ふくしま被災地スタディツアー2017

主催:全国大学生活協同組合連合会 平和と社会的課題委員会

1.開催趣旨

「1000年に1度の災害」と言われた東日本大震災と、それによって生じた福島第一原子力発電所の事故から6年が経過しました。今年の3月末と4月1日には、帰還困難区域を除いたすべての地域で避難指示が解除されました。しかし、除染や低線量廃棄物の処分もまだまだ途上で、廃炉そのものはまだ見通しも立っていません。
また、避難者の帰還問題や、賠償問題、健康被害や農産品の安全性についての風評被害問題など、様々な問題も生じています。そのような諸問題が現在進行形のものだということを理解し、福島の事故は過去のものではなく、今でも続く日本社会の大きな課題だということを各地域や会員へ広めることが、福島の復興につながります。
普段の生活の中で原発事故やそれによって生じている問題・課題を思い出すことが少なくなっている今、津波と原子力災害の複合被災を受けた「福島」について正しい情報の理解と共感を広め、各地での学びにつなげるため、ふくしま被災地スタディツアーを開催します。

2.開催概要

日  程:
2017年9月11日13:50 ~ 13日12:00(2泊3日)
開催場所:
福島大学、福島県浜通り地域 
募集定員:
40名
参加対象:
ブロック事務局、会員生協の生協職員、組織委員

3.参加実績

5ブロック22名、全国大学生協連合会4名(事務局) 計26名

4.当日プログラム

当日プログラム

1日目(9月11日)
場所:福島大学うつくしまふくしま未来支援センター

■開会、副センター長ご挨拶
ツアー1日目は、2日目の様々な体験の土台となる知識を得るため、福島大学の専門家の先生方から講演をしてもらいました。まずは、未来支援センターの副センター長である上野圭三さんの挨拶から始まり、「福島県の概要」についてお話をしてもらいました。動画を使って福島県の概要や震災の被害について説明をいただきました。


■専門家の先生からレクチャー
東日本大震災の被害に遭った福島の復旧・復興の支援活動を行う「うつくしまふくしま未来支援センター」に属し、福島の教育について研究している本多先生、被災者支援や避難所・防災について研究している天野先生の2名の方から、それぞれの専門分野についてお話を頂きました。

「福島の子供たちの現状」…本多環特任教授
本多先生のお話では、「復旧と復興の違いは何か」というお話から始まり、福島の子供たちがいまだに避難生活を送っていること、避難生活先での環境変化による苦労について、どんな影響が出ているのか、そんな子供たちにはどのようなケアが必要か、などを聞きました。「支援を終えられるのはいつか、子供たちがどうなったときか」ということについてみんなで考えました。

<参加者の声(感想文用紙より)>

参加者の声
「何をもって復興と言うのか。子どもの支援の終わりとは…?子ども一人ひとりによって復興は違う。自分は来年から子どもと関わる仕事に就くので、東北、特に福島がどのような状況であるのかを関東の子どもたちの支援は少し複雑な問題があると感じました。避難した子どもたちよりも避難しなかった子どもたちへの支援が遅れたという事実を初めて知りおどろきました。自分自身も県外へ避難した子どもが1番大変だと思っていたので少し考えが変わりました。」

参加者の声
「『子どもたちが前向きに自分の将来を考えられるようになる』ことが支援の終わり、という話があったが、何万人もの人が被災し、それぞれが抱える「困り感」を解消していくのはとてつもないことだし、終わりはないのだろうなと感じた。様々な事象が複合的に絡み合っているだけに、「子ども」「お母さん」などと対象を決めるのではなく、たくさんの人がたくさんの人を支えていくことが必要なのだと思った。6年経った今も、形を変えて辛い思いをしている人がたくさんいるのだと感じた。」

「東日本大震災・ふくしまで起こったこと〜あのとき避難所は〜」…天野和彦特任教授
天野先生のお話では、福島県が岩手県や宮城県よりも震災関連死が多く、「心の復興」が必要である、ということや、震災当時に実際に避難所の運営を行った経験からどのような支援・ケアが避難所においては必要なのかをお話いただきました。「自治」と「交流」が人の命を救うという話が参加者の印象に強く残っていたようでした。また、避難所の中で「自治」が生まれていく様子が紹介されました。

<参加者の声(感想文用紙より)>

参加者の声
「避難所ではプライベートの問題をよく聞きますが、その環境でも少なからず孤独死を防ぐカギがあったこと、仮設住宅よりも良く感じた人がいたことはおどろきました。人は一人では生きられない、交流や自治の大切さやそこから心の復興がスタートすると思えば何か大きなことでなくても非難される肩にサポートできることがあると気づきました。」

参加者の声
「震災後の自殺した人の最後の言葉に「避難所に戻りたい」と書いてあったときいて、孤独が原因ということが一番印象に残っています。「震災」を「個人」「地域」の人と置きかえて、考えることもできるので、地域交流についても考えていこうと思った。」


