集合写真
総合討論のようす
去る2024年10月17日、神戸国際会議場において第62回全国大学保健管理研究集会の「学生シンポジウム」(テーマ:学生参加で実現するヘルシーキャンパス※)が開催されました。
現役学生だけが登壇する同シンポジウムは、全国大学保健管理協会(JUHA)のヘルシーキャンパス運営委員会(石見拓委員長)で企画されました。同シンポジウムでは、発表した6組のすべてが、現役学生ならではの視点で、自分たちの言葉を綴った画期的な内容でした。
全国大学生協連では、学生シンポジウムを徹底取材し、アカデミックな舞台での現役学生の活き活き・ワクワクした様子をお届けします。とても明るい未来を垣間見ていただけると確信できます。ぜひ、ご一読ください。
学生団体Vcanの取り組み ~当事者目線で伝えるHPVワクチン啓発~
立命館生協(学生委員会)の大学保健センターと連携・協力した「食」の取り組み
大学生発 ヘルスケアのイノベーション/WAKAZOの取り組み
石見 拓 先生
「ヘルシーキャンパス」は、「大学発で健康づくりの新しい文化を醸成していき、地域や学内に広げていく取り組みといえます。その強みのひとつは、大学の中には学生がいることだと思っています。しかし、これまでの全国大学保健管理研究集会では学生を主体として全面に出したシンポジウムは開催されていませんでした。そこで今回、健康づくりの取り組みを実践している学生がどんなことを考えてどんな活動をしているのかについて報告を聴かせていただき、学生と協力しながらヘルシーキャンパス・健康づくりの文化を発信していきたい、その取り組みのキッカケの一つとしていきたい、という想いに至りました。
藤本 美香 先生
今回の学生セッションでは、学生6団体から若いパワーみなぎる素晴らしい発表をいただきました。
企業、研究者、医療者だけでなく、大学生が積極的に参加している学会もあります。大学生の新鮮な視点から「健康」に向けて取り組むことは、大学保健に新しい波を作ってくれるように思います。参加していただいた大学生の方々には、このような活動経験や知識が将来社会人になって役立つことを願っています。また、いろいろな大学で大学生による健康活動が生まれ継続していると思われますので、今後もぜひ全国の大学生が発表し交流できる機会が続くことを祈っています。
Vcanからは、学生団体Vcanの取り組み〜当事者目線で伝えるHPVワクチン啓発〜と題し、大学と連携した取り組みについてお話しました。
Vcanは全国の中高生を対象に出張授業を展開しておりますが、時に大学生や専門学生に対しても出張授業を行っております。また、教育機関や医療機関に対して動画やリーフレットの提供も行っております。そのほか、メンバーの所属する大学に集団接種・接種外来の設置をお願いしています。
こういった取り組みをご紹介するとともに、大学の取り組みによって、学生たちからの意見が確かに変わってきているという手応えをお伝えしました。
この度の学生シンポジウム登壇の機会をいただき、誠にありがとうございました。本シンポジウムを通じて私たちの思いを皆様に届けることができ、私自身も先生方や登壇者の皆様と意見を交わす中で、新たなアイデアや刺激を得ることができました。
様々なバックグラウンドを持つ学生が刺激し合い、協力し合い、大学保健の皆様のご協力をいただくことで、相乗効果となって大きな波が生まれることを確信しております。
最後になりますが、登壇の機会を下さった石見先生、藤本先生、本研究集会関係者の皆様、一緒に登壇してくださった学生の皆様、スライドを確認いただいた長崎大学保健管理センターの中道先生に深く感謝申し上げます。
ヘルシーキャンパスが、大学の価値・評価を高める。
~立命館大学におけるヘルシーキャンパス活動の取り組み~
立命館大学&立命館生協の「Healthy Campus(ヘルシーキャンパス)」の取り組み
