全国大学生協連の研究会報告

現代学生の食事模様 
~学生は具体的に何をどのように食べているのか

11月5日、全国大学生協連が後援し報道関係者が参加する第26回「学生の意識と行動に関する研究会」が 「現代学生の食事模様 ~学生は具体的に何をどのように食べているのか」をテーマに 専修大学神田キャンパスで開催されました。この研究会の概要をお伝えいたします。

「食」は〝生きる力〟とも言われ、食育についてもさまざまな場所で語られて、その重要性は論を俟たない状況です。しかし、実際の学生の姿を踏まえていないと、その議論も有効性のあるものになりません。

今回は、大学生の食生活の実態を調査された先生方より、それぞれの視点で出された分析結果のご報告を頂きました。学生のリアルな食生活をとらえることで一つの現代の学生像に迫り、関係者の方々への提言とさせていただきます。

就活、アルバイト、履修システム…  食生活に影響を及ぼす 大学生のライフスタイル
―写真分析による食のシーン調査から―

専修大学経営学部准教授 佐藤康一郎氏

専修大学経営学部准教授 佐藤康一郎氏

学生の食生活というのは本当に安心できるものなのでしょうか。

2007年の調査で得た1枚の写真、それは学生が自分の昼食を携帯カメラに収めたものでしたが、カップ麺、おにぎり、飲料という組み合わせを地面に直に置いて撮影されていました。学食に席を確保できなかったであろう学生が、コンビニなどで買った食品を学内のどこかで食べている。それを見て、学生の食生活の実態を今一度本腰を入れて調査してみようと思ったのが2009年の調査につながりました。

2009年調査の概要

本調査は、本学学生をサンプルとし、写真分析により食生活の実態・現状を調査することで、若者の食品の消費動向を把握し、食生活に対する意識調査を行うことを目的に行いました。調査対象を大学生にしたのは、大学生の食生活が入学後に大きく変化するからです。自宅外生は、親元を離れると自分で食生活を管理することになります。また、最近では家計の事情もあり、通学に時間をかけても自宅通学をする学生は、外食や欠食が増えて生活も不規則になりがちになります。  調査は、2009年7月10~16日の間、1~4年の各年次の学生20名(男女自宅生10名、男女自宅学生10名)に、期間内に口にしたものをすべてデジカメに撮り、いつ、誰とどこで、何を、どんな状況でということも補足的に記録してもらいました。

画像分析結果

集まった一千枚を超える画像より、学生の食生活と食に対する意識をマーケティングの視点から検討し、分析していく中で、特徴的な食品の消費動向や、食べ物や飲み物の組み合わせ、食事の状況なども明らかにしていきました。

調査結果①朝食の欠食率の高さ

学生のほとんどが朝食をとっておらず、毎日食べている者はごくわずかしかいないという状況でした。食事内容も、コンビニのおにぎりやシリアルバー、ヨーグルトだけという簡素なものがありました。

調査結果②食生活の二極化

規則正しい食生活をしている学生は非常に少なく、大半の学生は食事時間やその内容に無頓着で、この差が非常に顕著に現れていました。

また、家族との生活時間の違いもあり、自宅生でも一家団欒の時間が少なくなっているということが分かりました。品数が少ない家庭が多かったのも目立ちました。

調査結果③食品の組み合わせ

ご飯とパン、ご飯と清涼飲料水という組み合わせが多く見られましたが、学生たちは特にこのことを意識していませんでした。

調査結果④食生活に対する意識

一人暮らしの学生の場合は外食産業でアルバイトすることが多いのですが、その際は賄い付きの飲食店を選んで夕食を作る手間を省いているようです。

学生へのヒアリング

調査後、学生に個別に面談を行った中で、高校時代はきちんと食べていたのが、大学生になり、学年が上がるにつれて不規則になったという意見がありました。1、2年生のときに単位を落とさないように頑張った学生ほど3、4年生で取る授業が減り、結果、皮肉にも生活が崩れるという事例が出てきました。特に4年生になると大学に来るのが週1回ほどになり、生活のリズムが狂いがちになるようです。

また、夜遅く帰宅したり深夜のアルバイトをしたりして生活が夜型になり、食事も不規則になるという例も、特に自宅外生にありました。

就活が始まると、朝食抜きで出かけたり、ストレスで飲酒の機会が増えたりします。就職先が決まれば、特に4年生後期は講義も少なく、不規則な生活が極まっていきます。

実際に規則正しい生活に戻るのは就職後ですが、そのころにバランスのとれた食生活が送られているかどうかは、残念ながら大学側では分かりません。結婚していいパートナーに巡りあえれば解消の方向に向かうかもしれませんが、晩婚化が進んでいるので、結局大学入学後十何年かはこのような不規則な食生活が続いていくだろうと思われます。

