読書マラソン二十選!184号

 

2025年 WEB読書マラソン 次点コメント厳選20

今回は 2025 年1~ 12 月の間で惜しくもナイスコメント「次点」となった投稿に注目しました。次点の中にも、素敵なコメントがたくさん。編集部が厳選した 20 の次点コメントをご紹介します!
 

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    『スノードームの捨てかた』
    くどうれいん/講談社購入はこちら > 私はつながりのない短編小説集の良さがわからないでいた。短い物語はあっという間で、没入しきる前に終わってしまうから。しかし、この作品を読んで気がついた良さがひとつある。それは、小説の中の “日常のかけら” が自分の生活に現れたときの感動だ。この作品には、他人が道で落して散らばったマッチを拾うのを主人公が手伝うシーンがある。あるとき友人がマッチを落としてしまい一緒に拾ったとき、「あのシーンだ」と思って妙に感動した。それ以来、作品に登場した「生きている限り物語から逃げられない」という言葉が染みる。

    (名古屋大学/あおりんご)


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    『総理にされた男』
    中山七里/宝島社文庫 購入はこちら > これは、勇気と希望の小説だ。選挙投票率の低さ。今の政治、日本には未来がないと囁く人々。現代日本は、人々の政治離れが極めて顕著である。「もし、あなたが突然総理になったら?」そんなシミュレーション小説である本書は今の時代にぴったりの一冊である。一方で、現代日本がまさに直面している政治課題を多数取り上げており、フィクションであるがノンフィクション要素も楽しみながら学ぶことができる。はじめは誰しもが抱く「青臭さ」が世の中を動かすキーとなる。そんな「青臭さ」を抱く主人公の姿から、勇気と希望をもらえた。

    (宇都宮大学/げっこー)


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    『恋とか愛とかやさしさなら』
    一穂ミチ/小学館 購入はこちら > 相手を分かるってどういうことだろう。この本を読んで私は疑問に感じた。本当に相手を分かることって出来ないのではないかと思う。そもそも、自分のことを本当に分かっている人はいない。そんな気がした。しかし、相手のことを分かっていると感じてしまうことがある。それは、自分の中の相手の虚像であって現実ではないと思う。私は相手のことを分かり切ろうとする必要はないと思う。「まあ、いっか」も大切なんじゃないかな。 

    (岡山大学/けまちゃん)

 

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    『午後のチャイムが鳴るまでは』
    阿津川辰海/実業之日本社購入はこちら > 利益になるものだけやるなんて、浪漫がなくてつまらないと思っていた。何の役にも立たないからこそ素敵なのだと。 
     それなのに就活で、面接官に「なんで文学部なの」「なんで部活をやめたの」などと聞かれるたび、心がチクチクする。求められているのは将来の糧になる『正統派キラキラ青春時代』なんだと感じて、自信をなくしていた。 
     そんなとき、この本に出会い、馬鹿馬鹿しいものに情熱を傾ける、愛すべき高校生たちの姿に勇気づけられた。すべてが何かに繋がらなくてもいいんだと、どんな青春も肯定してくれる一冊だ。 

    (名古屋大学/さぼてん姫)


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    『ポトスライムの舟』
    津村記久子/講談社文庫購入はこちら > 主人公・ナガセは、薄給の工場に勤務したあと友人が経営するカフェでバイトし、帰宅後は内職をしている。そんななか、世界一周の船旅の費用が工場の年収と等しいことに気づき、一年かけて貯金をしようと決心する。ほんとうの豊かさとはなんなのか? 日々を愉しむにはどうすればよいのか? 家庭や子どもを持った友人との関係はどのように変わっていくのか? 社会人の主人公は自分とは遠い存在だと思っているあなた! バイトに明け暮れ、節約を試みる大学生なら共感できるはず! 

    (京都大学/たま)


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    『カフネ』
    阿部暁子/講談社購入はこちら > この本を読んでいる最中にオムライスが食べたくなって、スーパーに向かって自転車を漕ぎだしたことがある。一人暮らしだから作ったオムライスは自分のためでしかないけれど、温かい料理をこしらえてホッとするひと時を過ごすのは大切なことだ。この物語の主人公も、「おいしい」という体験を通じて人に救われ人を救い、自身そして他者の人生に対して以前とは違う向き合い方を見出した。人を愛するとはどういうことなのか ― ― このことを手作り料理のようなあたたかさをもって問いかけてくる名作だ。

    (愛知教育大学/にょーん)