生協学生委員会(通称GI)は、それぞれの大学生協の理事会の下に設置される組織委員会です。大学生協の組合員の一人として学生が集まり、大学生活に関する自らの悩みや不安を解消し、魅力ある大学生活を実現するために「たすけあい」、「学びあい」、「コミュニティづくり」の取り組みを実践しています。
立命館大学のGIには、「共済局」という部門があり、学生向けの保険である「学生総合共済」の加入推進活動と、学生の健康を支える活動や安全意識を高める活動を主に行っています。
まずは、シンポジウム参加という貴重な機会をいただいたことに対して、関係者の皆様には深く感謝申し上げます。私たちの活動に関して、皆様からアドバイスやお褒めの言葉をいただけたことが嬉しかったです。またそれによって、私たちの活動は、学生を中心に良い影響を与え、今後も行っていく価値のある活動なのではないかと誇りに感じました。
他学生団体の皆様の発表に関しては、その活動規模の大きさに非常に驚きました。加えて、確固たる活動の目標があり、継続的かつ計画的に活動されている姿勢に、多くの刺激を受けました。
今後の活動においては、学生のニーズ・動向の分析や、私たちの現状の活動の見直しをさらに行っていきたいと考えています。学生を主なターゲットとしている私たちにとって、学生の潜在的なニーズや課題を発見することは最も重要です。具体的には、企画実施時のアンケートの分析や、学生である私たちでのディスカッションを通して、ニーズや課題を発見します。そして、それらの解決につながる活動や企画実施に、日々挑戦していきます。
最終的には、大学だけでなく、他団体、民間企業、自治体などとの協力も進めていきたいと考えています。
単純に、私たちの活動にも取り入れたい!と思うだけでなく、私たちの他にも、こんなに頑張っている人たちがいるんだという励みにもなりました。
WAKAZOは、医療系の学生を中心とした団体で、いのちを守り合う未来社会の実現を目指しています。「ペイフォワード(恩送り)」の精神を基盤とし、社会の中で互いに助け合う循環型モデルを提案しています。大阪万博では、個人のヘルスケアデータを寄付する「Life Data Donation」や、人生最後に残したい言葉を集める「LASTWORDS」などのプロジェクトを通じて、いのちの価値を再発見し、共助の精神を広める活動を展示します。
我々WAKAZOは大阪・関西万博を目指して全国の大学生が活動しており、ヘルスケアデータについて扱ってはいますが、なかなか大学での保健に関わることはしていません。そのため、今回登壇のお話をいただいた際に場違いじゃないかな?と少し不安に感じました。しかし、大学生の中にはこのような活動をしている学生もいるのであると知っていただくいい機会ですし、ヘルシーキャンパスの一端を担えたらと思い参加させていただきました。HPVワクチンの接種向上や、学食でのバランスの良い食事など、大学生に直接的な健康のメリットを与えることはできない活動ですが、我々のプロジェクトの1つにLASTWORDSという人生最後に残したい言葉を集めるプロジェクトがあります。これは真剣に自分のいのちに向き合い、自身の死生観をアップデートして他者のいのちにも気づくきっかけにもなります。我々は独自にワークショップを開催してLASTWORDSを集めていますが、大学の保健管理室と協力して死について考えるワークショップができれば、我々としてはLASTWORDSの幅が広がり、大学としても学生の悩みの解決や社会貢献に繋がらせることもできるかと思うので、両者にメリットがあるのではと思いました。
今回、学会形式の登壇は初めてでかなり緊張しましたが、とても有意義な時間を過ごせました。この場で改めてお礼を申し上げます。ありがとうございました。
京大銭湯サークルは約140名ほどのメンバーからなり、銭湯の清掃活動や種々のイベントのお手伝いをしています。また、SNSで私たちの活動や各地の銭湯の情報を発信したり、メディアに出演したりして、若年層を対象に銭湯に興味を持ってもらえるような情報発信をしています。このような活動を通して各大学に銭湯サークルが作られ、銭湯がより身近な存在になることで、銭湯を地域コミュニティの場として復活させ、銭湯文化を将来に残していくことを目標としています。
