全国大学生協連の研究会報告

大学と生協の連携で
「学生の元気」「大学の魅力」をつくる

大学への生協の連携や協力の現況

全国大学生協連で実施されてきた経営概況調査における「補完アンケート」は 2010年より各大学生協で取り組まれている活動と事業内容の実施状況を付加しました。 今回は、 11 年度の「補完アンケート」(昨年実施)結果より 大学と生協の連携や生協の大学への協力の、到達点や状況を報告します。

大学生協の調査活動と 11 年度「補完アンケート」

梅光学院大学生協 新入生歓迎会のとりくみ
梅光学院大学生協 新入生歓迎会のとりくみ

三重大学生協 オープンキャンパスのとりくみ
三重大学生協 オープンキャンパスのとりくみ

全国大学生協連では、学生の生活などを知るための調査として、「学生生活実態調査」「新入生調査」「院生生活実態調査」を行っています。そして、それらの調査に加えて、全国の大学生協がどういう状況に置かれ、どのような状態なのかを把握するための調査も行っています。

「経営概況調査」もその一つで、毎年、年度が終了(2月)した後の4月に、各大学生協の供給高(売上高)や剰余などの経営結果に関わる数値を集約しています。

そして、その経営結果に影響を与えた事項や要因を調べるとともに、各大学生協の事業や活動の特徴を浮き彫りにするために「補完アンケート」を実施しています。

11年度の補完アンケートは、209の大学生協より協力を得ることができました(未回収は4生協)。

学生支援や生活サポートでの協力

大学生協の11年度決算において、増減を問わず供給高が前年より変化した生協は94・1%を占めていますが、その要因として「学事日程の変更による営業日数の増加又は減少」をあげている生協が26・7%、同じく「大学人口の増加又は減少」は25・7%と、各々およそ50生協がそれらの影響を受けています。また「競合店の進出または撤退」は8・6%(16生協)となっています。(表1参照)

「学事日程の変更」は東日本大震災の影響が大きかったとはいえ、「大学人口の増減」「競合店の進出や撤退」は、大学の方針や意向が反映されており、それに因って供給高が左報告右される現状があり、大学生協の経営に大学の方針が影響を与えています。 

従って、大学の方針や動向を早く正確に把握することが、大学生協の経営にとって必要であり、そのためにも日頃の大学との連携や協力がさまざまな面で進められることが求められています。

では、「大学への協力や連携において何がどのくらいされているのか?」、最初に「学生支援」の側面から見てみます。 保護者の所得が減り学生への仕送りが押さえられ、経済的に厳しい生活を送る学生が目立つ中で、大学生協にも学生への経済支援で大学への貢献が求められています。 大学が行う奨学金や他の学生支援に、経済的に協力している大学生協は29生協となっています。数年前ではその数は少なく、10年度(一昨年に調査実施)では23生協でしたのでこの1年だけでも6生協増え、着実に増加していることが伺えます。 

その内容は、奨学金への協力は7生協ですが、大学基金への協力が13生協あり、その基金の多くは奨学金として活用されていると思われますので、合わせると20生協となります。そのほかでは、「学生支援全般」(5生協)「学生の教育支援」(5生協)「留学生支援」(4生協)への協力となっています。生協によっては複数の支援を行っています。 

なお、東日本大震災支援の募金を大学とともに取り組んだ生協が9生協ありました。 

一方、「学生生活へのサポート」面ではどうでしょうか? 

今回の調査では、「アパート紹介」をしていると答えた生協は、168となっています。他の問いで、「大学からの依頼としてアパート相談・紹介」をしている生協は86生協となっており、この事業での大学への貢献度が高いことが分かります。 

また、大学からの依頼を受けて「アルバイト紹介」を行っている生協は38生協となっており、「アパート紹介」とともに目立っています。

【表1】 2011年度の供給伸長または後退の主な要因(複数選択)
要 因 生協数
組合員一人当たりの利用高の増加または減少 72 38.5
学事日程の変更による営業日数の増加または減少 50 26.7
大学人口の増加または減少 48 25.7
商品対策の強化または後退 29 15.5
生協事業の日程変更による営業日数の増加または減少 18 9.6
競合店の進出または撤退 16 8.6
営業時間の延長または短縮 15 8.0
宣伝プロモーションの強化または撤退 11 5.9
事業の廃止・店舗の閉鎖 8 4.3
新業態の実施 2 1.1
新規事業の開始・新店舗の開店 0 0.0
その他 76 40.6

新入生を迎えるに当たっての協力

【グラフ1】 新入生歓迎会の実施と その体制
【グラフ1】 新入生歓迎会の実施と その体制


【グラフ2】 新入生歓迎会の実施と その体制
【グラフ2】 新入生歓迎会の実施と その体制

以上の学生支援や生活のサポートといった経済面や大学生協の事業面以外での連携や協力はどういった状況でしょうか? 