以上より、大学生の食生活の問題点は家庭生活だけに起因されるのではなく、彼等のライフスタイル全体が関わっていることが分かります。

特徴的な食生活の事例 : Aさん(4年・女子・自宅外生)

Aさんは真面目に3年生まできて就活をしましたがなかなか就職先が決まらず、週1回のゼミを生活の中心に据えていました。地方出身で、中学から進学校の寮に入れられており、厳しかった生活の反動が一人暮らしになってから出ているようで、このような炭水化物やお菓子の多い食生活は大学入学前から続いていました。

ホスピタリティを学ぶ学生が自己評価 食生活に対する問題意識は 改善につながるか
―5日間のアンケート調査から―

東洋大学国際地域学部国際観光学科教授 小池鉄夫氏

アンケート調査の概要

 過去に何度か実施している食に関するアンケートは、時期は一定しておりませんが、私の所属する国際観光学科の学生を対象に行っています。

今回は、私のゼミを含めて2~4年生75名(男子18名、女子57名)の、調理実習をしている学生を対象に、調査期間は2013年10月9日~10月25日の中の5日間ということで、特に日にちの指定はしませんでした。設問は、朝昼晩の食事の時間、場所、金額、購入した場所、具体的な食事の内容を聞いています。

調査結果より

1 食事をとった回数

75人のうち、5日間すべて朝食をとった者は33人です。5日間すべて朝食をとらなかった者は7人で、そのうち6人が男子です。5日間のうち1日しか朝食をとらなかった者が7人、2日間が6人、3日間が14人、4日間が8人で、今回は比較的朝食をとった者が多い気がします。5日間すべて夕食を食べた者は61人、同じくすべて昼食を食べた者は54人で、昼食や夕食は比較的とっていることが見えてきます。

2 食事の内容

朝食は主食として、パン類118人、ご飯類81人、麺類13人。副食は、飲み物145人、副菜111人。昼食は、主食はご飯類149人、麺類95人、パン類87人。副食は、副菜159人、飲み物99人。夕食の主食はご飯類208人、麺類54人、パン類31人。副食は、副菜249人、飲み物89人です(すべて延べ人数)。

ご飯類は、だいたいおにぎりや、弁当、炒飯などです。パン類は、トーストなどです。麺類は、カップ麺だけというのもありますし、あとはラーメンやうどん・そば、パスタ類。自分で簡単に作れるという意識があるのでこういう数字が出るのかと思います。

3 食事をした場所

朝食はほぼ全員が自宅で食べています。昼食は多い順に、自宅143人、学校内83人、外食59人、学食39人、アルバイト先37人となります。夕食は自宅210人、外食130人、バイト先40人で、学校内と学食は0です。自炊も含めて多くの者が夕飯も自宅で食べていますが、中にはほとんどが外食という者もおりました(すべて延べ人数)。

4 金額

朝食はほとんどが自宅でとっているので0円です。昼食は、2年くらい前の調査では、100~200円台もありましたが、今回の調査では200円未満は23人。200円台は42人、300円台は23人、400円台47人で、500円以上が最も多く97人です。自宅外生の場合には、スーパーなどで買い物をして、何回かに分けて食べている者がおりますので、1回分で500円というのではないかもしれませんが、メニューなどで察しがつきます。

夕食は、もっとも多いのは500円未満で56人。3000円以上が12人いますが、具体的な店名を見ると、飲み会です。スーパーなどの店名を書いている者も結構いますので、1回の買い物で3000円以上を買って何日かに分けて使う場合もあると思います(すべて延べ人数)。

5 購入した場所

昼食の購入先はコンビニ利用が一番多く、次が大学生協、スーパー、バイト先の順です。夕食は多い順にスーパー、コンビニ、バイト先、大学生協です。調査対象に女子学生が多いので、夜はスーパーで何か買って調理をして食べる、というようなことも察せられます。

自己評価を 食生活の向上へ

最後に、自分の食生活を5日間記録したものを顧みて自己評価をさせます。ホスピタリティを学び、人様に食事を出そうというのなら、やはりメニュー構成など改善点を考えなくてはいけないという観点から、そういうコメントをさせました。