竹林 昴大
この度の学生シンポジウムに登壇させて頂いたこと、非常に光栄に存じます。今回、銭湯が人々の健康増進にどう役立てるのかという可能性について話をさせて頂いたことで、質疑応答でもご指摘頂いた通り、その主張を支える科学的根拠が足りていないという当サークルが取り組んでいくべき課題を明確に認識することができました。今後は是非とも石見先生をはじめとする京大医学部の皆様のお力をお借りしつつ、客観性のあるデータを収集し、銭湯が予防医療において有用な存在たりうることを証明していきたいと思います。そして願わくばまた皆様の前で、今度はエビデンスベースで健康増進における銭湯の有用性を訴えさせて頂きたいと思います。
丸山 和栞
各団体の活動に熱心に取り組む学生との交流の場となり、よい刺激をもらうことができました。京大銭湯サークルは発足して間もなく、まだ他団体や諸先生とのつながりは希薄です。今回のシンポジウムでは、活動するうえでどのように外部と連携しているのかを学ぶことができ、今後銭湯の良さを広め銭湯文化を残す活動を行う上で必要な協力関係の在り方のヒントをもらうことができました。このヒントをもとに、さらなる活動の拡大と銭湯文化の継承を目指します。
団体名:近畿大学生物理工学部(和歌山キャンパス)学生消防団
(正式名称:紀の川市消防団本部近畿大学部)
大学生らによる近畿大学消防団が誕生|近畿大学 生物理工学部・大学院 生物理工学研究科
近畿大学生物理工学部(和歌山キャンパス)学生消防団は、平成31年に大学生が地域防災に貢献する目的で、正義感・向上心・結束力という思いを軸として結成されました。正式名称は紀の川市消防団本部近畿大学部です。
現在は、紀の川市消防団指導のもと学生19名で活動中です。
この度「学生シンポジウム」へ参加するという貴重な機会をいただき、大変感謝しております。発表を通じて、私達学生消防団の活動を皆さんに伝えることができました。演者4名各自が大学の授業や試験・研究・実習などに追われる中での発表準備は苦労の連続でしたが、発表後に周囲の方から「学生消防団に感動した」などのお声掛けをいただき、とても嬉しく思いました。
当初は数名の学生で結成された学生消防団は、私達の思いに賛同してくださる多くの連携機関や近畿大学和歌山キャンパスの教職員に支えられ、放水訓練をはじめとした日常訓練、AEDによる救急救命講習を実施し地域防災に留まらず保健医療にも深く関わるようになりました。さらに、地域や就職活動の場でも認められ、現在では学生・企業・地域・大学の4者にメリットをもたらす活動となっています。全国的に消防団員の数が減少傾向となる中、私達の発表を通して学生消防団活動が全国的に広まるきっかけとなること、学生が主体となって地域防災の要となる組織が今後増えていくことを期待しております。私達は卒業後も学生消防団で培われた経験と知識を最大限に発揮し共助の担い手になれればと思っています。
大学生のセルフ・ヘルス・アッププロジェクト|近畿大学アカデミックシアター
近畿大学アカデミックシアタープロジェクトの「大学生のセルフ・ヘルス・アッププロジェクト」は、大学生が日頃感じている健康・医療に関する疑問・課題を取り上げ、解決に導けるように日々活動しています。具体的な活動として、学生と教職員がイベントを企画・運営し、講師、協力企業の方々と協働し、大学生が直接専門医や専門家に相談できる機会を提供してきました。また、社会に向けても発信を行い、ヘルスリテラシーの向上と、近畿大学から「健康づくり」の輪が広がっていくことを目指しています。
右のQRコード以下は本団体の公式インスタグラムになります。ぜひフォローしてください。
新谷 博正
(近畿大学理工学部社会環境工学科)
