まだ寒い春先にお勧めです。
温かいコーヒーと一緒にお勧めの海外文学と、国内でも海外文化を楽しめるノンフィクションを紹介します。
『伝説とカフェラテ 傭兵、珈琲店を開く』
トラヴィス・バルドリー
<原島文世=訳>
『伝説とカフェラテ
傭兵、珈琲店を開く』
創元推理文庫 定価1,320円(税込) 購入はこちら >
傭兵と珈琲店(カフェ)という、異色の組み合わせのようにも思えるタイトル。読んでみると、更にびっくり⁉
元傭兵からカフェ店主に転職した主人公の正体は、なんと、女オーク。その他の登場人物も、エルフやドワーフといった北欧神話やゲルマン伝承に起源を持つファンタジーの代表的な種族たち。しかも、コーヒーという飲み物は、まだ浸透していないという設定。ゲームのような世界観でもあり、かなり想定外の物語でした。
オークといえばファンタジーでは敵役で登場することが多い上、屈強な元傭兵。しかしながら奮闘するのは、メニュー作り、コーヒーの周知、お菓子の試作、従業員の募集、集客の苦労などなど、一からの店づくり。次第に増える仲間たちやお客さんと交流する様子など、想像すればするほど、ほっこりさせられました。
また、この主人公には、コーヒーに加えてもう一つ愛するものがありました。それが、本です。
『伝説とカフェラテ 傭兵、本屋をたてなおす』の方では、廃業寸前の本屋の立て直しが描かれていますので、合わせていかがでしょうか。
ちなみに、本書は当初自費出版として刊行されましたが、たちまち話題となり、商業出版されベストセラーに。それだけでなく、SF・ファンタジー文学における世界最高峰の賞でもあるネビュラ賞、ヒューゴー賞にもノミネートされたそうです。
『変わり者たちの秘密基地 国立民族学博物館』
樫永真佐夫・ミンパクチャン
『変わり者たちの秘密基地
国立民族学博物館』
CEメディアハウス 定価2,200円(税込)
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まさに、民族学と文化人類学の聖地。大阪吹田市の万博記念公園にある国立民族博物館。収蔵品数は 34万 6670 点、果てしなく続く本館展示は、全長5キロ! 世界最大級のコレクション数をほこるのが、通称「民博」です。
そんな「民博」ですが、普通の博物館とは異なり、大学院機能も併せ持つ研究所でもあるゆえ、勤務するのは学芸員ではなく研究者であるのが特徴とのこと。
展示の背景には、研究の成果はもちろん、研究者たちの人生が反映されているようでもあり、多大なる情熱を持って綴られている本書を読んで、改めて1日中「民博」に滞在したい! と思いました。
執筆者PROFILE
重松 理恵(しげまつ・りえ)
大学生協職員。広島大学、東京大学、名古屋大学生協など各大学生協での書籍担当者を経て、現在、大学生協事業連合書籍商品課に在籍。著書に『東大生の本の使い方』(三笠書房)、最新刊は『読んで、旅する 海外文学』(大月書店)。