進路のことでバタバタして、ゆっくり読書する時間がとれなかったが、唯一読んだのが『本なら売るほど 1』(児島青 /KADOKAWA)だ。帯には「きっとあなたも、本が好きな気持ちを思い出す。」とあった。思い出さなくても本は好きだが、近頃あまり本を読めていないからこそ、本の魅力を実感したくて手に取った。結果、本が読みたくてたまらなくなってしまった。主人公の営む古本屋を中心として、本が様々な縁を繋いでいく。そんなほっこりする話が6話入っていて、どれも丁寧に、そして何度でも読みたくなる話だった。作中には実在する本がたくさん登場するため、ブックガイドのような使い方もでき、また新たに読みたい本が見つかった。まずはやるべき事を終わらせ、必ずや読書の時間を確保したいと思う。『本なら売るほど 1』購入はこちら >
忙しい日が続くと現実逃避したくなるのが自分の癖だ。そこで家にあった『陰陽師』(夢枕獏/文春文庫)を再読した。これは短編集なので読みやすく、舞台が平安時代なので現実逃避に最適だ。陰陽師である安倍晴明と、その親友の源博雅が、あやかしや鬼が絡んだ不可思議な事件を解決していく。解決する過程ももちろん面白いが、毎回事件が起こる前に、 晴明の屋敷の縁側で2人が酒を飲みながらゆるく語り合うシーンが大好きだ。読んでいるだけで癒やされる。晴明は、いつも淡々と余裕そうな態度でいるので少しは焦っているところも見てみたいが、常に焦っている私は晴明のように冷静な人間になりたい。『陰陽師』購入はこちら >
いつまでたってもバタバタしている。 しかし、どうしても本が読みたくなって、やるべき事を後回しにして一気読みしたのが、前から気になっていた遠野遥さんの『破局』(河出文庫)だ。主人公は就職活動を間近に控えた大学4年生でまさに今の自分と同じだった。とにかく読みやすい文体なのだが、読了した時はどこか気持ち悪さもあり、主人公には共感できないところもあった。しかし、少し時間が経つと、意外に自分も主人公と似ているところがあるなと気づいた。さらに解説を読んだりする中で新たな解釈や発見もあった。最近はどんな本も速く読みたいと思っている節があったが、この作品を読んで一 文一文を丁寧に読むことの面白さを実感した。 遠野さんの他の作品も読んでみたい。『破局』購入はこちら >
梅雨の気配もない青空は、空っぽな元気を持っているみたいだ。
前から気になっていた朝ごはん専門店『本と朝ごはん TSUBOI SOUP』行く。朝の日差しが柔らかに射す店内 で、まだ眠そうなラジオの音楽が耳を包む。魅力的な本がずらりと並ぶ店内で、『フランスのかわいい雑貨に出合 う 宝探しのパリ暮らし』(Mash Aya/ KADOKAWA)と熊本県高等学校教育研究会 国語部会(編)『くまもと文学紀行』を読みつつ、朝食を取る。旅にまつわる本を読んでいると、心がカラフルになるような気がする。見たい景色が増えて、まだ見ぬ世界を冒険したくなるからだろうか。お店のすぐそばには漱石旧居 がある。今日は時間があるし、見て帰ろう。 何もない日、本と美味しいご飯で始まる朝も魅力的だ、まっさらな頭で思う。『フランスのかわいい雑貨に出合 う 宝探しのパリ暮らし』購入はこちら >
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まず紹介するのは、『吉本ばななが友だちの 悩みについてこたえる』(吉本ばなな/朝日文庫)という本。本屋さんでふと開いてみると、友人・人間関係の相談に対しての回答が、気持ちいいほど切れ味がよく、その日は買わずに帰ったが数日 経っても続きが読みたかったので購入。 永遠に議論される「異性とも親友になれるのか」問題についての回答が特にお気に入り。様々な人間関係の悩みに厳しくも的確にアドバイスしている本書だが、決して友人付き合いはない方がいい、と言っているわけではないところに救いがある。とはいえ読んでいて感じたのは「私ここまで色々考えられていないな……」 ということ。もしかすると私は周りの人を悩ませる側の人間なのではないか……と思いぞっとした。気をつけよう。『吉本ばななが友だちの 悩みについてこたえる』購入はこちら >
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以前読んだ『ベルリンは晴れているか』(深緑野分/ちくま文庫)がとても面白かったので、深緑野分さんの他の作品も読みたいと思い『戦場のコックたち』(深緑野分/創元推理文庫)を手に取った。前回も思ったことだが、状況の描写が非常に細かく、圧倒される。単なるエンタメとしての作品ではなく、歴史を伝えていこうとする姿勢が感じられて胸が熱くなる。私は大学でドイツ語を専攻していることもあり、戦争ものは主に日本かドイツ視点で書かれたものばかり読んでいたと気づかされた。終戦から80年を迎える今年、読むことができてよかったと思っている。
教職課程も集大成、ついに教育実習の時期を迎えた。教科は英語で、担当したレッスンのテーマが「迷信」だった。英語圏以外の迷信も紹介したら喜んでくれるのではないかと思っていると、あるエッセイを思い出したのでこの機会に読み直した。翻訳家・奈倉有里さんの著書『ことばの白地図を歩く』(創元社)である。ロシア留学中に知ったという現地の迷信について書かれたコラムがあり、これが面白い。この本では奈倉さんが留学中や翻訳の際に感じたことを元に、他言語や異文化に触れる面白さを語っている。10代以上向けと銘打ってあり、子どもはもちろん、大人にも読んでワクワクしてほしいと思う一冊だ。*本サイト記事・写真・イラストの無断転載を禁じます。