今回の学生シンポジウムに登壇できたことは、自分の中では貴重な経験になったと思います。自身の活動を発表しているときは、自分が間違ったことを話していないかといった不安や緊張などでいっぱいでした。しかし、実際に閉会シンポジウムが終了したとき、自分の中に大きな達成感がありました。また、この学生シンポジウムに参加して、他の方々のプロジェクト内容や質疑応答等を聞くことができたことで、さまざまな健康・医療に対するアプローチの方法を知ることができました。その中で自身の活動にも活かせられる考え方などもあり、とても良い学びを得ることのできた機会だったと感じました。他にも、他のプロジェクトの強みだけでなく、自身の所属するプロジェクトの強みを再認識することができました。
ここで得られた学び等は、プロジェクトの今後の活動方針やイベント運営等に役立てたいと考えています。また、これらの学びをプロジェクトの活動にただ付け加えるだけではなく、プロジェクトのもともと持っている強みに合った形で取り入れたいと考えています。
松田 莉奈
(近畿大学経済学部国際経済学科)
今回の大学保健管理集会に参加してとても良い刺激をたくさんもらいました。私たちのプロジェクトは学内プロジェクトですので、これまで学外のプロジェクトの方と今回のように集まり、お話しする機会がほとんど無かったため、参加できとても嬉しく思っています。私たちは普段、学生が持つ健康に関するお悩みを解決するために活動していますが、温泉や人生、食生活や消化活動など様々なことに焦点を当て活動している同年代の方と意見交換や、活動報告をすることでお互いに活動へのモチベーションの向上やより視野を広げられたと思います。
また、これまでにないくらい大勢の大人の前で自分たちの活動であったり、プロジェクトの趣旨を話し、とても緊張しましたが大勢の前で自分たちの意思を発表できる良い機会だったなと思います。今後もこのような機会があれば積極的に参加していきたいなと考えています。皆様のお悩みを解決できるよう頑張っていきますので、応援よろしくお願いいたします。
(元大学生協共済連会長理事・元一橋大学保健センター長・元一橋大学学生相談室長)
米山 高生 先生
本年の全国大学保健管理研究集会では、はじめて大学生によるシンポジウムが設定されました。学生の健康、疾病予防、安全などに関連した活動や取組が学生さんから紹介されました。それぞれ素晴らしいプレゼンテーションでした。「研究集会」ですから、医療関係の先生方からいくつかの質問がありました。そのひとつに、活動の効果を強調して紹介されるのは結構だが、あえて学術的にいえば、その効果を検証するというのも大切だろうというものでした。今後、学生によるシンポジウムが設定された場合の一つの反省点かもしれないと感じました。
久しぶりに全国大学保健管理研究集会に全日参加させていただき、特別講演、教育講演をはじめとしてポスターセッションに至るまで、たいへん楽しい知的刺激を頂戴いたしました。かつて一橋大学の保健センター長として参加したことがありますが、その頃と比べて、本研究集会が質量ともに大きな発展を遂げていることに感銘を受けました。
とりわけ大会テーマとの関係では、保健管理センターや学生相談窓口が、多様性を前提にして他者を尊重しあう社会をつくるために、学生に対して心身両面でどのように役立っていくのかということが真剣にとりあげられたことが印象に残っています。参加者の皆様は、このテーマに関して得た知見を、大学の職場で活用されるものと思います。
さらに特筆すべきは、学生さんのシンポジウムが行われたことです。ここでは、大学生や若者の健康や安全に関する様々な活動を各地の大学の学生さんが報告してくれました。学生の皆さんは、アカデミックな雰囲気の中で緊張されていましたが、それぞれ立派に報告されました。こんな若い人が増えれば、日本の将来も捨てたものではないなという希望が見えてくるシンポジウムでした。
最後となりますが、このような有意義な研究集会を計画・運営していただいた、大会関係者の皆様に深く感謝申し上げます。