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    『傲慢と善良』
    辻村深月/朝日文庫購入はこちら > この本の中には「自分」がいた。他人と比較してしまって感じている劣等感、相手に幻滅されてしまうのではないかという怖さ。場所や人によって顔を使い分けている中で “本当の自分” はどこにあるのか、あと数年で社会人として大いなる責任と向き合
    わなければならないという焦り、大学生になっていつまでも高校生の気分が抜けなくて周りにいる人が眩しく見えたり、もう自分は “大人” なんだという現実。繊細な言葉で心が洗われるような、掻き乱されるような複雑な気持ちになった。この本は間違いなく “自分の人生の中で大切にしたい本” だ。 

    (龍谷大学/氷刄)


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    『楽園とは探偵の不在なり』
    斜線堂有紀/ハヤカワ文庫JA購入はこちら > まるで悪魔のような見た目をした「天使」が、二人を殺した人間を地獄へと堕とす世界。そのなかで起こる連続殺人の真相というミステリとしての面白さはもちろん、正義とはなんなのか、人が何かに縋らずにはいられないものなのか、天国はあるのか、といった哲学的かつ倫理的な面から見ても非常に興味深く、余韻のある作品だった。 
     歪な存在の「天使」が、今もなお私の頭を離れない。天国はあるのだろうか。何を信じていきればよいものだろうか。

    (名古屋大学/マカデミア)


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    『すし物語』
    宮尾しげを/講談社学術文庫購入はこちら > 始めから終わりまで、すしすしすしすし。寿司のことしか書かれていない。目次を見た時あまりの「すし」に、ゲシュタルト崩壊が起きた。この一冊、まるごと寿司。 
     寿司の歴史から、旨い食べ方・握り方、寿司にまつわる怪談まで、「寿司」研究の全てが書かれている。研究に至った経緯などは示されず、開口一番「すしの食べ方は自由であって、どれから食べてもよい」。終始真面目に寿司と向き合う。 
     読み終えた後は、無性に寿司が食べたくなる。しかし一気読みには注意。腹八分目がちょうど良い。

    (早稲田大学/樋口景子)


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    『俳諧の詩学』
    川本皓嗣/岩波書店購入はこちら > 図書館で埃をかぶっていた本は、私が手に取った瞬間にまるで深い眠りから目を覚ましたようだった。
     言葉を通貨と喩える序章に本をめくる手はたちまち止まらなくなる。お金のように言葉もそれ自体に興味はない。けれど、手垢のついたそれを普段とは違う使い方をすることで、無視することができなくなる。そうさせる力を持っているのが「詩」なのだ。普段は隣にいないもの。文法のおかしいもの。何かに託す想い。そしてまた、言葉に溺れるんだ。 
     この本が深い眠りにつくのかどうかは、今これを見てくださっている皆さん次第だろう。

    (静岡大学/がうっちぃ)


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    『水中の哲学者たち』
    永井玲衣/晶文社購入はこちら > 哲学は難しい学問であると思ったことがある人も多いのではないだろうか。それゆえに哲学を避ける人もいると思う。しかしこの本では哲学はある物事に「なんで?」を投げつける試みだと感じた。作者は哲学対話を通して参加者と関わり合いながら、世の中に漂う有象無象について語る。語るというより独り言なのかもしれない。私たちは哲学に少し距離を置いているイメージがあるかもしれないが、日常の中でふと疑問をなげかけ考えてみる時間を作れば、それは哲学に触れていることになるのではないだろうか。 

    (佐賀大学/ますかっと)


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    『木』
    幸田文/新潮文庫購入はこちら > とにかく文章の美しさに圧倒された。木の生き様、その場の空気感や湿度がありありと感じられ、名文家とはまさに著者のような人のことを指すのだと納得した。木について詳しくなかったため初めて知ることが多く、今まで木として一括りにしてきた存在たちが見せる、それぞれの美しさや恐ろしさ、健気さに胸を打たれた。読後、外を歩くたびに身の回りの木にはどんな物語があるのか、この作者なら目の前の情景をどう描写するかと考えるようになった。著者の他の作品もぜひ読んでみたいと思う。 

    (東北大学/おもち)

 

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    『カラダは私の何なんだ?』
    王谷晶/河出文庫購入はこちら > この人の文章は小気味よくて、たまーに小説家ならではの難しい語彙が出てきて読む流れが停止させられる。それも心地良い。ミソジニーとか、自業自得論とか、女のカラダにまつわる不穏な雰囲気を王谷さんはサックリ切ってくれる。「あたしゃアンタ等の味方だよ!」と背中をしばいてくれるのだ。本書の前半で、しきりに奨励される言葉がある。それは、「自分のカラダに向き合う」こと。自分のカラダなのに、主体を失って、意味だけが独り歩きする女体。もっと私たちは自分のカラダに向き合い、ときに触れ合うべきなのだ。

    (同志社大学/よもぎ)


