2014全国教職員セミナーin福島 開催報告

協同の原点に立ち返る

今年から、4年に1回開催していた「全国教職員セミナー」を 2年サイクルで開催することになりました。 また合間の年には、地区ごとの教職員セミナーの開催も呼びかけています。 東日本大震災の被災地である福島で行われた全国教職員セミナーについて 全国教職員委員会委員長玉真之介先生のお話を交えてまとめました。

福島で開催した意味

開催挨拶をする玉 真之介先生
(全国教職員委員会委員長)

福島では、東日本大震災に加えて東京電力原子力発電所事故を伴う複合災害となったために、復興のロードマップは複雑なものになっています。福島を会場に選択することは、被災地を現実として見聞すること、そこに生きる、学ぶ人たちの現状を知ることにつながります。  福島で表面化した震災および原発災害後に抱えている地域社会の課題は、全国各地で進行している問題であり、一足早く表面化したに過ぎないと指摘されています。その中で、今回は、協同と協同組合をめぐる国内的、国際的な動向と課題を認識として共有するとともに、教職員の活動の活性化の出発点にしたいと思い、福島での開催を企画しました。

今、福島で生きる意味

記念報告をする清水 修二先生
(東北ブロック運営委員長)

セミナーの記念報告として、東北ブロック運営委員長でもある清水修二先生から福島の現状について、次のようなお話がありました。

福島大学では約5000人の学生、教職員が生活をし、学んでいます。今でも県内外に13万人の人が避難生活をしており、避難生活中に亡くなった方は1700人になります。避難をしなさいと簡単に言う人がいますが、避難すれば犠牲者が出るということも明らかで、1700人という数字は重いと思います。

原発事故はまだ終わっていません。しかし、「健康被害の有無」と「原発の是非」については切り離して論じてほしいと思います。被害が大きいから原発をなくすという歪んだ見方になってしまいます。

また、私たちは選択をして避難をしないでいますが、子どもは避難させた方がいいと言う人が結構います。でもそれは福島で子育てをしている親を苦しめています。福島の子どものことを一番心配しているのは福島の親であるという当たり前の現実を認識してほしいと思います。

シンポジウムでの四つの報告

シンポジウムでは、震災関連で二つ、協同組合関連で二つの報告がありました。  震災関連では、福島大学教授の千葉悦子先生から、阿武隈地区の被災した当事者の方たちの復興に向けた多様なとりくみについて報告がありました。とりわけ、参加型村づくりを進めてきた飯館村の地域づくりについて紹介があり、その中では学生への教育としても地域を見守っている活動の報告がありました。

セミナーで挨拶する全国大学生協連 庄司 興吉会長理事

また、当時、福島大学生協の専務理事であった東北ブロック田中康治事務局長から、震災直後の支援活動について、また被災した学生たちの協力と貢献の大きさについて報告がありました。とりわけ、直後の食糧や水の提供、学生の安否確認にみんなで走り回ったこと、大学のHPへのアクセスが困難になっている中で、大学の情報をペーパーで配布したことなど、学生の協力で支え合ってきたことが話されました。

協同組合については、まず神戸大学教授の滝川好夫先生から報告があり、協同組合における組合員参加の重要性について強調されました。大学生協は利害の異なる階層の構成員で形成されています。大きくなればなるほど、異質性が増大し、生協への参加意識が希薄になります。積極性と協同の精神を持ち、組合員同士でつながり助け合うことを組織委員会は進めていかなければなりません。生協の職員に対しても、協同組合について学ぶプログラムが必要だと思います。

最後に、聖学院大学教授の大高研道先生から、協同組合の可能性と、協同組合が求められていることについて報告がありました。

白熱した意見交換が行われたシンポジウム 左から、千葉先生、田中事務局長、玉先生、滝川先生、大高先生

グローバリゼーションの下では、地域に根ざした暮らしや文化がこわされ、私たちはますます「孤独」にさせられています。その中で、参加・連帯・協同に価値をおく協同組合の役割があらためて注目されています。  一方で、既存の協同組合の社会的認知度は、私たちが思うほど高いものではありません。全労済協会が行った調査(2012年)では、自らが加入している団体が「協同組合」であることを理解している割合は、生協では60・1%でした。しかし、協同組合を営利団体と考えている層が43・5%あり、非営利団体と答えた36・2%を上回っています。また、復興支援で印象に残った団体として協同組合をあげた人は、僅かに6・6%となっています。

これは、利用者化・脱主体化しつつある組合員の共感と共有を促す学びの重要性を示しています。どのような商品やサービスを提供したかだけではなく、人びとをつなげ、協同を創りだす協同組合の価値が共有されたときにミッション意識を同じくする人びとの協同の学びが展開していくものだと思います

成果を持ち寄り 岡山に集う

2年後のセミナー会場は岡山大学を予定しています。

教職員委員会の組織化は、残念ながら広がりを見せていません。しかし、教職員委員の役割は、大学とのパイプ役や学生と生協のパイプ役など重要です。また、生協活動や大学全体の活性化に欠かせません。

今回、副委員長の玉井康之先生からの提起にもありましたが、明るく声をかけていくことが大切だと思います。生協活動が大学の運営に貢献していることに自信を持って、声をかけ、聞き上手となって意見を聞く。小さなことでもお願いし、断られても別の課題があったらお願いする、やれるところからやることで生協活動は進んでいくものだと思います。

今回の学びを持ち帰り、2年後の岡山では、また新たな経験交流ができることを期待しています。

(編集部)