Reading for Pleasure No.58

‘I have strange powers.
I can give you everything you want’

水野 邦太郎
水野 邦太郎Profile

●今回ご紹介の本●
Norman Whitney
The Stranger
Macmillan Education
ISBN:9781405076623
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 この物語は、1964年10月31日に、Dave Slatinというよそ者(a stranger)が、イギリスの小さな村、Woodend村に現れるところから始まります。Daveは村の隅に古い家を購入し、その家に THE CORNER SHOPという看板をつけて店を開きました。村人はこの店で冬でも新鮮で美味しい野菜や果物を安く買えるようになります。さらに、村人の手作りの品々が店に並べられ観光客がお土産に買っていくようになります。村人の収入も増え、Daveは村の住人たちと親しくなっていきます。しかし、Daveの過去や彼が村に来た真の理由は謎に包まれていました。

 店が開店して数ヵ月後、Annaという17歳の女性がアシスタントとして働き始めます。そして、One door in the Comer Shop was always locked. What was written on the notice on this door? Did Anna ever go into this room? という謎めいた英文が、読者の好奇心を掻き立てます。常に鍵がかかったドアには、SPECIAL ORDERS ONLY: KEEP OUT と書かれてありました。この謎めいた部屋について、AnnaはDaveと次のような会話をします。

 ‘Why do you lock that room, Dave?’ Anna asked one day. ‘What’s in there?’
 ‘It’s for special orders,’ he replied. ‘Big orders.’
 ‘But you won’t get any big orders in Woodend,’ said Anna.
 Dave said nothing. He did not want to talk about that room.

 ある日、店にMiss Greta Gordonという映画スターの女優が美しいダイヤモンドの指輪をたくさんはめてやって来ました。映画が大好きなAnnaはびっくりします。Miss Greta Gordonは Daveと一緒にあの謎めいた部屋に入っていきました。部屋から出てくると、The film star looked terrible! She was pale. She was crying. Her eyes were red with tears… Anna noticed something. The diamond rings were gone. 

 その後、しばらく経ったある日のこと、AnnaがFilm Newsを読んでいると次のようなニュースが目に飛び込んできました。

The star of Beautiful Woman was Joanna Leigh. But Miss Leigh has broken her arm. ‘I don’t know what happened,’ said Miss Leigh. ‘I was in my bedroom. I slipped and
fell.’ …  Greta Gordon will now be the star of Beautiful Woman. ‘I’m so lucky,’ Greta told us yesterday. ‘I’ve always wanted the part. I can’t believe it.’

 Miss Leighが手を骨折したため、急遽、そのスター役をMiss Greta Gordonがすることになったのです。

 その後、日を変えてSpecial customersがこの店に現れSpecial Orders roomにDaveと入っていきました。そして、Annaはドアを開けて出てきた彼らの顔色が恐怖で白く怯えているのは何故なのか、さらに、彼らが店を出て行った後、必ず彼らにとってラッキーな恐ろしい出来事がニュースで流れるのは何故か、Special Ordersの裏に隠された真実を突き止めようと決心します。最終的には読者が予想できないような驚くべき結末をAnnaは迎えます。そして、Special Ordersの謎が解き明かされます。

 この物語は、閉ざされた小さな村の中で起こる大きなミステリーとしての魅力はもちろん、村の住人たち、DaveとAnna、Annaの婚約者のPeter、Special customersたちの心理を巧みに描き出し、読者を物語の世界にグイグイと引き込んでいきます。英検準2級くらいの英語で書かれているので、どんどんページをめくりながらReading for Pleasureを堪能できる作品です。
 

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P r o f i l e

水野 邦太郎(みずの・くにたろう)

千葉県出身。神戸女子大学文学部教授。博士(九州大学 学位論文.(2017).「Graded Readers の読書を通して「主体的・対話的で深い学び」を実現するための理論的考察 ― H. G. Widdowson の Capacity 論を軸として ―」)。茨城大学 大学教育センター 総合英語教育部准教授、福岡県立大学人間社会学部准教授、江戸川大学メディアコミュニケーション学部教授を経て、2022年4月より現職。

専門は英語教育学。特に、コンピュータを活用した認知的アプローチ(語彙・文法学習)と社会文化的アプローチ(学びの共同体創り)の理論と実践。コンピュータ利用教育学会 学会賞・論文賞(2007)。外国語教育メディア学会 学会賞・教材開発(システム)賞 (2010)。筆者監修の本に『大学生になったら洋書を読もう』(アルク)がある。最新刊『英語教育におけるGraded Readersの文化的・教育的価値の考察』(くろしお出版)は、2020年度 日本英語コミュニケーション学会 学会賞・学術賞を受賞。

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