大ヒット中の翻訳SF作品・劉慈欣著『三体』(早川書房)は中国で累計販売2100万部を突破した小説シリーズの1作目で、THE THREE-BODY PROBLEM はその英語版にあたる。2014 年に英訳が発売された際、シンガポールの同僚たちがこぞって絶賛していたのが今になってよくわかる壮大な世界観。文化大革命で父を殺された科学者、現代のナノテク研究者、そしてカギとなる謎のオンラインゲームが絡み合って進行するストーリーだ。続刊が一足早く英語で発売済み(※)なので、挑戦したい方はぜひ。
※2巻目:The Dark Forest、3巻目:Death's End
「災害ユートピア」「説明したがる男たち」など著作の多いレベッカ・ソルニットの新刊は一味変わった童話 CINDERELLA LIBERATOR 。継母と義姉たちにこき使われるシンデレラが魔法使いに素敵なドレスとガラスの靴を貰って最後は素敵な王子と結ばれるという古典的な話を、現代の価値観で書き直したものだ。シンデレラの役割は自分と周りをステレオタイプから自由にする解放者になっていて、彼女はすぐに王子と結婚しなくても十分幸せだし、義姉たちも人に役立つ仕事に就いて羽ばたいていく。新しいハッピーエンドが魅力的な1冊。
最後は世界150ヵ国に渡航歴がある政治学者でTEDトークも人気のパラグ・カンナによる新著 THE FUTURE IS ASIAN に注目です。“未来はアジア" と題された本書。文化・民族・政治・経済など様々な切り口でアジアのいまを紹介し、強国同士が覇権を争う従来とは全く違うアジア流の世界秩序が訪れるが、その理解が大切と説き、とかく中国に注目しがちな西洋人に地域各国の多様で鮮やかな成長を描いて見せます。翻訳が待たれる一冊ですね。
海外に30店舗持つ書店チェーン・紀伊國屋書店で洋書仕入に携わるバイヤー。子供のころはインターナショナルスクールで学び、洋書は日常生活の一部。
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