆け寄って声をかけてきます。(拙い?)英語でのコミュニケーションがひとしきり終わると、めいめいのスマホで記念写真をパチリ!その後SNSのアカウントを交換して・・・と、日本とまったく変わらないやりとりが繰り広げられます。「大学生」というのは万国共通なのだな、と感じた瞬間でした。
  • しかし驚いたことに、中には「ありがとうございました」と流ちょうな日本語で話しかけてくる学生もちらほらいるのです!「日本語うまいね!どこで勉強したの?」と聞くと、「日本のアニメを見ています!」とのこと。アニメはほとんど見ないので、タイトルを言われても???だったのですが、すごいぜ日本のアニメ!と改めて見直しました。日本の誇れる文化です!

人間を大切にする仕事

  • 前述の通り、インドにおける協同組合教育のキーワードは「起業家精神」です。日本はそれほどでもありませんが、インドだけでなくマレーシア等でも協同組合に関する教育は政府の後押しもあり積極的に進められています。
  • 「協同組合は、自助、自己責任、民主主義、平等、公正、そして連帯の価値を基礎とする。それぞれの創設者の伝統を受け継ぎ、協同組合の組合員は、正直、公開、社会的責任、そして他人への配慮という倫理的価値を信条とする。」(協同組合のアイデンティティに関するICA声明(日本生協連訳)より)→「協同組合」を題材として、インドを始めとするアジアの国々で高校生や大学生がこのことを学んでいるってスゴイと思いませんか?そして今回の角田さん・林さんのプレゼンで、日本の大学生協が大切にしている「組合員の参加」が高く受け止められたのはうれしい限りです!
  • 今回交流した若者たちが、「人間を大切にした仕事」がもっともっと広がることを考えると、なんだかうれしくなっちゃうような気がした今回の出張でした!

※おまけ:今回の出張でも日本からのお土産をたくさん持参したのですが、とりわけ大学生にヒットしたのが「タヌローワッペン」でした!もしみなさんがこれからインドに行かれて「タヌローワッペン」を見かけたら、それは私たちが持参したものだと思いますよ!

English