まず、「新入生を迎える活動」面から見てみます。新入生との最初の出会いとなる「オープンキャンパス」で、「協力している」と答えた生協は、実に97・5%にのぼっています。一昨年が94・1%でしたので、ほぼ全生協で行っていると言っても過言ではない状況になってきています。そのオープンキャンパスに関して、正式に大学から協力の要請があった生協は、こちらも91・2%と9割を超えており、大学からの期待も高く、生協の役割が発揮されています。 

「新入生歓迎会」ではどうでしょうか?「新入生歓迎会を実施している」生協は84・9%(174生協)です。その内、大学と協力していると回答した生協は6生協ですが、「大学と学生団体と協力している」という、いわば「全学型」に参加してい【グラフ1】新入生歓迎会の実施とその体制る生協は22生協となっています。従って、何らかの形態で大学と協力している生協は合わせて28生協で、新入生歓迎会を実施している生協の内12・6%です。入学式前後は大学も新入生もデリケートになる時期であり、正式に大学からの協力が呼びかけられることは、大学と生協の信頼関係の一つの証とも思われます。 

新入生が無事大学生活をスタートするために、「友だちづくり」が最初のハードルになっており、そのための大切な場である新入生歓迎会を、大学と生協が協力して行うことは大きな成果をあげます。(グラフ1参照)

ちなみに、今回のアンケートでは大学との協力の有無は聞いていないものの、ここ数年注目されている「自宅生説明会」と「保護者説明会」の実施の有無も調査しました。「自宅生説明会」の実施は46生協でなお4分の1に留まっています。しかし、「保護者説明会」は100生協を超え、104生協と過半数となりました。一昨年の実施率が35・3%、昨年が42・2%でしたので、急激に増加しています。「保護者説明会」における大学との協力も、新入生の大学生活のスタートに当たって、大切になってきます。(グラフ2参照)

公務員講座は大学との協力が進む

次に、「キャリア形成・就職支援」での大学への協力を、「コンピュータ講座」「公務員講座」「教員養成講座」「就職フォーラム」の実施体制から見ます。(表2参照) 四つの講座などのそれぞれの実施率は、「コンピュータ講座」49・5%、「公務員講座」38・3%、「教員養成講座」16・8%、「就職フォーラム」38・1%となっています。 そして、実施している生協の内、体制として「大学の主催に生協が協力」や「大学との共催」で実施した生協は、「コンピュータ講座」12・1%、「公務員講座」73・3%、「教員養成講座」78・1%、「就職フォーラム」45・3%となっています。

「コンピュータ講座」の実施率は高いですが大学との協力度は低く、「公務員講座」の実施率は約4割で協力度が7割を超えています。「教員養成講座」は協力度が8割近くですが実施する生協は限られており、「就職フォーラム」は実施率も協力度もまずまず、と各講座の特徴が表れています。中でも4割の実施率があり、7割が大学と協力して実施されている「公務員講座」は、有用であると認知されているようです。

「キャリア形成・就職支援」は直接学生の成長や進路に影響を与えるものであり、実施する生協が増えることが期待されると同時に、大学との協力体制を築いていく努力も求められています。 なお、「キャリア形成・就職支援」に直結するものではありませんが、独自で読書マラソンの「コメント大賞」を実施している生協が35生協あり、そのうち22生協が大学の協力を得て行っていることを付記しておきます。

コンピュータ講座 公務員講座 教員養成講座 就職フォーラム
生協数 生協数 生協数 生協数
回答数 200 100.0 196 100.0 191 100.0 139 100.0
大学の主催に生協が協力 9 4.5 22 11.2 10 5.2 15 0.8
大学と共催 3 1.5 33 16.8 15 7.9 9 6.5
生協の主催 87 43.5 20 10.2 7 3.7 29 20.9
実施していない 101 50.5 121 61.7 159 83.2 86 61.9

大学生協の協力と大学の支援

以上が、「補完アンケート」より伺える大学への生協の協力の現況です。大学の改革が迫られ、大学がさまざまな施策を講じている中にあって、生協には大学のビジョンを共有し大学への協力を拡充していくことが求められています。 今回の調査結果では、新入生を迎える活動で大学からの生協への信頼が厚いことが伺えました。

学生が参加し、学生と学生生活を知り、キャンパスライフに必要な事業を展開している強みを生かし、生協が、学生に必要なサポートや支援を提供できるよう、一層大学との連携、大学への協力が必至となっています。

そして、一方では大学における生協の役割を理解していただき、その役割が発揮できるよう大学からの配慮や支援も必要となっています。大学の施策の中に生協を位置づける事によって、大学生協はより大学と学生に貢献することができます。

(編集部)

『Campus Life vol.36』(2013年9月号)より転載

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