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    『数学する身体』
    森田真生/新潮社購入はこちら > 中高生の頃、数学に悩んだあなたへ。
     数学が、哲学と同じように自己や他を理解するための営みの一つだと知ったら驚くだろうか? 
     数学者・岡潔にとって、「わかる」とは、自分がそのものになる「無心」から、ふと「有心」に還り、なりきっていたものに気づく刹那のことであった。「自我」を全面に押し出すことなく、情を通い合わせることで「わかる」。
     「数学研究を捨てて自己研究に移るのではない。数学研究が即ち自己研究なのである」。学問が身体化されることで導出される答えがある、岡潔は身をもって、私たちに教えてくれた。

    (京都大学/詩暢)


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    『増補版 大人のための国語ゼミ』
    野矢茂樹/筑摩書房購入はこちら > 私たちは毎日、当たり前のように日本語を使っている。しかし、毎日毎日使っているにも拘らず、自分の言いたいことが相手に伝わらなかったり、相手の言わんとしていることが呑み込めなかったりする。この本はそんなもどかしさから解放されるため
    の糸口を教えてくれる。それが国語力だ。自分の言いたいことが相手に伝われば嬉しいし、相手の言いたいことが伝われば自分の考えが深まる。言葉をもって人に物事を伝えるのがこんなにも難しく、またこんなにも奥深く、こんなにも楽しいものなのかということを教えてくれる素晴らしい本だった。

    (新潟大学/みつばち)


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    『カフカはなぜ自殺しなかったのか?』
    頭木弘樹/春秋社購入はこちら > カフカはずっと絶望していたのに、自殺しなかった。たくさんの有名作家たちが自殺をしている中、彼は自殺をせずに生涯を終えている。それはなぜなのかを、カフカの人生、文章から探る一冊である。大変読みやすく、面白い本だった。読了後には、良い映画を一本見終えた以上の満足感があった。カフカという人、彼の人生は、誰よりもどんな小説よりも魅力的だった。ずっとネガティブだけれど、そのネガティブの中に人間的な揺らぎがある。雨のようなカフカの言葉に触れて、なぜか少し元気になった。 

    (龍谷大学/めんだこ)


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    『カクテル、ラブ、ゾンビ』
    チョ・イェウン<カン・バンファ=訳>/
    かんき出版購入はこちら > この本が何のジャンルに当てはまるのか、正直よくわからないまま読み始めたのだが、それで良かったと思う。ホラーであり、フェミニズムの香りもあり、少しギャグっぽいところも。主人公の喉に骨がさされば、何だかこちらも喉の辺りがずっと落ち着かず、人を刺し殺せば、やったこともないのに刃伝いに相手の臓器を感じるような、ずっとどこか落ち着かなくて窮屈な気持ちになる読書体験だった。

    (東京外国語大学/緑茶)


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    『ことばが劈かれるとき』
    竹内敏晴/ちくま文庫
    購入はこちら > 大抵の人は舌先三寸で話す。その声に力はなく、相手に届く前に地面に落ちる。だから自分をひらき、心の底からの声で話すべきだ、という。確かにそうだろう、できたら自他ともに気持ちがいい。でも……。本当の声で話すのは怖い、と言うより、できない。だって本当の声は他人の目を意識した見せる自分ではなく、偽りのない裸の自分だから。聞かせる相手と場所を選ぶものではないか。全存在を賭けて自分をぶつけるわけだから、かわされたり受け流されたりしたら心が折れる。最悪の感想だが、本当の声は本当の時に出すものだと私は思う。 

    (新潟大学/モモノスケ)


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    『ソラリス』
    スタニスワフ・レム<沼野充義 = 訳>/
    ハヤカワ文庫購入はこちら > 惑星ソラリスの海は人間には到底理解できない、想像し得ない存在である。それは私たちが想像する人間の延長線上としての地球外生命体とは全く異なる。しかし、そんな未知に翻弄されながらも喰らいつく人類の姿勢を通して、人間以外の知性との共存を全く新しい視点から愚直に描いている。あらゆる解釈ができるこの本は、読者にとってのエイリアンである。あなたはこの本をどのように喰らい、味わうだろうか。

    (広島大学/ 303)


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    『ユートピア』
    トマス・モア <平井正穂=訳>/岩波文庫購入はこちら >  「戦争でえられた名誉ほど不名誉なものはない」など有名なフレーズのみ知っていた。ずっと読んでみたかった本。理想社会の在り方を通じて現実社会の矛盾や不正を鋭く批判する点で洋学紳士が重なる。私有財産の廃止や労働の平等化など、当時としては革新的な思想が描かれており、人間の幸福とは何かを考えさせられた。一見理想的に見えるユートピアも、個人の自由や多様性が制限されている点に違和感を覚えた。加速するとディストピアになるのだと思う。理想社会の実現にはバランスが必要だとも感じた 。

    (東京外国語大学/はづき)



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