■展示物見学・感想交流
先生のお話の後には、センター内の展示物見学を行いました。震災の復興に向けて行ってきた活動を記録した映像を見たり、福島県の避難指示解除区域の経年の変化を示した図を見学したりしました。除染作業で使用する「タイベックスーツ」を実際に着ることもできました。

グループ交流(参加動機など含め自己紹介、1日の振り返り)
展示物見学を行ったあと、全体で参加動機を交流し、少人数グループに分かれて先生のお話を受けた感想などを交流しました

2日目(9月12日)
場所:福島県(浜通り)・福島大学

■バスにて被災地移動教室(ガイド:福島大学 林薫平准教授)
ツアー2日目は、1日目に得た知識を持って現地を見てまわりました。ガイドの林先生からは、2日目に回る飯舘村や浪江町、楢葉町の状況が掲載されているニュースの解説をしていただいたり、バスから見える景色に関する情報を教えていただいたりしました。

<参加者の声(感想文用紙より)>

参加者の声
「あまりにも殺風景すぎて言葉が出なかった。『もう6年経ったのに?』というのがまわりの景色を見た時の感想。でも他のけんとは違う“原発問題”をかかえているためだという他県との違いが分かった時にはじめて、目に見えないにおいもない色もない原発の恐ろしさを感じた。」

参加者の声
「いたるところにフレコンバックや、クレーン車がみられ、まだ雑草ばかりの放置された状態の場所がみられ、まだまだ人が住むにも、復旧がおわっていないんだと実感させられや。とてつもなく広い土地を毎日数名の人が作業をしているのだと分かり、本当に果てしないことだと思ったし、このことを知らなかった自分にガッカリした。」


飯舘村長 菅野さんのお話
飯舘村長菅野さんから震災当時の飯舘村の様子、苦労されたことから、現在の飯舘村の様子(飯舘村は今年の3月31日に避難指示解除)を中心にお話をいただきました。「国や東電が加害者、私たちは被害者。そのような考えは一旦横に置いて協議を進めよう」というお話や「0から復興が始まるのではなく、飯舘村は今0に向かって復興を進めなくてはならない」というお話などから、「前向きに進む姿」が参加者の中で特に印象に残ったようです。

<参加者の声(感想文用紙より)>

参加者の声
「震災当時のことをリアルに話して下さった。情報がわからなかったことや、何人避難したなど…。また現在避難解除され、1割にもみたない人しか戻っていないことなど、今の状態もリアルに知れて良かった。また原発があることとないことでの震災の大変さの違いも知れた。『ゼロからのスタートではなくゼロにむかってのスタート』という言葉が印象的だった。しかし、震災にずっと不満ばかりを持つのではなく、震災にあったからこそできることを前向きに柔軟に考えている姿勢にとても感動した。また。これからの日本を考えるきっかけに震災はなるのだと思った。」

参加者の声
「国や東電が加害者で福島が被害者だという関係性を超越して、相手の考えを理解しようとする姿勢に感銘しました。柔軟な考え方がピンチをチャンスに変えることができるということに、共感しました。村長は非常に教養があり、穏やかな方で、考え方が良い意味で『若い』という印象を受けました。」


浪江町請戸地区訪問
津波の被害を受けた浪江町の請戸地区を訪問しました。バス車内から景色を眺めるだけでなく、河口付近の請戸橋ではバスから降り、実際に自分の目で津波の被害を見ることができました。その後の楢葉町に向かう中では、双葉町・大熊町の避難解除されていない地域をバスで通りました。バスの運転手の方は、「この地域の運転はドキドキする」とお話ししていました。

<参加者の声(感想文用紙より)>

参加者の声
「半年前に解除された地域や期間困難区域の風景は、荒地に雑草が生い茂るという、想像を絶するものでありました。特に、国道6号線に沿って放置された数々のバリケードと、線量計の電光掲示板はわすれることができないと思います。」

参加者の声
「目に映る風景の全てが新鮮で、心を突き動かされた。至る所に夥しい数のフレコンバックが積み重なっていて、とても日本の被災から6年経った土地だと思えなかった。しかし、何十台もあるブルドーザー、全く人気がなく、荒れ放題の家が並ぶ風景、「この先帰還困難区域」の看板などを見て、福島の現実を知った。トラックばかり走る国道、遠くに見える第一原発など、テレビやネットで見る福島を見たと同時に、ここで暮らす人々は、この土地でたしかに生きているんだということを改めて知ることができた。(格好いい言い方をすると、「生を知った」という感じ。)」


木戸川漁業協同組合「鮭の遡上の取り組み」
楢葉町にある木戸川漁協に訪問し、漁協で働いている鈴木さんから震災当時の状況と、鮭の遡上の取り組みの今についてお話を伺いました。木戸川の震災直後の写真をいくつか見せてもらいながら説明していただいたので、現在の木戸川との比較が目に見えて分かりました。地震直後は、「鮭のことしか頭になく、津波や避難等はまったく考えていなかった」とのことでした。

