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皆さんは、アニメやゲームの中に登場するアイドルを推したことはありますか。このエッセイでの二次元アイドルとは、「二次元の作品に登場するアイドルたち」を指します。Vチューバーアイドルなど、三次元の人間が操っているキャラクターは除かせてください。
アニメにアイドルが登場したのは1980年代、世間はまさにアイドルブームのころです。例えば「超時空要塞マクロス」のリン・ミンメイは、ヒロインらしいかわいらしさや無邪気さを持ち合わせる一方、わがまま・奔放・空気を読めないなど嫌われ要素もあり、当時のアイドルへのイメージが投影されたリアルなキャラクターとして愛されました。そして現在、アイドルを題材としたコンテンツは増え続け、人気となっています。それではなぜ、私たちは二次元のアイドルに惹かれてしまうのかを考えていきたいと思います。
私が二次元アイドルに出会ったのは中学3年生のときです。アプリゲーム「アイドリッシュセブン」のアニメ版を見て好きになり、高校生で初めてスマートフォンを手にして、最初にそのアプリゲームをダウンロードしました。そこから7年間、ずっと「アイドリッシュセブン」が好きです。
「アイドリッシュセブン」とは、バンダイナムコエンターテインメントが展開する男性アイドル育成リズムゲーム・メディアミックス作品です。主には物語を読み進めていくゲームで、アイドルたちの曲を用いたリズムゲームを行うことで新しい物語が解放されたり、ゲーム内通貨を稼ぎ、アイドルたちのブロマイドをランダムで入手したりすることもできます。
物語の主人公は、小さな芸能事務所の一人娘・小鳥遊紡(たかなし・つむぎ)です。彼女は新人マネージャーとして7人組アイドルグループ「IDOLiSH7」を担当し、 7人と共に成長していきます。このコンテンツの特徴は、何よりそのストーリーの分厚さにあります。キャラクターたちそれぞれのトラウマや家族との問題、ほかのメンバーへのわだかまりが描かれ、ストーリーを進めるごとに人間性が表れていて、最初はヒール(悪役)に見えたキャラクターも好きになってしまいます。また、アイドルたちが芸能界の闇に巻き込まれて事件が起こるなど、ハラハラする展開も盛りだくさんです。
こうしたアイドルたちの裏側を丁寧に描く一方、表側の創りこみもすごいのです。登場する4つのグループは、それぞれ楽曲の方向性が異なり、現実でもYouTubeでMVを公開したり、CDを発売したり、ライブを行ったりします。企業とのコラボや、ファッション誌の表紙に登場することまであるのです。また、運営側はキャラクター達のイラストを、キャラクター同士で撮ったオフショットとして掲載するなど、アイドルたちが作り物ではないかのように見せる工夫をしてくれます。つまりファンは、アイドルたちの裏側の事情や成長を知り尽くしていながら、アイドルたちが作り出す表側のキラキラしたところを現実の出来事のように楽しめるわけです。
では、なぜ二次元アイドルにハマってしまうのでしょうか。一つは、世間が今アイドルに求めていることとつながっていると思います。それは「親しみ深い存在であること」です。ステージの上では完璧な歌と音楽を見せてくれてキラキラしていてほしいけど、ステージから降りたら同じ人間であることを感じられる存在であってほしい。ステージ上での完璧さが重視されるようになった背景には、K-POPアイドルの人気が影響しているのではないかと思います。ステージ以外の場所では、メンバー同士でわいわい遊んで年相応の姿を見せてほしいし、カリスマというよりも努力家である方が好感度は高い気がします。だから、アイドルたちがステージの裏で間食を取る様子や、ライブの開催地で観光する様子がYouTubeで投稿されるようになりました。二次元アイドルの話に戻ると、アイドルたちのキラキラしている姿の裏側が見たいという欲求は、二次元アイドルであれば最大限に満たすことができます。
また、三次元のアイドルを推すとき、ファンはしばしば「自分が見ている相手に、自分もまた見られている」という意識を抱きます。握手会などは、相互に視線が届き得るため、ファンは「アイドルを推している自分はアイドル側からどう見られているだろうか」と思うこともあるはずです。一方で、二次元アイドルにはその視線の往復が存在しません。二次元アイドルはファンを拒絶することもありません。そのうえスキャンダルを起こすことも、年齢を重ねて変化することもありません。裏切られる可能性が構造的に排除されているため、ファンは自分の愛情を制限なく注ぐことができるのではないでしょうか。これは欠点であると同時に、二次元アイドルの大きな魅力でもあると思います。
最近、恋愛コスパ論というものが登場しています。自分のお金や時間を使っても自分の思いが通じるとは限らない恋愛はとてもコスパが悪く、推し活のほうが熱を注ぐ先として有意義であるという考え方です。このコスパ論を極めた先に、二次元アイドルを推すことがあるのかもしれません。
最後に、私はこの理論武装をもってK-POPアイドルが好きな友達に「アイドリッシュセブン」を売り込むことにしました。友達から返ってきたのは「えっ、めんどくさそう」という一言でした。二次元アイドル特有の“情報の厚み”は、ゆるく推すということを難しくしていたようです。三次元アイドルは、MVや楽曲、ビジュアルといった少量の情報だけで「人としてそこに存在する」という実感を得やすいです。しかし二次元アイドルは、作品世界の設定、キャラクターの背景など、運営が提示する多層的な情報をある程度受け取らないと「人間としての厚み」を感じることができません。つまり、推すための初期コストが高いのです。完全に盲点でした。こうして友達への布教は失敗しました。
でも、推しから得られる情報は多ければ多いほどいいという人にとっては、二次元アイドルは最高のはずです! ぜひ一緒に二次元アイドル沼に飛び込みましょう!

紹介文:久次米桜保
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久次米桜保(くじめ・さほ)
京都大学3回生。幼少期からゲームをやることがなかったため、どのスマホゲームも長続きしません。唯一続いているのがご紹介した「アイドリッシュセブン」というゲームです。実はSwitchにも興味があるのでバイトでお金をためて買ってみようかなと思います。
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