ふくしま被災地スタディツアー2016

開催報告

2011年3月11日に起こった未曽有の大災害「東日本大震災」から約5年半が経過しました。復興もある程度行われ、私たちの記憶からも段々と薄くなりつつあるのではないでしょうか。
しかし、約5年半が経過してなお、10万人以上が避難生活を続けています。特に津波と原発事故の複合被害を受けた福島が突出しており、避難者の帰還問題、被害の賠償、健康被害、農産品の安全性、風評被害など、まだまだ課題が多く残っています。
4月には熊本でも大きな地震とそれに伴う被害がありました。福島で起こったことを他人事とせず、また過去のものとせず、「現在進行形の日本社会全体の課題」だということを理解し、正しい情報を知り、共感を広めるという目的で、今回のツアーを開催しました。(2016年9月12日~14日 2泊3日)

ツアー1日目
専門家の方々による講演

専門家の先生方による講演の様子
▲専門家の先生方による講演の様子

今回のツアーは全国各地から27名の学生・生協職員が集まりました。現地を見てまわる前に、まずは福島についての知識を得ようと、福島大学の先生方から、色々な視点から見る福島の現状についてお話をいただきました。
福島の農業を研究している先生のお話では、福島の農産品がどのように安全性を検査しているのか、農産品に放射性物質を移行させないようにどのような工夫をしているのか等を聞き、参加者からは「風評被害に苦しんでいる農家の実態を知った。これからは産地にも目を向け、福島県産のものも買ってみたい。」という声がありました。
福島の教育を研究している先生のお話では、福島の子供たちが避難先の生活でどのような苦労をしているのか、そんな子供たちにはどのようなケアが必要なのか等を聞き、参加者からは「心のケアのことばかり頭にあったが、学習面・体力面・人間関係など様々に影響があることを知った。」という声がありました。

ツアー2日目
バスにて被災地移動教室

前日に様々な知識を得られ、ツアー2日目は実際に被災地(帰還困難区域)を見てまわりました。大きな瓦礫などは撤去されてはいるものの、除染作業で出た廃棄物を詰めた黒い袋(フレキシブルコンテナバッグ)が道路脇に詰まれていたり、被害を受けた建物がそのまま放置されていたり、人が誰もいない街というその異様な光景を目の当たりにしました。参加者からは「まるで5年前から時が止まったかのような光景だった。」「復興やその支援はしていかなければならないと思ったが、自分だったら人がいない街に帰るかどうかすぐに答えは出せない。」という声がありました。

ガイドの清水修二先生(福島大学)
▲ガイドの清水修二先生(福島大学)

バスの車窓から見えるフレコンバッグ
▲バスの車窓から見えるフレコンバッグ

七ヶ浜町追悼式会場
▲南相馬市職員 高野真至さん

バス移動の途中、南相馬市に立ち寄り、南相馬市役所の職員さんに、当時の体験を語ってもらう機会を設けました。市役所の職員として地域住民のために様々な奮闘をし、数えきれない苦労を経験し、メディアなどでは取り上げられなかった話をたくさん聞き、参加者も驚きを隠せないといった様子でした。最後に、これからの被災者支援で必要なこととして、「被災者の居場所づくり」「全国に『福島』を伝える努力」「『福島』を二度と繰り返さないこと」の3つを教えていただきました。
また、この日の夕食は福島の魅力を知る機会として、福島県産の野菜や果物を使った夕食を福島大学生協さん、JAふくしま未来さんに用意していただきました。

■ツアー3日目
現地の学生との交流

ボランティアセンターの学生
▲ボランティアセンターの学生

最終日となるツアー3日目は、福島大学の災害ボランティアセンターで活動している4名の学生メンバーに来てもらい、現地で頑張っている学生の実態を知ることができました。ツアー参加者にとっても、現地の学生にとっても、同年代同士で交流することは大きな刺激になったようです。
最後に、この3日間を通して考えたことを整理し、これから自分たちは何をしていきたいのか、どうなりたいのかを表明しました。今回の体験が、それぞれの地域の取り組みに繋がっていくことを期待しています。

熊本地震 最終の募金金額のご報告

9月5日までに、全国の173の大学生協を通じて、14,541,664円の募金が集まりました。この募金は下記のように「義援金」「支援金」として活用させていただきます。ご協力いただき、ありがとうございました。

  • 日本赤十字社を通じた「義援金」10,541,664円
  • 熊本大学の学生への「支援金」(熊本大学の「熊本地震復興事業基金」への寄付)3,000,000円
  • 災害ボランティア等への「支援金」(赤い羽根共同募金「ボラサポ・九州」への寄付)1,000,000円

また、これまでの期間、全国各地の大学生協で募金を呼びかける学生の姿がたいへん多く見られました。学生同士のたすけあいの力、思いやりの強さを改めて感じることができました。「困ったときにはお互いが助け合える」そんな組合員であふれるキャンパスがこれからも増えていくことを願っています。

全国学生委員会 齋藤雅実

ボランティアセンターの学生
▲ボランティアセンターの学生