全体像として、自宅通学生はしっかり3食食べて品数も多く、比較的バランスが良い食生活をしている傾向があります。自宅外生も、野菜類が少ないなどとコメントに書いており、気を使っているようです。

学生の方たちからの報告
「食」の重要性は認識しているが 食事よりも服や趣味にお金を使いたい

 研究会には、早稲田大学、慶應義塾大学の学生、全国大学生協連学生委員の計5人が参加しました。

食生活が乱れる さまざまな要因

 「ダイエットをしたり、インスタント食品が多かったりという食生活を送る学生が多いが、将来の自分の健康や生活習慣病に関心はあるか」という参加者からの質問には、「たまに140㎉のダイエット食品だけを昼食にすることはあるが、自宅生で3度きちんと食べているので、健康面は大丈夫だと思う」(慶應義塾大学2年・鈴木美幸さん)という意見がありました。

 横井竜太さん(早稲田大学3年・自宅外生)は、「起床時間が毎日11時ぐらいなので、12時の朝食イコール昼食になり、朝食をまったく食べていない。現在就活中で外食が多く、夜は酒の席も増えるので生活が乱れている」と言います。横井さんは2年生のときに、暴飲暴食がたたり胃潰瘍になってしまいました。それで健康に気遣い野菜を食べるように心がけ、1日1本、野菜ジュースを飲んで体調を管理する努力をしています。また、朝から説明会に出席する場合もあるので、規則正しい生活に戻すよう努めています。

 「在学中は自宅から2時間半かけて大学に通い、2年間下宿生活も経験した」と話すのは吉岡充代子さん(全国大学生協連学生委員・龍谷大学卒)。自宅通学は時間がかかるので朝は食べずに家を出て、購買で朝食を買い、教室で食べていました。「下宿時代は、家で炊いたご飯だけを大学に持参し、できるだけ食費を抑える努力をしていた。今、常勤で学生委員を務めているので食費に充てる余裕ができ、一品惣菜を買って付け加えられるようになった。どれだけ食費を使えるかという環境によっても意識は変わると思う」

現代学生は 食に関心が低い?

 山﨑弘純さん(同・龍谷大学卒)は、知り合いの下宿生の「着る服がなくなるから洗濯は毎日するけれど、別にご飯を毎日食べなくても生きていける」という発言に衝撃を受けました。「学生は忙しいから食事を重要視していないのか」と感じ、最近は自炊するよりも「1日分の野菜」などの手軽な商品を求める学生が増えていると述べました。

 吉岡さんも、「最近の学生は、食べることよりも服や趣味などにお金をかけたいと思っている。アイドルの追っかけをして、グッズを買うために食費を削る人もいると聞くので、お金をかける価値観が昔と違う」と感じています。「普段の食事にはお金をかけないが、友達と話題のカフェに行くときは千円以上を支払うのに躊躇しない」(鈴木さん)という声もありました。

 佐藤先生はこれらの発言を受けて、「私の学生時代はバブルの頃で、定食屋でご飯のお替り自由のサービスが大変ありがたく、食べることは結構プライオリティが高かったが、だんだん『食』が絶対ではなくなり、食べること自体にさほど関心が高まらず、付き合いの飲み会には行くが食費は削りたいという学生が増えたと思う」と述べました。

自分の食生活を確立する

 自炊の有無の問いには、「料理をしたら家族に『まずい』と言われ、簡単なものしか作らなくなった」(鈴木さん)、「一人暮らしだと台所が狭く、まな板を置く場所がないし、シンクも小さい。調理器具が少なく、包丁が家にない人もいると思う」(吉岡さん)という意見がある一方で、「今、一人暮らしをしており、週2回ほど自炊している。煮物も作るし、スチーム調理で豚モヤシなどの簡単な料理を作り、それに一品を買って添えるということもしている。料理は結構楽しいし、1回で2、3日分作れるので、節約のためなら自炊は有効だと思う」(全国大学生協連学生委員・法政大学卒・立﨑聖也さん)という意見もありました。

 小池先生は、「私の授業では、おもてなしの表現として調理実習を組み入れている。出来合いや化学調味料などは極力使わず、素材のまま、鶏も1羽首を落として使わせる。外食でも家庭でも、ほとんど出来合いのものを並べてチンして、『はい手作り』と出すような風潮になりつつある今、本来の手作りを教えたいですね」と語りました。

(編集部)

「Campus Life 37」より転載