<参加者の声(感想文用紙より)>

参加者の声
「お話の中で『奇跡』ということばが何度も出てきたのが印象的だった。職員さんにとって(というか地元の人たちにとって)震災の時になんとか生き延びられたことは当たり前のことではなかったんだなと思った。サケが川に戻ってくるのは7万匹、ときいて多いじゃんと思ったけれど、1500万匹放流している中での7万匹となるとごくわずかで、昨年一昨年は7000〜8000匹しか戻ってきていないと思うと、震災・原発の被害の重さを改めて感じた。でも職員さんの熱心にお話をする様子を見て自分もがんばろうと思った。いつかいくら食べに行きたい。」

参加者の声
「写真つきで当時と震災前と現在を比べて、被害の甚大さを感じた。がれきを撤去し稚魚を育てられる環境になるまでに、今までと同じ生活に戻していくためにあとどのくらいがんばるのだろうと思った。でも、とても前向きにお仕事をされていて、サケについていきいきと語る様子を見て、『ここまでできた』をたくさん繰り返して、希望をもってがんばっているんだなと思った。こういう『がんばっている人』はいることをたくさん発信していきたいと思った。」


■夕食交流会(福島大学生協食堂)
この日の夕食では福島大学生協にお世話になり、2日間の感想を交流しながら食事をいただきました。福島の名産である「酪農カフェオレ」や「クリームボックス」を準備していただき、食べて感じる福島の良さに、参加者の交流も弾みました。果物に関しては、JAふくしま未来さんに提供してもらいました。

<参加者の声(感想文用紙より)>

参加者の声
「福島は暗いところしかないのではなく、立ち上がって頑張って取り組んでいる人もいる、良い魅力もあることに気づけました。」

参加者の声
「おいしかった。でもこれ大事だと思ったので、他の人に伝えたいです。」

3日目(9月13日)
場所:コラッセふくしま

■福島第一原子力発電所視察報告・感想交流
2月に日本生協連主催で行われた原発廃炉作業見学の報告と、4月に行ったスタディツアーの下見の報告を行いました。福島の地図も用いながら、福島県の他の地域(会津地方や中通り地方)の魅力を知って興味を持って欲しいという話をしました。その後、3日間を通した感想交流を行い、個人として何をしていきたいか、学生委員会として何をしていきたいかも交流しました。

<参加者の声(感想文用紙より)>

参加者の声
「原発のエリアが一つの町のようだなと思った。1〜4号機がそれぞれどんな状況にあるのか、知らなかった。廃炉作業までにかなりの時間がかかりそうなところもあるときいて、周辺地域の復旧・復興も、原発の各処理が完結するまで完全には終わらないんだろうなと思った。」

参加者の声
「原発そのものの現状や、発電所の中まで知ることができてよかった。また廃炉の進行状況も知れたことで、復興に向けた新たな一歩を進めていることがわかった。」


■模擬参加報告作成
このツアー最後の時間では、自分の大学に戻った後の「参加報告」を想定し作成するワークを設けました。地域別で分かれ、3日間を通して特に周りの組合員に伝えたいことを中心にそれぞれで整理を行いました。

<参加者の声(感想文用紙より)>

参加者の声
「自分の目で見た『ありのままの福島』を、自大学の組合員や大兵和エリアの皆に伝えたいです。まずば、福島について何らかの関心を持ってもらい、福島のモノや食べ物を買ってもらうなどの取り組みをしていきたいです。個人の意見を皆に押し付けるより、事実を伝えて皆に考えてもらいたいです。 大兵和エリアの広報誌「color」を活用したいです。」

参加者の声
「この3日間で、今までの自分の考えていたこと、感じていたことはほんの一部であり、浅いものだったことを思い知らされました。ギャップを感じたので、被災地の「想い」を伝えていくことが大切だと感じました。自分の感じたことを素直に伝えていきたいと思います。思っていた以上に、福島の人は「次に、次に!」と考えていることは多くの人が知らない事実だと思います。自分に何ができるのか、自分だったらどうするのか、「自分事」にしていきます。自分だけが「自分事」にするのではなく、多くの「学生」がそう感じられるよう、伝え続けて行きます。」

参加者の声
「震災などの爪痕や、おそろしい部分を伝えていくのはもちろん大切だけど、村長や木戸川漁協の方の話をきいて、たくさんのふくしまの良いところを伝えていけたらなと思いました。滋賀県立大の学生委員会で、このスタディツアーに参加して報告するということがこれから毎年続いていけばと良いと思ったし、まだ参加していないメンバーに、現地でみること聞くことの大切さを感じてほしいと思った。」

5.お世話になった方々から

先日はこちらこそ楢葉町木戸川にお越しいただきありがとうございました。
学生もいろいろと木戸川について感じてくれてこちらとしても大変嬉しいです。
今後ともよろしくお願い致します。

木戸川漁業協同組合 鈴木様

皆さん真剣に取り組んでいることを実感しました。
こういう若者達がいれば、自然災害や人災も乗り越えていけるのではないかと、安心しました。
また、全国大学生協連合会のこのような取り組みが、学生の心を豊かにしていくように思います。
良い取り組みは、地味だったり、労力が大変だったりするかと思います。
皆様お体に気を付けていただきたいと思います。健康第一!
また、会いましょう!

福島大学うつくしまふくしま未来支援センター 杉内様